『人民の星』 
  6072号1面 2016年3月9日
破綻した辺野古強行 安倍が和解受け入れ
人民斗争が追い詰める

 安倍政府は四日、福岡高裁那覇支部による、辺野古新基地埋立(代執行)訴訟についての「和解案」をうけいれ、辺野古現地の工事を中止した。安倍政府はこの間、アメリカの指揮のもとに沖縄県民の再三にわたる反対の意思表示を無視し、工事を強行してきた。しかし、訴訟の結審をむかえ参議院選もせまるなかで、ついに強行策は破たんした。沖縄県民のたたかいは日本全国にひびき、アメリカがたくらむあらたな戦争策動に痛打をあびせたのである。

アメリカは基地を持って帰れ
 和解案は、①辺野古埋立をめぐる国と沖縄県知事がおこした訴訟をそれぞれとりさげる、②沖縄防衛局は埋立取消にたいする不服審査法にもとづく審査請求をとりさげ工事をただちに中止する、③国は沖縄県知事に埋立承認取消にたいして是正指示をし、沖縄県はこれが不服ならば国地方係争処理委員会の審査申し立てをおこなう、④審査結果に不服があれば沖縄県は是正指示取り消しの訴訟をおこす、⑤訴訟の期間中、国と沖縄県は協議をおこない、判決がでたらこれにしたがう   というものである。
 安倍政府が、「和解」の実態である、工事中止(強行策の手直し)をうちだした要因は、辺野古新基地建設をめぐる日本人民と米日反動とのあいだの矛盾の激化発展である。日本人民の戦争反対運動が発展し、辺野古建設をこれ以上強行するならば、さらに火に油をそそぐ結果となることを恐れたのである。
 米太平洋軍司令官ハリスは、二月一六日に安倍と、一七日には防衛相・中谷と会談している。そこでハリスは「日本政府は辺野古移設をすすめる固い決意をしめしているが、反対運動は拡大している」とのべたという。またハリスが米議会にだした書面証言でも、日本側が二〇一五年度予算で計上している二〇〇件の代替施設関連工事のうち、「完了したのはわずか九施設、八件が進行中」とおくれを指摘したと報じられている。
 ハリスは二月二三日の米上下両院軍事委員会の公聴会でも普天間基地の辺野古への移設は予定より二年おくれ、二〇二五年になる見通しを証言した。そしてこの情勢評価にもとづいてでてきたものが「和解案」であったのだ。
 米日政府、米軍中枢の合意のうえで「和解案」がだされたことはまちがいない。ハリスは中谷に警視庁機動隊を投入しても「辺野古現地がエスカレートしている」といったといわれているが、でてきたのは警備の強化ではなく、工事中止であった。全国的な日本人民の平和と独立をもとめるたたかいが「和解案」をもたらしたのである。
 沖縄県民は団結を強め大規模な県民集会をもって辺野古新基地に反対の意志をしめすとともに、国政選挙、地方選挙でも辺野古新基地建設反対をかかげ勝利してきた。そして県民の強固な反対世論にささえられ、現地の抗議行動がとりくまれ、また翁長沖縄県政の政府にたいする訴訟斗争へも絶大な支持がよせられてきた。

全国にひろがる辺野古反対
 辺野古新基地反対斗争は、昨年全国的にもりあがった安保法制反対斗争とむすびつき、沖縄県規模の斗争から全国的規模の斗争へと発展した。今年にはいってからも国会前で辺野古新基地に反対する行動がとりくまれ二万八〇〇〇人が結集している。
 さらに運動はひろがり、港湾労働者で組織する全国港湾は、辺野古埋立用の土砂を本土から輸送するなら阻止斗争を展開することを決議している。辺野古新基地と連動してすすめられている、自衛隊ミサイル部隊配備に反対する石垣島住民の斗争、佐賀空港へのオスプレイ配備に反対する佐賀市民の斗争などが発展している。
 米軍と自衛隊の再編強化は、アメリカの中国封じ込めの軍事戦略の一環であり、日本を前面にだして中国への戦争をしかけるアメリカの構想にそったものである。それは日本を戦場にし、日本人民をふたたび戦渦にまきこむ犯罪的な構想である。
 今回の辺野古工事中止は、こうしたアメリカ帝国主義とそれに従属する日本売国反動派のあらたな戦争策動にたいする痛打であり、沖縄県民、日本人民のたたかいが米日反動を追いつめていることをあらわしている。
 同時に、たたかっている沖縄県民が指摘するように、「和解案」は一時的なものであり、当面譲歩して矛盾を緩和し、夏の参議院選をのりきり、翁長県政の抵抗手段を封じていく魂胆が隠されているが、そんなものは人民のあらたな斗争の発展でいくらでもうちやぶっていくことができる。
 米日政府の辺野古新基地建設強行を中断させたこの間の運動の発展に確信をもち、さらにたたかいを発展させ、「アメリカは米軍基地をもって帰れ」という方向で思い切って人民斗争を発展させることが重要である。人民の世論と斗争こそが、戦争を阻止し、戦争も貧困もないあたらしい社会へ歴史を動かす原動力である。

黒幕アメリカを引きずりだしあ辺野古の戦い
沖縄 元労組役員

 安倍政府は、辺野古埋立の代執行もかなり無理な、ひじょうに強権的なかたちでやってきていた。このまま強行すると、自治法との関係とか世論との関係でよくないと、もう少し国民にも訴えられるようなかたちでせめないとまずいなという判断を国がやったのではないか。その意味では、追いつめられながらも「和解」でまきかえしをねらっているといえる。
 しかし、国とツーカーの裁判所としてもこのままいくと国に有利なかたちでの判決はだしにくい、どうにかしてくれないか、こういうふうなのがあったのではないか。安倍政府が強行策ができなくなった、追いつめられていることはたしかにいえる。
 辺野古のたたかいはすごいなと思う。辺野古がアメリカの東アジア戦略のカナメになっている。そういうことを米軍高官のハリスなんかが発言している。アメリカにとっても辺野古は戦略的に重要なところだ。それがはしなくも暴露されたともいえる。いままでこんなことはなかった。アメリカはうしろにかくれて、日本政府がやるべきだといっていた。そのアメリカをひきずりだした。アメリカが、困った困ったとなっている。ここはたたかいの大きな成果ではないか。
 行政のレベルのたたかいはおのずと限界がある。そうはいっても翁長知事を先頭にわたしたちもたたかってきたし、今後どういう方向にいくのか。さらにわれわれのたたかいが大きくつくられていくことをふまえればそこに根ざしてどうするかということになる。