『人民の星』 
  6055号1面 2016年1月9日
日本経済を支配する米国
株式の配当を通じ搾取 外国人が31%保有

 安倍政府はアメリカの言いなりである。安保法案の成立にむけてアメリカ議会で演説し、アメリカ政府や議員たちにまず約束したという事実は、安倍政府がアメリカに骨の髄まで従属していることをしめした。アメリカは「安保条約」と米軍基地によって日本を軍事的に支配し、政治も支配しているのである。しかも経済もおなじである。そして、アメリカによる日本経済支配はこの十数年間桁外れにすすみ、そのために日本の労働者の非正規化、低賃金化と過酷な労働、農業の破壊や中小零細のなぎ倒しが日常化しているのである。これをだまって見過ごすわけにはいかない。労働者を中心に、下から、すべての人が団結し、アメリカの日本支配を打破するために奮斗するときがきている。

米銀に乗っ取られるソニー
 アメリカ独占資本は、日本経済を戦後一貫して支配してきた。戦後復興から七〇年代前半の「高度成長期」のころまでは、おもに原料、資源、技術(特許)をにぎることで日本独占資本の上に君臨してきた。繊維メーカーの東レなどは、アメリカのデュポン社からナイロン製造の特許を得るために資本金をうわまわる技術料をはらった。こうしてアメリカ独占資本は日本企業からぼう大な利益をすいあげたが、その原資は農村をおわれた低賃金の労働者の労働の搾取だった。
 電気製品のほとんどをはじめ主要な工業製品はことごとくアメリカが技術を独占しており、日本企業はアメリカに技術料をはらってはじめて生産ができた。
 しかし、日本資本主義が腐朽し、アメリカも情報通信を使った金融資本が巨大化し腐朽するとアメリカは搾取の方法もかえた。とくに一九九〇年代以降、日本の企業の株式を手に入れ、株主配当を極大化することで日本の労働者からの搾取を強める方向をとってきた。
 バブル経済が崩壊した一九九一年のころは日本の上場企業にたいする外国人保有株の比率は全体の六・〇%程度だった。その後一貫して株の外国人保有率はふえつづけ、二〇一四年度には史上最高の三一・七%になった。外国の中心はアメリカである。アメリカ金融資本は、株式保有による配当をつうじて日本人民からの搾取を強めている。
 日本の代表的企業といわれてきたソニーは、いまでは外資系企業になっている。ソニーの株式保有者のうち、外国人の比率は、二〇一四年度末で五六・六%となった。従業員の主力は日本人だが、株主の主力は外国人である。
 ソニーの大株主上位一〇人を見ると、一位のシティバンクをはじめアメリカ系金融機関のゴールドマン・サックス、ステートストリート系(四社)、ニューヨークメロン銀行、JPモルガン・チェース銀行の計八社が名をつらねている。ソニーは米系日本企業なのである。株主配当の半分以上はアメリカを中心にした外国に流出している。
 他の大手企業も外国人による株保有が強まっている。トヨタ自動車でも、株式の外国人保有比率は三一・一%で、日本企業の平均を代表している。上位一〇人の大株主には、やはりアメリカ系が三社はいっている。ステートストリート、ニューヨークメロン銀行、JPモルガン・チェース銀行などである。
 日本の主要企業が業績をあげれば、自動的にアメリカの金融資本家への配当がふえる。そこから、労働者の搾取を強め利潤をあげる圧力がいままでにもまして強められている。一九九五年に日経連が、非正規労働への転換をうちだし、二〇〇〇年代にはいって小泉政府が派遣労働者の製造業への解禁をし、安倍政府がそれを恒久化した。こうしていまでは労働者の四〇%、約二〇〇〇万人が非正規労働者となり、日本にはぼう大な低賃金層が形成され、日本独占資本は毎年史上最高益を更新している。そして利益の三割はアメリカをはじめとする海外の株主のふところに配当金としてはいっていくのである。昨年暮れ、上場企業の内部留保が三五〇兆円なったと報じられた。しかし財界はその内部留保は株主配当や企業買収に使うと言った。

