『人民の星』 
  6057号4面 2016年1月16日
「いじめ」口実の抑圧は戦争への道
人民教育同盟が父母、地域と座談会

 人民教育同盟は新学期がはじまったばかりの一〇日、教育現場で焦眉の問題となっているいじめキャンペーンをめぐる抑圧構造についての学習会をおこなった。父母や地域の人人をまじえての二回目の学習会で、いじめ、体罰と称した教育を破壊する権力の抑圧構造が戦争情勢とむすびついて強まっており、教師が父母や地域の人人とひろく団結してそれを打ちやぶっていくことが重要になっていることが深められた。

安保法反対 東京行動の教訓も学ぶ
 学習会は、午前中に安保法制をめぐってたたかわれた東京行動、原爆展全国キャラバン隊の活動を長周新聞社から報告をうけて、全国的に形成されている敵味方のするどい矛盾と活動の教訓をふまえて学校現場でおきているいじめ問題、それを打開する道について認識を一致させていく形ですすめられた。
 映像をまじえた昨年の東京行動の報告では、「なにか行動しなければ」との強い思いをいだいた若者や婦人などごく一般の人たちが地域や階層をこえてこの運動に自発的にくわわり、日に日に大きく発展したことがあきらかにされた。その行動のなかでつかんだ人人の戦争反対の強い思いを集中して号外にし、大衆のなかにかえしていくなかで、行動に参加している人たちの論調が変化し、日本を戦争にもっていこうとするアメリカへとほこ先がむけられるようになった。
 「なぜアメリカのために日本人が戦場にかりだされなければならないのか」との思いは、多くの人人のあいだにあったが、号外がそれをうながし大きな世論となって集会での論調がかわっていった、と強調された。原爆展パネルの内容が世論をあとおしした。パネルの反響は大きく、雨のなかぬれたパネルをふきつつ一生懸命見る人や「アメリカにさんざんやられてきたが、いまだにアメリカのいうがままにしたがわなければならないのか」「これほど日本中が破壊されてきたことを知らなかった」といった怒りのこもった意見がいたるところでだされた。
 キャラバン隊の活動では、もう一つのテーマは東京大空襲の真実をあきらかにしていくことであった。二五万人をこえる死傷者・行方不明者があったこと、皇居や財閥、軍の施設などは無傷でのこったことや日本の支配階級の中枢はアメリカと通じあっていたことなどほとんどあきらかにされず、慰霊碑をたてることさえゆるされず、自治会関係者が自発的に碑を建立した事実があらためて報告された。
 そうした事実をとおしてかつての戦争はなんであったのか大戦の真実をあきらかにし、広島、長崎、沖縄はもとより全国的な規模で戦争に反対する力をあつめて団結し、対米従属の構造と真っ向からたたかう、それを「大衆のなかから大衆のなかへ」の方向でやっていくなら圧倒的な支持を得られることが、東京行動、全国キャラバンと号外配布の活動から教訓として得られるとのべられた。

原爆展パネルの力に確信
 報告を聞いて参加者からは、「日米の支配者が裏でつながり、住民が一方的に犠牲をうけたことをあきらかにすることは重要だ。そこであきらかになった真実を号外にして人人にかえしていくという地道な活動こそ重要で、戦争反対のほんとうの力になっていく」(山口県、元PTA)、「原爆展パネルが力をもっていることをあらためて実感した。大衆のなかからあつめた意見を号外にし、もちこむことで世論が動き、かわっていくということがよくわかった」(福岡県、教師)、「大阪でも大規模な空襲があったが、知られていないことも多い。人人の体験をむすびつけて事実をあきらかにしていくことの大切さがあきらかになった。世論がかわるということに確信がもてた」(大阪、教師)といった意見、感想がだされた。
 また、「キャラバン隊のはたした役割の大きいことを痛感した。沖縄でも辺野古基地問題などで若者がたちあがっている。原爆展パネルの方向が支持されていることに確信を強めてとりくんでいきたい」(沖縄、元幼稚園教師)といった意見や「キャラバン隊の活動に空襲体験者が発揚されていることがよくわかった」「マスコミは真実を伝えない。子どもたちは被爆体験など本物にふれることで大きくかわる」「原爆展を地域でどんどんとやっていきたい」といった意見がよせられた。

