『人民の星』
6077号1面 2016年3月26日
年金運用で巨額損失 数十兆円が米金融に
安倍政府の株価操縦の正体
安倍政府は三年余り、「アベノミクス」による「景気回復」を宣伝してきた。だが実体は見せかけの株価上昇にすぎなかった。株価が下落しているいま、日銀は安倍らと気脈をつうじて「マイナス金利」を導入し、安倍政府は、年金積立金運用独立行政法人(GPIF)、国家公務員年金、郵貯・簡保資金を総動員して株式相場をささえるとし、GPIFに巨額損失をもたらしている。アメリカ金融資本に何十兆円という規模で年金積立金をながしこんだのである。安倍政府の犯罪行為はゆるしがたいものであり、売国安倍政府をたおすことは重要課題となっている。
勤労人民の資産売り飛ばす
昨年半ばまで株価はあがりつづけてきた。安倍が首相に復帰した翌年の二〇一三年一月、日経平均株価は一万一一三八円だった。
安倍が起用した日銀総裁・黒田東彦が「異次元の金融緩和」を同年四月にもちだすなかで株式上場投資信託を日銀が買いいれ、株価上昇を保証するとしたことで、アメリカ金融資本が心おきなく株式投機ができるようにした。
また、二〇一四年には、運用益をふやすといって年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF、公的年金一三五兆円を運用する)の株式運用比率を国内・国外ともに一二%から二五%にふやした。運用は外部委託である。株価は昨年五月には二万円になった。
だがそのとたん、二〇一五年、最初の世界的な株下落がおこり七月~九月にかけて、約八兆円の巨額損失がでた。国内株で約四・三兆円、外国株で約三・七兆円と当時のGPIFは発表した。アメリカ金融資本は、GPIFが巨額の資金を大規模に株式に投入したと見て、株売りをしかけ、約八兆円という巨額の年金積立金をかすめとった。安倍政府が年金積立金をアメリカ金融資本にながしこんだのである。
その後、昨年一二月に一時的に株価は二万円台を回復したが、中国の景気後退や原油安など世界資本主義の恐慌の接近で、今年一月末、世界同時株安がすすみ、日経平均株価は一万六〇〇〇円台におちた。日銀の黒田は一月末に「マイナス金利」をうちだしたが、株価は一万五〇〇〇円を割って一万四八六五円(二月一二日)になった。
現在は一万七〇〇〇円を上下し、三月二三日午前の終値は一万七〇四一円となっている。
安倍は今年一月、年金運用の損失をめぐる国会の答弁で、「年金運用はある程度の長期的な視点をもってみるべきである」(今年一月)といい、責任を追及されないようにたちまわっているが、巨額損失はあきらかである。
株価が一〇〇〇円さがるとGPIFの損失は約四兆円といわれ、今年一月末には三〇兆円の損失が発生し、現時点でも約一二兆円という巨額損失が発生しているという。GPIFが年金積立金を株式につぎこんだのをみはからってアメリカ金融資本が売りをしかけ、何十兆円をかすめとっているのである。安倍はそれを「長期的視点をもって見るべき」といってごまかしている。このまますすめば年金積立金は空になる可能性がある。
城南信用金庫(本店は東京都品川区)は今年二月一五日に「緊急提言」でGPIFの巨額損失を指摘し、「株価暴落が止まらない。日本経済にとっては、二〇〇八年のリーマン・ショックよりも深刻な事態だ。国民の大切な年金資産が瞬時にして三〇兆円以上も消滅した」「政府は、昨年来(注 一五年)、株価を強引に引き上げるために、国民の年金資産(GPIF)の一四〇兆円、国家公務員などの三共済などの三〇兆円を、危険を承知で、国内株に二五%、海外株に二五%投入さらに日銀も巨額の資金を追加投入した。これは国民の大切な年金資産を危険にさらす無謀なやり方だが、それが完全に裏目に出た。
ウォール街などの海外投資家は、日本が買い支えている間に、したたかに売り逃げた。日本のクジラに買わせておいて、逃げ場をふさぎ、後から売り浴びせて暴落させるシナリオであり、かつてのバブル崩壊と同じ構造だ。日本国民は完全にババをつかまされたのだ。グローバル資本主義という美名のカジノ・ゲームがウォール街の本業であることは、誰でも知っているはずなのに、これを手引きした財務官僚は、ウォール街の手先と言われても仕方がない」といった。
第一次安倍政府は、五〇〇〇万件にもおよぶ年金記録を消失させた。人民の年金を「記録消失」と称して、猫ばばした。こんどは人民の年金積立金を株投機ですってしまうという手口で、アメリカ金融資本にながしている。
日銀も資金を株に投入
日銀も、企業の株主になることが法律で禁じられているので、直接株式を購入するのではなく、上場投資信託(ETL)の購入というかたちで資金を株式市場につぎこんでいる。ETL購入は、日銀の金融緩和の一環として二〇一〇年末からはじめているが、黒田日銀は購入額を大幅にふやし、昨年は三兆円、今年は三兆三〇〇〇億円をつぎこんでおり、今年末には累計で一〇兆円をこえる。それは人民に尻ぬぐいさせるのである。
安倍晋三が主張してきたのは、株価があがり、企業がもうかれば、労働者の賃金があがり、消費がふえるなどいう「トリクルダウン」論だった。それは真っ赤なウソだった。株価上昇は、年金積立金をごっそりアメリカ金融資本にひきわたすためであり、日銀の損失を人民にしりぬぐいさせるためだった。
そのために厚生労働省が二月はじめに発表した毎月勤労統計調査であらわれたように、二〇一五年の実質賃金は〇・九%減で、四年連続でひきさげた。安倍政府はパートや派遣労働者など非正規労働者を拡大したのである。
労働者全体にしめるパート労働者のしめる割合は三〇・四六%で過去最高となり、現金給与総額(名目賃金)は月平均九万七八一八円になった。安倍の言う「月収二五万円のパート」はどこにもいない。
しかも安倍らは二〇一四年四月から消費税率を八%に引上げた。年金支給額削減、各種保険料引上げもやった。総務省が一日に発表した家計調査でも、一六年一月の実質消費支出は前年比三・一%減で、五カ月連続の減少となった。
昨年四~六月期からGDP(国内総生産)はマイナスになり、昨年一〇~一二月期は年率換算マイナス一・一%だ。
アメリカ金融資本はしこたま年金積立金を盗みとり、安倍政府が人民からすいあげた資金をさらにすいとった。いまや安倍政府がこっそりすすめてきた犯罪が暴露されねばならない。安倍政府はたおされねばならない。