法人税払わぬアマゾン
 アメリカ大資本は、株式保有などをつうじた間接投資だけでなく、企業として直接的に進出しながら、税金をはらわなかったり、アメリカの進出分野について、日本企業の参入を法律で禁止したりし、日本企業にはない特権をもち、ばく大な利益をあげている。
 巨大流通資本のアマゾンは、インターネットを使って書籍の注文をつのり、配送料を無料にし、短時日のうちに個人宅まで配達するシステムを開発して、急成長した。その後、書籍だけでなく、家電や衣服や雑貨などあらゆる商品をインターネット販売で取り扱うようになり、最近では「戒名」まで商品にして販売し寺院が抗議している。
 アマゾンは、二〇一四年には日本で八三七九億円(七九億㌦)を売りあげている。実際には、これに第三者による販売が五二〇〇億円程度あり、販売額は一兆三〇〇〇億円に達すると見られている(アマゾンは経営実態をあきらかにしていない)。
 アマゾンは全国の拠点に、自前の倉庫と物流施設をもち、派遣労働者を使って施設内の作業をやらせ、佐川急便も撤退するほどの低価格運賃で宅配業者と契約し、比較的安価でただちに配送するシステムを武器に流通小売りの巨大資本として君臨している。ところが、アマゾンは所得税を一銭もはらっていないのである。
 二〇〇九年に東京国税局がアマゾンにたいして一四〇億円の追徴課税をおこなったことがあった。これにたいしアマゾンは、インターネットを使って日本の顧客が買物をした場合は、米国にあるアマゾン本社から直接購入したことになり、倉庫や物流施設も恒久的な施設ではないから日本の法人税をはらう義務はないと主張した。この問題で日米の課税当局は協議したが、アメリカ政府はおしきり課税は取り消された。
 アメリカは日本政府に強力に要請して一九八〇年代後半、電電公社を民営化してNTTにかえた。この過程で電電公社が独占していた電話通信線を他の通信会社が安価で使えるようにし、インターネット事業がなりたつようにした。この民営化がなければ、アメリカのアップル社のスマートフォンもアマゾンの物流事業もなかった。

がん保険は米資が独占
 アメリカ独占資本の日本での支配力は、がん保険でも露骨である。日本のがん保険は、アメリカ保険会社の独占状態にある。がん保険専門のアメリカンファミリー保険(アフラック)は、日本のがん保険の七五%のシェアを独占している。七〇年代より、がん保険の分野(第三分野)では日本の保険会社の参入が禁止され、アメリカ保険会社の独壇場であった。
 二〇〇一年になってようやく日本の保険会社も、がん保険への参入が解禁され、さすがにアフラックのシェアも八五%から七五%にさがったが、独占状態はいまもかわらない。アフラックの代理店は全国に一万六〇〇〇店舗があるが、これにさらに二万局の郵便局でもアフラックのがん保険が販売されるようになった。アメリカ政府は日米交渉のなかで、郵便局の簡易保険が政府をバックにした保険でけしからん、やめるべきだと攻撃して郵政の民営化を要求してきたが、依然として政府がバックとなっている現在の郵便局がアメリカのがん保険をあつかうことにたいしては、なんの抗議もしない。
 これらは氷山の一角である。最後に、日本政府の予算からアメリカが資金をもぎとっている実態を見てみる。

米国債買い米軍にも金
 日本政府は、一〇〇〇兆円をこえる借金をかかえ、このうち国債残高は八五五兆円(二〇一四年)になっている。安倍政府は、財政危機を理由に、消費税を一〇%にひきあげようとしている。また、社会保障制度の改悪をすすめ、国民の自己負担をふやしている。
 ところが、ぼう大な赤字をかかえ、いまでも毎年四〇兆円もの国債を発行しなければ予算がたりないといっているのに、日本政府はこれまで気前よく一二九兆円の外国債券(ほとんどが米国債と見られる)を買っている。日本政府は借金しながらアメリカ国債を買っている。
 アメリカ政府・FRB(連邦準備制度理事会=アメリカの中央銀行)はリーマン・ショック後、自国の企業・金融機関にたいして、それらが保有している米国債等のうちから三〇〇兆円規模の米国債等を買い取り救済してきた。だが、日本政府が保有している米国債については買い取る話はなく、そうした動きをまったくうけつけなかった。
 在日米軍にたいしても、日本政府は毎年、七〇〇〇億円の“みかじめ料”をはらっている。在日米軍が使う、土地、水道光熱、基地を維持するためにはたらく日本人従業員の給料、施設費などをすべて日本政府がだしている。
 ところが、いざというときアメリカは虎の子の空母と戦斗機部隊を退避させる構想をかためている。米軍が対中国戦争の構想としてすすめている「エアシーバトル」構想によれば、在日米軍基地は安全でなくなったとして、中国との戦争に突入した場合、米空母や戦斗機部隊を中国のミサイルのとどかないグアムやその他の安全な地帯に退避する。そして中国が日本にたいするミサイルをうちつくしたころを見はからって反撃にでるという。
 アメリカ帝国主義はこのようにして日本を経済的にも支配し、日本の労働者、勤労者から搾取、収奪し、そのうえ、戦争で命までとろうとしている。こうした状況をあきらめるのでなく、下から、すべての国民一人一人が団結してたちあがることが必要である。そして、日本の平和と労働者、勤労人民の生活の繁栄を実現するために、安倍政府の売国政治とたたかい、「日米安保条約」を破棄し、米軍基地をたたきだして、独立を実現しなければならないし、それはかならずできる。