『人民の星』 
  6040号1面 2015年11月11日
日中「韓」首脳会談 歓迎されない安倍
孤立もたらす戦争政治 米追従の結果

 日中「韓」三国首脳会談が一日、二〇一二年いらい、三年ぶりにひらかれた。会談は経済面から連携を強める中「韓」と日本との溝の深さをうきぼりにするものとなった。それはアメリカ言いなりの外交の結果である。
 日中「韓」三国首脳会談は二〇〇八年からはじまった。ASEAN(東南アジア諸国連合)+3(日中「韓」)の開催(一九九七年)をうけて生まれたもので、中国がASEANをはじめアジアでの経済的・政治的影響力を拡大してきたことがある。
 また日本では二〇〇九年八月末に自民党政府がうちたおされ、民主党主導の政府が誕生し、首相・鳩山がアメリカ抜きの「東アジア共同体構想」を提唱するなかで、二〇一二年まで三国首脳会談は各国の持ち回りでひらかれた。
 だがアメリカのオバマ政府は中国に攻撃のほこ先をむけた「アジア・太平洋重視」の戦略をうちだし、その戦略にのった民主党・野田政府が、アメリカの意図どおり、「尖閣諸島の国有化」(二〇一二年九月)を決定し、日中間の対立を激化させた。さらにアメリカの後押しで安倍自民党政府が復活するなかで、三国首脳会談はひらけなくなった。
 今回、日中「韓」三国首脳会談が三年ぶりに開催された一つの要因は、オバマ政府が日「韓」関係の改善を強くもとめたことがある。経済が海外輸出に依存する「韓国」は、〇八年秋の金融・経済恐慌いらい、中国との経済関係強化に活路を見いだし、急速に中国が最大の貿易相手国、投資国となった。
 二〇一三年二月に「韓国」大統領に就任した朴槿恵(パク・クネ)は米「韓」同盟強化とともに、対中関係強化をうちだし、同時期に発足した安倍政府とは「歴史認識」の問題で批判を強め、日「韓」政府は対立を深めた。

米国が日「韓」の改善求める
 オバマ政府の「アジア・太平洋重視」の戦略は、アメリカのもとに日本と「韓国」を動員することが大きな柱であり、オバマ政府は亀裂の深まった日「韓」関係の「改善」を両国政府に強くもとめてきた。
 このなかで「韓国」政府は、三国首脳会談の開催を安倍政府にもちかけ、日「韓」、日中、中「韓」の首脳会談もひらくことになった。しかし、一連の会談のなかで中「韓」が連携し、日本に対峙する構図となった。
 朴槿恵は中国との連携を強調する対応をとった。中国首相・李克強は「韓国」への公式訪問で、一〇月三一日の首脳会談では「過去最良」の関係を演出し、中「韓」自由貿易協定の年内発効や経済・環境問題での協力に関する一八件の覚書、合意書に署名した。「韓国」政府は李克強歓迎の夕食会もひらいた。
 覚書のなかには、中国がうちだしたアジアから欧州にいたる「一帯一路」経済構想と、「韓国」がうちだしたユーラシア大陸で各面の交流を深める「ユーラシア・イニシアチブ」での連携を深める、という合意もある。会談のなかで朴は「戦略的協力パートナー関係を中長期的に発展させたい」とのべている。
 一方、安倍は「実務訪問」にとどまり、つめたくあつかわれた。二日に三年半ぶりにひらかれた日「韓」首脳会談のおもな議題は、関係正常化のための「従軍慰安婦問題」の協議加速・早期妥結であった。会談で安倍は、南中国海問題で中国を批判し、米艦による「自由航行」への支持を表明したが、朴はそのことについて無視した。会談の文書発表や共同記者会見、安倍歓迎の昼食会もひらかなかった。
 一日におこなわれた日中「韓」首脳会談は、三国のFTA(自由貿易協定)交渉の加速や人的交流を拡大すること、三国首脳会談を定例化するなど関係を強化すること、二国間関係を改善することを確認するものとなり、「共同宣言」は南中国海問題や「慰安婦問題」など意見が対立するものにはいっさいふれなかった。

けん制され釘さされる安倍
 「共同宣言」は「歴史を直視し、未来志向での諸課題の対処」をもりこんだ。そして、共同記者会見で朴槿恵は第二次世界大戦終戦七〇周年についてふれ、李克強は反ファシズム戦争勝利七〇周年にふれ、安倍をけん制した。
 一日の日中首脳会談で、李克強は三国首脳会談の中断について「なぜこんな状況が生じたか、日本側は原因がよくわかっていると思う」「歴史問題は中日関係の政治的基礎」と安倍政府にクギをさした。
 このようにして三国首脳会談や一連の首脳会談で、中「韓」と日本の対立は一段とうきぼりとなった。
 それは安倍政府がアメリカの中国にたいする戦争政策を一瀉(いっしゃ)千里ですすんでいるからである。
 安倍はアメリカの意向にそって安保法を成立させ、中国と紛争をおこす態勢にふみだしている。その指揮をとるのはアメリカである。一方、安倍政府は安保法によって、「邦人救出」「米艦防護」の看板で「韓国」に自衛隊を派兵する機をうかがっている。
 このため、中国や「韓国」の人民のなかで、米日による戦争策動に強い警戒感がおこっており、それが中「韓」と日本との対立となってあらわれてきているのである。
 中「韓」との関係を修復するためには、安倍政府が中国にたいする戦争政策をやめることが大前提であり、「韓国」にたいしてもかつてのような戦争を二度とおこさないことを誓約することである。平和的関係を建設することによってはじめて三国関係も進展するのである。しかし、安倍政府は中国にたいする対抗的態度をやめず、「慰安婦問題」をはじめ「韓国」政府への真摯な態度も見せなかった。アメリカの尻馬にのった対米従属外交は、日本民族の利益をそこなうものである。