『人民の星』 
  6043号2面 2015年11月21日
福島 県議選でまた自民敗北
復興サボ、安保法、原発憤る

 福島県議選(定数五八)の投開票が一五日におこなわれ、自民党は選挙前を二議席下まわる二六議席となり、また敗北した。先月の二五日には宮城県議選がおこなわれており、ここでも自民党は敗北している。
 福島県でも集団的自衛権の行使を柱にする、アメリカの戦争のための安保法を安倍政府、自民・公明がごり押しで成立させたことへの批判がうずまいている。安保法制をめぐっても、県内大学の研究者が連名で反対声明をだしたり、県民各層がさまざまな反対行動をとりくんできた。
 また、東日本大震災、東電福島第一原発事故の復興や収束作業を政府がさぼりまくって住民の生活がますます困難になっていることへの怒りがうずまいている。東電福島第一原発事故から四年八カ月たつが、原発事故の収束のめどがたたないだけでなく、いまだ一〇万人以上の人人に県内外での避難生活をおしつけている。福島県は米作や果樹、畜産などがさかんな農業県であるが、風評被害もふくめて生産と生活の困難を安倍自民党政府は解決しようとしない。
 そのうえ、自民党は以前はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉に「断固反対」といっていたにもかかわらず、選挙で勝って安倍らが政府の座につくと公約などどこふく風でほうりなげ、「農産品重要五品目の関税化は維持した」といってコメの輸入量を拡大し、数百の農産品の関税をゼロにするでたらめな約束をしたこともあきらかになり、怒りがふきあがっている。
 このようななか、福島県議選はおこなわれた。
 自民党は今回、八年ぶりの過半数をめざすとして、候補者三三人をたてた。
 自民党総裁の安倍晋三は、投開票の一カ月前に原発事故被災地の大熊町・楢葉町にでむいて、人心を引きつけようとした。
 選挙期間中には地方創生相・石破茂がのりこんで、安倍政府の看板政策である「地方創生」を訴えた。公明党代表・山口那津男は安保法は「争点ではない」と安保法が争点にならないようにやっきとなり、消費税率引上げ推進の張本人の一人であるのに、軽減税率の導入に筋道をつけたと、得意げに演説した。
 ところが、自民党は現職四人をふくむ七人が落選して、過半数どころかさらに議席をへらし、二六議席になった。公明の議席をいれてようやく過半数である。
 官房長官・菅義偉は一六日の記者会見で、福島県議選で自民党が改選前より二議席へらしたことについて、「(保守系の)無所属候補もいるので、そんなに敗れたということでもない」と平静さをよそおったが敗北の事実は、はっきりとでている。

宮城県でも自民たたき落す
 一〇月二五日におこなわれた宮城県議会選挙(定数五九人)でも自民党候補は現職四人をふくむ七人が落選し、無所属の推薦候補二人をくわえても過半数(三〇人)にとどかなかった。
 そのなかで、加美選挙区(定数一)では、五選をめざした自民党現職にたいして、核廃棄物の最終処分場の候補地とすることに断固反対する元総務課長が一万一五〇〇票を獲得し、五七八四票の大差をつけて勝った。
 女川原発(女川町、石巻市)から半径三〇㌔圏の遠田選挙区(定数一)では自民党が現職にかわる候補をたてることができず、「原発再稼働反対」をかかげた二人の候補のうち一人が当選した。
 どこも地方での選挙で自民党をたたきおとしているのが実際である。
 福島県議選の投票率は四六・六七%(前回四七・五一%)と過去最低で、無投票選挙区は全選挙区一九のうち八選挙区になった。通例、投票率がさがれば自民党に有利といわれているが、投票率がさがっても、自民党が敗北するという情勢となっている。

福島県双葉町民(40代)の声

 福島県議選があったが、双葉や大熊など浜通りはいまだにみんな原発事故の避難生活をしている。住んでいるところもばらばらになっており、選挙にならない。無投票のところも多かった。選挙どころではないという感じだ。
 地域には放射能汚染の線量の高いところと低いところがある。低いところは住民をもどすという話になっているが、まだ住宅をどうするかとかいっている段階で、これからどうなるかさきの見通しがだされない。
 たしかに、放射能で汚染されたという問題は深刻だろうが、もう五年もたつのだし、ぜんぜん対策がすすんでいないという印象をみんなもっている。いったいなにをやっているのかということだ。
 双葉町は(汚染土砂や草木の)中間貯蔵施設をつくるということになっているが、ふるさとに帰りたい、だから施設建設には絶対反対という人もいる。住宅の査定もすすんでいない。用地買収がほとんどすすんでおらず、いろいろと反発があるのだろう。
 県議選では自民党の現職四人をふくむ七人もおちたが、そういう復興の遅れにたいする県民の反発が強かったのだと思う。