『人民の星』
6039号1面 2015年11月7日
安倍外遊 海外に30兆円ばらまく
国民ほったらかし 血税は大企業の懐へ
安倍晋三が首相に復帰して三年近くになる。安倍政府の政治にたいして、職場でも地域でも人人の批判の声と怒りは高まりつづけている。その一つに毎月のようにくりだす外遊と「援助」という血税のばらまきがある。国民の生活は厳しさを増している。「国内の庶民の生活に関心はないのか」「どこにそんなカネがあるのか」と怒りはつのるばかりである。安倍は外遊でなにをしているのか、「援助」というが実態はなんなのか、だれのためにやっているのか。
アメリカの要求で日本政府が「援助」
安倍はこの三年近くで、六〇カ国を訪問した。歴代政府でもやらなかった数である。ばらまいたカネの総額は約三〇兆円になる。みな税金である。安倍政府は、「アベノミクス」の柱の一つに「インフラ輸出」をおき、二〇一〇年に一〇兆円だったインフラ輸出を、官民一体で二〇二〇年に三〇兆円にすることを目標にしている。
【表】は、安倍が外国首脳との会談や国際会議で約束した「援助」のうち一〇〇億円以上のものをあげている。安倍は自分のカネのように日本国民の税金を使っている。こんなことは日本だけである。
安倍政府の「援助」はアメリカの要求でおこなわれている。安倍政府はアメリカの言うがままに税金をだしている。アメリカの要求は、アメリカの世界支配を維持することと、アメリカ巨大資本の経済的利益という目的がある。
たとえば二〇一三年一二月、アメリカ副大統領バイデンが日本を訪れ、安倍との会談で、政府開発援助(ODA)は、日米で「立案・調整」しながら活用することで合意した。日本のODAはいちだんとアメリカの政策にそってやる、と確認したわけである。そこでは、中東やアフリカ諸国でのODAの活用を強めることとしたが、内容は、出入国管理システムや空港・港湾の管理などに使うというものだった。たおれる寸前の親米政府をささえるということでもある。
またバイデンと安倍の会談では「日米開発対話」という、政策すり合わせの会議をもつことをきめた。同「対話」は一四年二月に初会合をおこない、東南アジアと大洋州へのODAの活用について協議した。
この時期、国際協力開発機構の理事長である田中明彦が、戦略国際問題研究所(CSIS)で講演し、その後、米国国際開発局の長官ラジブ・シャー、米州開発銀行の総裁ルイス・アルベルト・モレノ、世界資源研究所CEOのアンドリュース・ステアと会談し、ODAについて提携をつよめることで合意した。具体的にはアフリカ開発、アフガニスタンへのテコ入れ、再生可能エネルギー開発や新興都市開発にODAを使うということだった。
「援助」で中国の影響からひきはなす
東南アジアなどもおなじでベトナム、ミャンマーをふくむASEAN(東南アジア諸国連合)やインドへのODAで、中国からこれらの国を政治的にひきはなす意図がある。
安倍は今年五月にも、アジア開発銀行をつうじてアジア諸国に一三兆円のインフラ投資をおこなうと表明した。中国が主導したアジアインフラ投資銀行が設立されたさい、米日政府が同構想に参加せず孤立したため、まきかえそうとしているわけである。
安倍の外遊は「トップセールス」といって商売をともなっている。原発をふくめた「インフラ輸出」などである。この三年間の巨額「援助」の案件は、鉄道、空港、港湾、発電所、上下水道などが多数をしめている。
そのため安倍の外遊には、日本の企業、商社、銀行の幹部がついていっている。安倍が外国にいって「援助」を約束する。安倍政府は政府資金を相手国に拠出する、しかし、鉄道、高速道路などの建設は、日本の大資本が受注する。そこで、政府資金 税金は受注する日本の大資本の懐にはいる。
一〇月下旬、安倍はモンゴル、中央アジアの諸国を訪問した。この外遊には約五〇の大企業、銀行、商社などの幹部がいっしょにいった。安倍はウズベキスタンやキルギスでインフラ整備というかたちで「経済支援」を約束し、日本企業の売り込みをした。
トルクメニスタンではガス処理プラントや火力発電所の建設など総額一八〇億㌦(約二兆二〇〇〇億円)の事業に日本が「協力する」ことで合意し、日本企業の受注が確実になった。
「援助」とは名ばかりで、税金は国民の生活をよくするためでなく、大資本、大企業を儲けさせるために使われている。
また安倍は、外遊による税金バラマキを、アメリカの企業や投資家に儲けさせるためにやっている。
国内は増税と社会保障の切り捨てへ
たとえば、安倍政府は海外へのインフラ輸出で原子力発電所の輸出・建設を重視している。これも「援助」ということで税金を相手国に供与し、その資金で建設するようになる。原発建設となれば特許をもっているGE(ゼネラル・エレクトリック)やWH(ウェスチング・ハウス)に特許料がはいるようになる。原発受注の企業連合にも日本企業とともにGEやWHがはいっている。
またアメリカ国策企業で世界最大のゼネコンであるベクテルが日本の「海外援助」事業に参入して利益を手にするようになっている。
ベクテルは八〇年代末から日本市場に進出し、受注を拡大してきた。ベクテルの得意とする分野は、発電所、港湾、石油コンビナート、軍事基地である。
ベクテルは六ケ所村の再処理工場建設に技術参加をしたのを皮切りに、羽田空港や関西国際空港、中部国際空港のターミナル建設、東京湾岸道路の建設、神戸医療産業都市構想などにかかわってきた。
ベクテルはさらに、日本の「海外援助」事業にも参入し、インフラ輸出事業で日本の税金をすいとっている。
ベクテルは日本の企業と連携をつよめている。ゼネコン大手の大成建設とは中東やアフリカなど、途上国での事業のために〇八年に包括提携の協定をむすんだ。鉄道、空港、港湾、高速道路、原発建設などの社会基盤整備事業に安倍政府は巨額の税金を使っているが、それらはベクテルのような巨大資本の懐にはいる。
安倍政府はまた、「日本を世界で一番ビジネスのしやすい国にする」といったが、東京証券取引所をはじめとする全国の四証券取引所が六月に発表した一四年度の株式分布状況調査では、外国人投資家の保有比率が前年とくらべて〇・九ポイントあがり、三一・七%になった。過去最高である。
日本の株式市場における外国人売買シェアは六〇%(一四年)をこえ、外国資本が最大の利益を得ている。日本の大資本が国内外で儲けを拡大すればアメリカ金融資本が株式配当というかたちで利益を懐にする。
安倍は、外遊三昧で米日独占資本のために「援助」というかたちで税金を湯水のように使っている。そのために国民は住民税、所得税、揮発油税、重量税、酒税、タバコ税、消費税など有無をいわさずとりたてられ、そのうえ、医療保険料と介護保険料の徴収、医療の窓口や介護をうける場合は、さらに自己負担分をとりたてられている。米日独占資本にみつぐために国民に困窮生活をおしつけるというのが安倍の外遊と「援助」である。
安倍政府がアメリカに従属しているために(税金はすいとられ)、国民の生活苦がますます深刻になっている。「財政が赤字だといっているのに外国に援助などいいかげんにしろ。国内の庶民の生活や東日本大震災の復興をはやくやれ」というのは多くの人の意見である。対米従属を打破しなければはてしもなく税金はすいとられる。安倍政府を打倒しなければ生活苦はもっとすすむ。