『人民の星』 
  6045号3面 2015年11月28日
大阪府知事・市長選挙の実態 
安倍演出の八百長選挙

 大阪府知事、大阪市長というダブル選挙は二二日おこなわれ、大阪府知事に大阪維新の会の松井一郎が、大阪市長に同じく吉村洋文が当選した。投票率は府知事選挙が四五・四七%(前回のダブル選挙から七・四一減)、市長選が五〇・五一%(同一〇・四一減)で大幅にさがった。マスコミは「大阪維新圧勝」を宣伝しているが、橋下維新と安倍政府、自民党がぐるになり、憲法改悪や戦争政治のため橋下維新の復活をたくらんだ八百長選挙であり、これに多くの府民、市民が強く反発した。

維新・自民結託、市民怒る
 「当選確実」は開票から間もない午後八時すぎにでた。だが記者会見にでてきた松井も吉村も顔が引きつっていた。橋下維新にとっても思いどおりの結果にはならなかったのである。

10万票減った維新市長候補
 橋下は選挙戦にあたり、春におこなわれた「大阪都構想の是非を問う」住民投票で投じられた七〇万五五八五票という反対票を、橋下維新の市長候補が上まわることを目標とし、橋下維新や「大阪都構想」を復活させようとした。
 しかし、吉村の票は五九万六〇四五票で反対票に遠くおよばず、住民投票のときの賛成票であった六九万四八四四票とくらべても一〇万票もへった。
 マスコミを動員して書きたてた「ダブル選挙」だったが、府民、市民の答えは「空前の投票率の低さ」である。多くの人人は「橋下維新が勝って、大阪はもっともっと悪くなる。たたかいはこれから」と語っている。
 今度の選挙の糸をひいたのは、安倍政府、自民党本部である。安倍政府は大阪の自民党員の候補よりも橋下維新の勝利をのぞんでいた。大阪の自民党候補が二人とも敗北したにもかかわらず、開票後、「大阪維新の勢いは国政にも反映される」(首相官邸幹部)、「憲法改正について期待できる。そのほかの政策でも連携できるところは連携すればいい」(自民党幹部)とあからさまに語った。

府連会長に安倍に近い人物
 実際、首相官邸、自民党本部の裏の動きのなかで、自民党大阪府連の動きはまったくにぶかった。選挙を前にして、最近、衆議院議員・中山泰秀が大阪府連会長におさまった。中山は安倍に近い人物である。
 選挙戦でも、大阪自民党の候補者は「無所属」で出馬し、自民党の推薦をうけるだけで、野党の応援を正式にはこばみ、市長選の野党系の決起集会に参加した自民党国会議員にたいして処分をちらつかせるなど、本気で勝つ気があるのかとささやかれた。
 実際、大阪の自民党関係者は、「自民党支持層も橋下維新にとりこんだ」といい、出口調査でも大阪の自民党支持者の四割近くが橋下維新の候補に投票した、とマスコミも露骨に報じた。一方、橋下らは選挙戦のなかで首相・安倍や官邸との“盟友”関係を宣伝し、批判の矛先は、自民党大阪府連にむけることにとどめた。
 今回の選挙は、安倍政府、自民党本部と橋下維新、自民党大阪府連が結託した八百長選挙であったのである。市長選挙に当選した吉村は早早に再度の住民投票を表明している。この傲慢さは橋下と同じであり、これほど市民をばかにした話はない。しかし当選したと言っても、大阪都構想に「賛成」した票数とくらべても格段に少ない票である。かれらは見放されたのである。
 橋下維新は、選挙戦で「言いたい放題」だった。財政は破たんし、教育も福祉も医療もすべて後退し、府民、市民生活は破壊されつづけてきた。しかし、橋下らは街頭宣伝で、財政も好転し、住みやすくなった、「後戻りさせるな」とさけびつづけた。「言いたい放題」の化けの皮がはがれてくるのは時間の問題である。

維新既に破綻市民憤りの声
 今回のダブル選挙をめぐって府民、市民は怒りをつのらせている。
 年金生活者は、「知事の松井は住民投票で負けたあと上京し、安倍政府と組んで大阪都構想を実現させるといった。与党になるといった。安倍もその気になり、ことあるごとに橋下維新にエールをおくっている。安倍が一番喜んでいるのではないか」と痛烈に批判している。
 元小学校校長は「橋下維新は教育だけにとどまらず、医療も福祉もでたらめだ。橋下が導入した教育の選択制、公募校長はすでにイギリスで破たんしている。それを強引に導入したが、いまでは公募に応じる民間人も激減している。学力をあげるというが、その背景にある貧困と家庭崩壊を解決しないでどうする。塾の利用クーポン券をばらまいても業者が儲けるだけだ。福祉、生活を破壊して学力の向上などない」と批判している。
 退職した婦人教師は「アリになったつもりで、コツコツと石をつついていかなければ。かならず石の門がひらかれる日はくる」とのべ、斗争を継続することだと強調している。
 多くの人人が、橋下維新が、安倍政府の戦争政治とむすびつき政治の反動化、地方の破壊をすすめていることに怒りをつのらせている。新自由主義で生活を破壊し、戦争への道をひた走る安倍政治、橋下維新の反動政治をうちやぶることで勤労者、子どもたちの未来はひらかれる。