80年代の新学力観後広がる
 午後は、安保法をめぐって矛盾が全国的にするどくなっている情勢をふまえつつ、「教育を破壊する権力の抑圧構造打破を―いじめキャンペーンの本質」(二〇一五年一二月二日付)と題した『長周新聞』の記事を輪読し、各面から意見をだしあった。
 「子ども同士のけんかは学校ではつきもので、それはクラスで解決できる問題だ。それをいじめだ、体罰だといって教師の研修をくりかえさせるなどして萎縮させる構図が強まっている」(福岡県、教師)、「どこまでがいじめといえるのかわからなくなったという教師の声を聞く。すべて保護者に連絡し、教育委員会へと報告される。毎週のようにアンケートをとったりするが、それにとりくむ時間的ゆとりなどない。子どもたちの力で仲間意識をどうそだてるかが重要ではないか」(山口県、教師)、「学校にホットラインがおかれ、上に報告される体制ができて、子ども同士で解決することが阻害され、権力、マスコミ、教育委員会がのりだしてくる」(山口県、教師)、「万引きがふえているというので、生徒をあつめて警察が手帳を実際に見せながら講習をするということがおこなわれている。威圧的で、異常な雰囲気だった」(山口県、教師)といった現状などがあいついで報告された。
 また、「いじめ」があったと聞いただけで報告書をあげろとなり、問題解決よりもどれだけの件数の報告書があがるかが基準となる異常な状況が幾人かの教師から指摘された。
 これにたいし元PTAの関係者は「いじめ、自殺は自己中心的で、八〇年代にいわれてきた個性重視のあらわれで、死をもって報復するという考えだ。家庭での教育、学校教育が連携してクラス全体でとりくむというのが必要だ。礒永秀雄の公演を学校でとりくみ、荒れた学校といわれたなかで、本物にふれて子どもたちがかわり、親も支持をよせている。地域と家庭、学校が連携して対応することが解決への道だ」と語った。
 福岡の教師は「地域と連帯していかないと抑圧の構造をうちやぶっていくことはできない。自殺でもって報復するというのは凶暴なイデオロギー。テロにたいして報復するというアメリカなどの主張とつうじる。先生だけで対処するのではなく、地域と力をあわせてとりくむことがだいじだ」とのべた。
 また、「わたしたちの世代は、約束を三回まもらなかったらお尻をたたくということで、子どもをしつけてきたが、そんなことをしたらたいへんなことになるというのが、いまの現場の空気だ。こうしたものをうちやぶるには保護者や地域といっしょになって解決するというのが必要だ」(沖縄)、「いじめられたときに、すぐへこむような子どもでない、元気のある子に育てるのが親のねがい。縄跳び、鉄棒などみんなでがんばれるとりくみが必要ではないか」(母親)といった意見もだされた。
 長周新聞社からは、八〇年代の新学力観の導入で「自由、民主、人権」のイデオロギーがひろまり、いじめや体罰などがさわがれて教師は手がだせない状況になったことがあきらかにされ、個別の事例への対処だけでは解決できないところにきていること、大きくは教師らを萎縮させて戦争の道へともっていく構図となっており、アメリカが指揮するあらたな戦争を阻止する運動、人民の側の力、隊列を強化することがさしせまった課題となっていることが強調された。
そして、「自殺」ということのもっているイデオロギー的な性質をはっきりさせること、抑圧構造が、子ども同士、子どもと教師、父母の関係を分断するものであることを鮮明にする必要があるとのべた。
 短い時間ではあったが内容の深い学習会となった。「子どもたちのお世話係ではなく、“師”としてのかかわりの立場で、一部だけにとらわれず大きくなにがおきているかをつねに見ていく教育をすすめたい」という感想もだされた。