『人民の星』 
  6068号1面 2016年2月24日
米軍再編と自衛隊増強 中国政府転覆狙う
米国が一元的指揮 日本動員し海上制圧へ

 沖縄県の辺野古新基地建設策動、山口県の岩国基地大増強などの米軍再編、与那国、宮古、石垣など南西諸島への自衛隊基地の新設、佐賀空港のオスプレイ基地化などの自衛隊の再編増強がすすめられようとしている。これらは安倍政府による「集団的自衛権の行使容認」「自衛隊の武力行使容認」を合法化した安保法の制定とあいまって、あらたな戦争へむけた動きとなっている。同時に、平和と独立をもとめる日本人民はこれらの動きに反発を強めている。重要なことは、一連の戦争準備が、好戦的な安倍の思いつきなどではなく、アメリカ政府の軍事戦略にもとづいて一元的にすすめられているということである。

中露への対抗を公然と表明
 オバマ政府は「アジア重視」をうちだしている。それは中国に親米政府をつくり、のこっている社会主義の制度を完全に破壊して、資本主義市場としてつくりかえ、巨大な富をアメリカ独占資本が強奪するという戦略である。そのため、東中国海、南中国海における「海上優勢を維持する」戦略をすすめている。海上の軍事的優勢を維持するためには、制空権も維持しなければならず、従来はこれを「エアシーバトル(空海戦斗)構想」と呼んでいた。
 アメリカはみずからの軍事戦略を美化するために、中国は東中国海、南中国海で「国際公共財としての航海(航空)の自由を侵害している」と主張している。そして、軍艦を派遣して「航行の自由作戦」と称するデモンストレーションをおこない中国を威圧している。
 アメリカは、中国につながる海上を制圧することで、経済封鎖できる体制をしこうとしており、そのため戦争も辞さない構えでいる。経済封鎖は戦争の布石であり、中国国内の矛盾を激化させ、親米政府をつくる重要な手段として位置づけられている。
 問題は、このアメリカの対中国戦争戦略に日本があらゆる面から動員されていることである。与那国、石垣、宮古、奄美大島などの南西諸島への自衛隊ミサイル部隊などの配備もその一環である。これは二〇一四年度からの防衛省の「中期防衛力整備計画」でうちだされ、地対艦ミサイル、地対空ミサイルの部隊と沿岸監視部隊を配備するというものである。
 また、沖縄本島の那覇空港の滑走路を二本化する工事をすすめ、すでに福岡県の築城基地からF15戦斗機二〇機が移動し、計四〇機の二個飛行隊をもつ第九航空団が編成されている。
 中国をかこむように点在する南西諸島を軍事要塞化し、“不沈ミサイル艦”にしたててアメリカの「海上優勢維持」構想の重要な一翼をになわせようとしている。しかし、それは島民を戦渦にまきこむもの以外のなにものでもない。
 アメリカは、中国との正面からの激突となった場合、性能を高めている中国のミサイルで在日米軍基地は安全でなくなったと評価している。そこで、戦争がさけられなくなったら、まず空母や主力戦斗機部隊を安全圏に退避させる計画である。海兵隊のグアム移転もその一環である。
 在日米軍基地が破壊されて自衛隊基地が安全であるはずがない。基地への攻撃はその周辺住民にも被害をもたらすことは火を見るよりあきらかである。ましてや南西諸島は、対中国戦では最前線となり、ミサイル艦が攻撃されるように島への攻撃がなされるであろう。

日本を犠牲にする米国戦略
 アメリカは、あろうことか、中国が徹底した日本破壊をすることをのぞんでいる。なぜなら、戦争がはじまり、中国がミサイルを使えば使うほど、アメリカが反撃にでたときアメリカにとって安全だからである。そして反撃にでたアメリカは、中国沿海を完全に制圧し、そこから貿易を禁止し、政府転覆の策動を強めるのである。第二次大戦において日本にやったのとまったくおなじ手口である。
 アメリカがとなえる「航海の自由」はまったくのきれいごとで、「アメリカの支配の自由」が本質である。かつての戦争では天皇家と財閥などの大資本家の利益のために戦争がおこなわれたが、こんにちでは米日の独占資本、金融資本のための戦争が策動されている。末期的な危機に直面しているアメリカ金融資本は、戦争と戦争による領土拡大で延命をはかろうとしている。
 アメリカは、昨年二月に大統領オバマが「国家安全保障戦略」を発表して、ロシアが「脅威」になっているとし、七月に統合参謀本部議長が発表した「軍事戦略」で「国家間紛争で中国が脅威」になるとはじめて規定した。これまで、中国、ロシアにたいして敵視した表現はとってこなかったが、この一年間で大きくかえ公然と「脅威」と位置づけた。
 安倍政府やマスコミは「中国脅威論」をこれまでにもましてふりまき、中国にたいする嫌悪感をうえつけ、戦争に思想動員しようとしている。アメリカはこうして日本と中国をたきつけて戦争させ、両者が疲弊したところで漁夫の利を得ようとしている。しかし、日本人民にとって中国と戦争して得るものはなにもなく、犠牲だけがある。
 戦争に反対する世論は日本国内でも全世界でも高まっている。この世論が、第二次大戦後の原水爆戦争を阻止してきた。その力がアメリカを追いつめてきた。日本の平和と独立の運動にとって有利な情勢がうまれている。
 米軍再編、自衛隊増強に反対することは、日本の平和と独立をめざすたたかいであり、日本人民全体の利益にかなっている。アメリカこそがあらたな戦争の元凶であること、これに安倍ら日本売国反動派がつきしたがっている。人民の斗争で戦争政治をすすめるやからに鉄槌をくださなければならない。