『人民の星』 
  6055号4面 2016年1月9日
アメリカを震撼させた米軍基地反対の斗い
新年の決意 沖縄県 源河朝陽

 一九九五年九月三日、沖縄で三人の米兵がいたいけな女子小学生を拉致・監禁し暴行するという凶悪事件がおきた。

少女暴行事件で怒りが爆発
 この事件が報道されるやたちまち沖縄全県で怒涛のような抗議行動がまきおこり、戦後五〇年におよぶ米軍占領支配に対して沖縄県民の積もり積もった怒りが爆発した。全県各地で「鬼畜米軍は沖縄からでていけ!」とはげしい糾弾の声があがった。コザ暴動(一九七〇年一二月二〇日)のときもそうであったが、沖縄の民族的怒りの大爆発は、アメリカ政府を震撼させ、日本売国政府をひどく狼狽させたのである。
 おりしも米大統領クリントンと首相・橋本とのあいだで、米ソ二極構造崩壊後の「日米安全保障共同宣言」(安保再定義=防衛型安保から攻撃型安保への転換)をはかろうとしていたが、それを翌年(九六年四月一七日)に延期せざるをえなくなった。
 少女暴行事件を契機に、「日米安保条約」・「日米地位協定」の破棄を要求する一大政治斗争が七〇年「安保」斗争以後、最大規模となって発展し、またたくまに全国に燃えひろがった。

辺野古新基地ごり押し図る
 一方、これに恐れをなしたアメリカ政府は、燃えあがる米軍基地反対斗争を鎮静化するため、翌年の九六年四月一二日、「普天間基地の全面返還」(モンデール駐日大使・橋本首相)をうちだした。しかし、それは代替地を前提条件とするという狡猾(こうかつ)きわまりない策略であった。代替候補地にあがった嘉手納町、読谷村、沖縄市、勝連町、名護市など、県内各地で地域ぐるみの新基地建設反対斗争がまきおこった。
 しかし最終的には、名護市辺野古沖を代替地にすることが数年、数十年前からの既定方針であることが判明した。老朽化した「世界一危険な普天間飛行場」を名護市辺野古に移設すると称して、オスプレイが離発着する高機能、軍港をそなえた新基地建設計画をもくろんでいたのである。
 それ以来、アメリカ政府の手代となった歴代の売国政府は、数千億円という振興予算を振りかざし、露骨な買収工作や恫喝で県民、地域住民を分断・攪乱して新基地建設を執拗におしすすめようとしてきた。しかし、県民の圧倒的反対世論とねばり強い大衆運動によって米日政府の思惑どおりに事はすすまなかったのである。
 これに業を煮やしたオバマ・安倍は、二〇一三年二月二二日の日米首脳会談において、「普天間飛行場の移設を早期にすすめる」ことで合意した。

あせるオバマと安倍の策略
 同年一一月、アメリカ政府の強い要請をうけた自民党幹事長・石破が沖縄選出の衆参国会議員五人を党本部によびつけて米軍辺野古新基地建設の容認をせまって屈服させ、さらにこれをテコにして「県外移転」をかかげていた自民党沖縄県連に辺野古新基地推進への裏切りをやらせた。こうしてアメリカの代理人・安倍政府は、仲井真県知事を籠絡(ろうらく)し、二〇一三年一二月二七日、辺野古埋め立て申請を承認させた。
 県知事・仲井真は、安倍政府の沖縄振興予算の大盤振舞、オスプレイ訓練の本土分散移転策を「驚くべき立派な内容」と絶賛し、さらに仲井真は、「沖縄県民を代表して安倍政府に感謝する」「これでいい正月が迎えられる」などと放言し、醜態をさらした。
 仲井真の浅ましい放言は、沖縄県民の心をひどく踏みにじったが、益益広範な県民のはげしい怒りを買うことになった。県知事・仲井真もまた、安倍売国政府と結託して民族の利益をアメリカに売りとばしたのである。
 しかし、翌年の一四年一月の名護市長選挙で、辺野古新基地建設に断固反対する現職の稲嶺候補が移設推進派の末松候補に四〇〇〇余の票差をつけて再選され、地元名護市民の民意が再度明確にしめされた。
 同年一一月の沖縄県知事選挙では、新基地建設反対の翁長候補が、県民を裏切った現職の仲井真候補に一〇万票の大差をつけて圧勝した。さらに年末におこなわれた衆議院選挙では、自民党国会議員四人全員を選挙区で敗北させ、新基地建設をゆるさない沖縄県民の総意を明確にしめし、米日政府に重大な打撃をあたえたのである。

