『人民の星』 
  6081号2面 2016年4月9日
福島第一原発 「凍土壁」の運転開始
汚染水ゼロにできぬ 血税使い独占に利益

 東京電力の福島第一原発では三月三一日午前、汚染水対策の一環として建設した「凍土壁」の運転を開始した。これまで福島第一原発の大量の放射性物質の汚染水がたまっている地下に、毎日四〇〇㌧もの地下水が流れこんで、原発は汚染水の生産装置となっていた。そのため安倍政府は、地下水の流入をふせぐ手段として二〇一三年に「凍土壁」方式をとることを決定し、国の予算で建設をすすめてきた。福島第一原発の放射性物質を封じこめることは無条件の重要案件であるが、この「凍土壁」方式は、汚染水の完全な解決にはならず、さまざまな問題をはらんでいる。そこには米日独占ブルジョアジーの凶暴な本質が見え隠れしている。
 「凍土壁」は、福島第一原発1~4号機の建屋を囲むように約三〇㍍の深さまで一五〇〇本の凍結管をうめこみ、マイナス三〇度の冷凍液を循環させて、土を凍らせて壁をつくるというものである。これにより最終的に地下水の流入量を一日七〇㌧程度にへらせると東電は見こんでいる。
 しかし、地下水の流れがはやければ水は凍らない。そのため、どこまで流入をとめられるかほんとうのところはまだわからない。いずれにせよゼロにすることはできないし、またゼロにする計画でもないのである。
 安倍政府は、地下水を阻止する対策として建設大手四社の提案から、粘土壁や砕石壁の方式を排除して、電気代や保守点検などの運用費がかかる「凍土壁」をわざわざ選択した。建設費は三五〇億円近くになったが、これは国が負担した。
 凍土をつくるために二六一㌔㍗の冷凍機を三〇台連結する。フル稼働すれば七八三〇㌔㍗の電力を必要とする。東電の説明では、運用費は陸側だけで年間一〇億円かかり、全部稼働させれば三〇億円になるといわれている。さすがにこの費用は東電が支払うことになっている。これにたいし粘土壁や砕石壁なら運用費はいらない。
 この「凍土壁」建設を受注したのは、「鹿島・東京電力コンソーシアム(企業連合)」で、東電もはいっているのである。ほんらいなら、汚染水対策は東電の全責任においてやるべきことである。それを国に泣きついて国の事業でやらせ、ちゃっかりと受注している。これでは事故で儲けるといわれても仕方ないであろう。
 いま汚染水はタンクにたまりつづけており、その総量は八〇万㌧になろうとしている。にもかかわらず、安倍政府は完全に解決できない「凍土壁」方式を採用した。安倍政府は、さらに対策事業をつみかさねて、それらも東電が独占資本といっしょになって受注してもうける道をつくってやっているのである。
 汚染水対策事業で独占資本をさんざん儲けさせて、最後には処理しきれませんでしたということで海に垂れ流されたのではたまったものではない。しかし、現実はその方向へすすんでいる。

「凍土壁」建設で大量被ばく
 しかも「凍土壁」建設作業では、大量の労働者が被ばくしている。鹿島の説明によれば工事に従事した作業員は約二二〇〇人で、一人あたりの平均被ばく量は一五・三㍉だった。鹿島は年間三八㍉を管理目標にして、これ以上は作業をさせないことにしているが、この二年間に二一人が現場を離脱した。なかには二年間で七五㍉の被ばくをした作業員もいた。
 福島第一原発の作業員の年間被ばく線量は平均で六㍉であるから、「凍土壁」建設作業がいかに高い放射線にさらされた作業であるかがわかる。しかし、これは建屋の周囲での作業である。今後の廃炉作業でどれだけの被ばくが強要されるかわからない。
 米日独占資本にたいしては、大量の放射能をばらまいて人民生活を破壊する事故を引きおこしても、責任も問わないだけでなく、いたれりつくせりの支援をおこなうが、人民にたいしてはいくらこまっていても無慈悲に非正規労働を拡大し年金を引下げ、社会保障制度を改悪するのが、安倍政治なのである。