『人民の星』 
  6068号1面 2016年2月24日
マイナス金利 株価も益々下がる
資本主義の危機 黒田日銀もお手上げ

 一月二九日に黒田東彦を総裁とする日銀が「マイナス金利」を発表した。黒田やNHK、商業新聞は「マイナス金利」は一般の人には影響はないのだと不安をおさえるための発表や報道をおこなっている。影響がないのなら「マイナス金利」にしなければよいはずだが、報道は「大したことはない」といっている。
 「マイナス金利」は民間銀行による日銀への当座預金に適用するもので、同預金にながれこんでいた民間銀行の資金を産業・企業にながしこむことが目的といっている。
 しかし、もともと産業・企業の生産過剰のために銀行資金が日銀当座預金にながれこんできたもので、「マイナス金利」によって銀行資金が産業・企業にながれる保証はない。これまで、日銀への民間銀行の当座預金がふえてきたこと、今回の「マイナス金利」は生産活動が発展しないことの産物であり、日本資本主義が生産の障害物になったことの証拠である。
 日銀はこれまで民間銀行がおこなう当座預金に金利をはらっていた。民間銀行はそれによっても収益をあげていた。
 「マイナス金利」となったため、民間銀行はあまった資金を国債の購入にあてている。国債の利率が低くなっているのに購入する理由は、日銀がその国債を民間銀行が購入する価格より高い価格でひきとってやるからである。先には日銀は民間銀行に利子をだすことで収益を保証していたが、「マイナス金利」になった現在は、民間銀行がひきうけた国債を高値で買ってやることで収益を保証している。
 また銀行は定期預金の金利を普通預金並みにしたり、普通預金の金利をさらにひきさげている。こんご、ATMなどの時間外取り扱い手数料をつりあげたり、アメリカで導入されているような口座維持費―口座をつくれば口座を維持するために必要という費用―をとりたてるのではないかといわれている。そうなれば年金生活者は、介護保険料や税金などを天引きされたうえに口座維持費までとられる。
 住宅ローン金利がさがるといわれているが、住宅建設需要が強まれば、むしろ、建設費用そのものが上昇する可能性があるといわれている。
 「マイナス金利」は「たいした影響はない」とマスコミは宣伝しているが、人民収奪を強化しようとしている。しかも、銀行の資金は過剰であり、さらにバブルをひきおこす可能性がある。
 黒田日銀はこれまで「異次元の量的緩和」といって、国債購入や株式指数取引、不動産投信買い入れなどのためにどんどん輪転機で円をすりだしてきた。目的の一つは、株価をつりあげ、アメリカ金融資本が株取引でもうけられるようにすることだった。
 ところが、世界資本主義の過剰生産によって東京証券取引所の株価も急下落し、一月四日に一万八四五〇円から一月二八日には一万七〇四一円となった。黒田日銀はあわててもう一段のショック療法をと考え、「マイナス金利」をおこなったのである。これまでの量的緩和が破産したということである。
 しかし「マイナス金利」を導入しても株価の下落はおさまらない。一月二八日に一万七〇四一円だった東証株価は、二月一八日には一万五九六七円とさらにさがった。日本をはじめ世界の資本主義が生産過剰によって在庫がつみあがり、生産を縮小・停止しなければならなくなっているからである。日本と世界資本主義経済は黒田・日銀が金融操作でどうにかなるというものではなく、資本主義制度そのものに根ざす過剰生産によるものである。それは資本主義が生産を発展させられないこと、資本主義をかえねばならないことをしめしている。それを変革するのは人民である。

預金が減っていく 怒りを語る年金生活者

 日銀のマイナス金利をめぐって、人民のなかからは銀行に預金しても、日常的に手数料をとられ、わずかな利子などふっとび、どんどんへっていくことへの怒りがふきでている。とくに年金収入の年配者の怒りは人一倍である。
 安倍政府になってから消費税率の引上げや物価高騰、年金削減、介護保険料の引上げなどで、年配者は怒りをつのらせている。ある年配婦人は「ともかく節約。スーパーなどにいっても、必要のないものは買わないようにしている。だが食べるものは毎日のことだから、消費税引上げや値上げはひびく。この近くのスーパーでは、弁当や惣菜などの値段を割り引く時間帯をまちかまえている人がたくさんいる。しかし節約しても、利息が小数点以下では預金がどんどんへっていく」と怒りを語る。
 この婦人が利用している地方銀行はATMの手数料は一〇八円である。営業時間中なら手数料はいらないが、急におカネが必要となるのは、やはり夜とか休日である。「億万長者ならともかく、わたしらのような預金の利息は、一回の手数料でふっとんでしまう。自分の預金を引きだすときはもちろんだが、預金するのになぜ手数料をとられなければいけないのか。だから急な必要にそなえて、まとめておろしている。こんなことならタンス預金の方がましだ」といい、「さいきん手提げ金庫が品薄になっているということを聞いた。みんなおなじ思いだ」といっている。
 この婦人は「手数料には消費税がかかっている。消費税があがれば手数料もあがるということだ。家賃も銀行への振り込み、料金をとられる。ともかく銀行にあずけておいても、おカネがへっていく。以前は積立定期の利息で、保険料がまかなえたときもあった。なぜこんなことになったのか」と怒る。