全国的な斗争へと高揚発展
 昨年、五月一七日の県民大会には、三万五〇〇〇人以上の人人が結集して、新基地建設絶対阻止の強い意志を内外にしめした。
 昨年、安倍政府が安保法制を強行し、戦時国家態勢づくりに狂奔するなか、これに反対する全国人民の世論と斗争が、沖縄斗争以来四十数年ぶりの全国的な政治斗争へと発展し、大きく高揚した。
 そうしたなか、「安保法制と新基地建設、先島諸島への自衛隊配備は一体のものだ。新基地建設計画を断念させ、戦争を阻止しよう」「全国人民の団結の力で安保法を廃止しよう。安倍を辞めさせろ」との県民世論が急速に高まった。
 追いつめられた安倍政府は沖縄県民の総意を踏みにじり、「民主主義」の仮面をもかなぐりすてて、強権的に新基地建設をおしすすめようとしている。これをめぐって米日政府と沖縄県民、日本人民との真っ向からの激突状況となっている。
 安倍政府が、埋め立て承認取り消し違法だとして沖縄県を相手に訴訟を起こし、沖縄県が地方自治の蹂躙(じゅうりん)だとして政府を相手に訴訟をおこすという、安倍政府と沖縄県との裁判斗争という前代未聞の事態にいたっている。
 米軍基地増強は、沖縄だけではない。米軍岩国基地では、神奈川県・厚木基地にいる第七艦隊米空母艦載機五九機が移転され、普天間基地からは空中給油機一五機が移転され、現在配備している五三機とあわせて約一三〇機もの航空機をおく極東随一の米軍基地にするという計画が進行している。
 そのほか佐世保、横須賀、横田、厚木、三沢など全国各地のすべての米軍基地が増強されており、佐賀空港の自衛隊基地化・米軍基地化がすすめられようとしている。
 また、沖縄の南西諸島(宮古島、石垣島、与那国島)への警備部隊、地対艦ミサイル部隊の配備、地下指揮所、ミサイル基地、弾薬庫、実弾射撃演習所などの建設、陸自ヘリ部隊など自衛隊の配備、自衛隊基地建設計画がおしすすめられようとしている。

米の対中戦争へ日本を動員
 アメリカが辺野古に新基地、南西諸島に自衛隊基地を建設し、全国各地の米軍基地を増強する目的は、中国に戦争をしかけ、中国という巨大な市場を手にいれるためである。
 戦争の危機、米軍・自衛隊基地の増強、原発再稼働、TPPによる農漁業の破壊、消費税率の引上げ、貧困と失業の増大、教育の荒廃、政治の腐敗・反動化など、日本社会の諸悪の根源は「日米安保条約」(日本社会の対米従属構造)にある。
 労働者階級を先頭に、農民、漁民、中小零細業者、青年学生、婦人、教職員、知識人、文化人など広範な人民が団結して統一戦線を形成し、諸悪の根源に向かってたたかいを発展させていけば、日本社会の根本的変革をなしとげる壮大な展望がきりひらかれる。
 沖縄県民、本土の人民の根本的要求は、「アメリカは核も基地も持って帰れ!」である。このスローガンで沖縄と本土の団結をかちとることがもっとも重要である。
 沖縄と本土は団結し、原水爆戦争阻止、「安保」破棄、新基地建設阻止・米軍基地撤去の全人民的な大衆運動をまきおこしていこう。