『人民の星』
6051号1面 2015年12月19日
消費税 「軽減」騒ぎの大ペテン
大企業・富裕層は優遇
安倍政府と自公与党、マスコミは、一七年春の消費税率一〇%引上げにむけて「低所得者の重税感を軽減する」ためといって、軽減税率を生鮮食品だけにするか加工食品もふくめるか、そのための財源一兆円をどうするかなどと騒ぎたてている。だが、食品をふくめ諸物価全般があがり、労働者・勤労人民にたいする増税になるのははっきりしている。政府・与党は「減税」を吹聴しているが、減税は大企業、富裕層のためであり、労働者・勤労人民はいっそう増税となり、すいとられるのである。
すべての物価は上昇
政府・与党は一六年度税制改定大綱をきめようとしているが、その一つの柱が、一七年四月からの消費税率一〇%引上げにともなう「軽減税率」である。「軽減税率」というが、消費税率を引きさげるという話ではなく、食品の一部について税率八%にしておくだけのことである。
与党は対象を「酒類をのぞく食品全般」とし、「外食」については店内食事は一〇%、持ち帰り・出前は八%で合意したといっている。
このためまったくばか気たことがおきようとしている。包装したパンは加工食品なので八%だが、食べたいので包装のない税率八%のパンを買って、店内の椅子にすわって食べると一〇%となり、差額を徴収されるのである。
こうしたばかばかしいことにくわえて、八%にしておくということで、なにか得をした気分にさせるのが目的である。ところが八%のままにするのは一部であって大半は一〇%にする。このことで広範な商品の値段が確実に値あがりするのである。
つまり、食品そのものは売値に八%の消費税率という表示をするようになるが、食品以外の、輸送用につかうガソリン、や包装紙、ビニール類、電気代、上下水道代、光熱費、電話代、医療費、介護保険料、書類作成の費用、各種資機材など、圧倒的多数の消費税率が一〇%になる。
それは最終的に商品の価格上昇にはねかえらざるをえない。つまり、消費税率は食品について八%と表示したとしても、商品の価格そのものをひきあげることで前段にかかる消費税率引上げ分を転嫁するのである。つまり、商品価格はあげるが、消費税率は八%という表示にしてごまかすということになる。あるいは、ソーセージを一本少なくする。チーズを一個少なくするということがどこでもおこなわれることになる。「軽減税率」というのは大インチキで、実態はすべての値上げである。
また消費税は、税の逆進性が大きい。低所得者ほど税負担の割合が大きく、逆に富裕層ほど負担が少ない。「軽減税率」もまた、購買力の大きい富裕層ほど税負担が軽減されるのである。
高級車を非課税にする悪政
政府・与党の一六年度税制改定大綱は、独占大企業、富裕層への減税策が目白押しである。
その一つが、法人税実効税率の引下げである。現在の法人税実効税率三二・一一%を、一六年度に二九・九七%に、三年後の一八年度には二九・七四%に引さげるとしている。
政府・与党は、これまでも消費税率引上げにあわせて、法人税関係税率を引きさげてきた。このため、消費税による増収分は、独占大企業への減税として消え、企業の利潤の増大となってきた。政府・与党は、消費税一〇%引上げでもそれをやろうとしているのである。
そのうえ、外国税額控除制度(海外の支店・子会社の所得を課税しない)、研究開発減税など独占大企業には様様な「租税特別措置」がとられている。このため、独占大企業ほど税金をはらっていない。
自動車分野では、消費税率一〇%引上げにあわせて、自動車取得税を一七年三月末に廃止して、よく四月から燃費性能に応じた新税を設ける。新税は、燃費のよい車種ほど税負担が軽く、燃費性能が劣る車種は増税となるというもので、電気自動車などもっとも燃費性能の高い車は非課税、燃費性能が低くなるにつれて一%から三%にする。つまり、高級車で燃費のいいものほど非課税となるものである。
高級車こそ高い税金をかけるべきだというのが人民の声であり、これに逆行する新税である。
自動車については、軽自動車税が今年の四月の新規登録車から大幅に引きあげられ、自動車重量税も登録後一三年、一八年をこえたものは引きあげられた。また、来年四月からは登録後一三年超えた車や二輪関係も税金が引きあげられる。自動車関係も勤労人民には重税がのしかかるのである。
農地取り上げる税制改悪も
農地に関しては、農地中間管理機構を通じて企業などに農地を貸す農家には固定資産税を半減するとしている。一方で農地を手ばなさない農家の耕作放棄地には一・八倍に増税する。農地の企業への集約化がねらいである。農業・農村の疲弊をいっそう促進するのは必至である。
さらに、訪日外国人への消費税免税も拡大する。訪日外国人が消費税免税をうけられる一般物品の最低販売額を、現行の一万円超から五〇〇〇円以上に引きさげるというものである。訪日客による消費拡大の恩恵を幅広くうけられるようにといっているが、中国人客の「爆買」にしめされるその購買は、主として各地の大型店であり、中小商店はほとんど恩恵はないのである。
さらに、医薬品に関しても、指定された一般用医薬品(市販薬)の年間購入額が一万二〇〇〇円をこえると所得税を減税する新制度を一七年一月から導入する。購入額は年一〇万円が上限で、各人が領収書を保存して申告するとしている。
指定された医薬品とは、市販薬のうち処方箋が必要だったものを薬局の店頭で売れるようにした「スイッチOTC薬」(風邪薬や胃腸薬、目薬、発毛剤など)である。購入額が二万円なら八〇〇〇円分に所得税がかからないことになるが、それを利用して医療から人民を排除していくことにねらいがある。
このように、安倍政府と与党の税制改定は、「軽減税率」で大騒ぎして、税金がやすくなるかのような雰囲気をつくりだし、じつは独占大企業、富裕層への減税をやり、勤労人民には大重税をやろうとしている。