『人民の星』 
  6043号1面 2015年11月21日
日本経済 マイナス成長続く
購買力を奪う人民の貧困化

 内閣府は一六日、国内総生産(GDP)が四~六月期につづき七~九月期もマイナスになったと発表した。この報を知った勤労人民は「ああやっぱり」と安倍政府の「景気回復」がいかにインチキであったかをあらためて実感した。給料や年金からのひかれもの(税金と保険料)ばかりがふえ、消費購買力はおちる一方である。社会全体の生産増大がこの人民の消費購買力という限界にぶつかって、生産の縮小という事態がおこっているのである。
 内閣府発表の柱はつぎのとおりである。
 ①二〇一五年七~九月期の実質GDPはマイナス〇・二%となった。四~六月期もマイナス〇・二%であるから、二期連続のマイナスである。
 ②景気の足をひっぱったのは、企業の設備投資の減少で、マイナス一・三%となった。前期(マイナス一・二%)につづいて設備投資は大幅なマイナスとなった。
 日本経済はリーマンショックの二〇〇八年度と翌〇九年度にマイナス成長におちいり、その後、政府が国家資金を投じて独占資本に市場を提供する政策や中国の経済成長にたすけられて、日本経済は回復過程にはいったが、二〇一四年度にはふたたびマイナス成長に転落した。このまますすめば二〇一五年度もマイナスになる可能性が高い。
 資本主義経済の特徴は自由主義であるから、個個の企業が利益をもとめて盲目的な生産拡大をおこなう。しかし、「最大の需要」である労働者、勤労人民の消費購買力はふえるどころか縮小する状況である。こうして生産増大は一定期間がたつとかならず購買力の限界にぶつかり、周期的に過剰生産危機をもたらす。
 それが政府の対策によってパニック(恐慌)におちいらないかわり、長期の不況、国家財政の悪化となってあらわれている。しかし、それはギリシャのようなより深刻な恐慌を準備していると見なければならない。
 設備投資がマイナスになっているということは、大手企業が今年に入って過剰生産になっていることを察知して、生産拡大を手びかえているということである。大企業の設備投資の四割弱が海外への投資になっているなかで、中国市場の停滞が影響している。
 日本の独占資本にとって中国市場への資本投下は、過剰生産危機を打開するカンフル剤であった。ところが頼みの中国も日本とおなじ過剰生産危機におちいり、工場設備や人員も「過剰」となっている。
 日本から中国に進出している建設機械のコマツが五〇〇人の人員削減を実施した。神戸製鋼子会社のコベルコ建機が二〇〇人削減計画、太平洋セメントが一〇〇人の削減計画をだしている。中国での建設機械の売上は、今年四~九月に前年同期より四四%おちこんでいるという(コマツ)。売上半減の情勢のなかで、首切りがはじまっているのである。
 設備投資が縮小されているのは、企業に資金がないからではない。逆に企業のふところには内部留保が三五〇兆円もたまっている。独占資本により多くの利潤をもたらすあらたな投資先が内外に見つからなくなっていることをしめしている。

進まぬ設備投資
 日本政策投資銀行の調査によれば、資本金一〇億円以上の大企業の二〇一五年度の設備投資計画は、全産業(電力をのぞく)で一三・九%増、製造業では二四・二%増の予定であった。ところが実績はすでに見てきたようにマイナスになっている。さらに深刻な問題は、二〇一六年度は計画の時点でマイナス七・三%(全産業)になっているということである。来年度はよりきびしくなると独占資本は見ている。
 日本資本主義は、アメリカの支配のもとで末期的な段階をむかえている。そのなかで工場や生産点における資本と労働の対立とともに、都市と農村、工業と農業、精神労働と肉体労働の対立が激化している。労働者や農民は、失業や貧困の心配なく労働に誇りをもって生活できる社会を切望している。