『人民の星』 
  6088号2面 2016年5月4日
ブラジル大統領弾劾の策動続く 黒幕は米国
人民はクーデター転覆策糾弾し反撃

 ブラジルではルセフ大統領を弾劾し、失職させ、親米政府にとってかえようとするクーデター策動がつづいている。アメリカがその黒幕である。ブラジルの労働者、勤労人民はクーデター策動を糾弾するとともに、これをうちやぶる行動を強めている。
 ブラジルでは人民斗争の発展を基礎にして二〇〇〇年代以降、労働党政府のもとで、歴史的につづいてきたアメリカの支配と一線をかくし、貧困を解決する政策をすすめてきた。またキューバやベネズエラと連携し地域的な連携を強め、BRICS(新興工業国)の一員として国際的な発言力を高めてきた。
 アメリカのオバマ政府は、ブラジルや中南米でのまきかえしをはかるために、ブラジルの財界、ブルジョア報道機関、司法機関に工作をかけ、それを指揮し、「汚職疑惑」をさわぎ、労働党政府転覆をすすめている。
 ルセフ大統領にたいしては、景気後退、財政悪化のなかで貧困層などの生活保護費や失業保険などの満額給付を維持するために不足分を国営銀行に肩代わりさせたことが「不正会計」だとし、弾劾裁判で失職に追いこもうとはかっている。
 この政府転覆策動には連立与党の民主運動党もくわわり、三月末には連立を離脱した。四月一七日には下院議会が弾劾裁判について三分の二以上が賛成し可決となり、四月二六日から上院特別委では弾劾法廷設置の議論がはじまった。
 五月中旬にも本会議で採決する見通しで、議員の過半数が賛成すれば、大統領は職務停止となる。弾劾裁判が大統領罷免の判決をだし、上院の三分の二以上が賛成するとルセフ大統領は失職となる。
 下院で弾劾裁判を可決したことで、親米勢力の動きはあからさまとなっている。ルセフ大統領が職務停止(一八〇日間)となると、副大統領がその職務につくことになる。現副大統領テメルは、連立を離脱した民主運動党のボスで財界とつながっている。下院可決後、テメルはもう大統領気取りで財界との会合をかさね、組閣の準備をはじめている。閣僚候補として名前をあげているのは、銀行業界団体会長、米大手投資銀行ゴールドマンサックスのブラジル代表らで、今回の騒乱がだれによって組織されているか明白である。
 下院での可決翌日には野党社会民主党で副大統領候補だった上院議員ヌネスが訪米した。ヌネスの訪米は副大統領テメルの意向によるもので、米上院外交委員会の幹部議員、米国務次官(元ブラジル大使)、元国務長官オルブライトのロビー企業関係者らと会合をかさねた。

人民運動破壊のクーデター
 ブラジルの労働者、勤労人民は、ルセフ大統領にたいする弾劾を議会クーデターだと批判し、この攻撃がブラジルの人民運動にむけられたものとして反撃にたちあがっている。
 上院での弾劾審議がはじまるなかで二八日、八つの州の道路数十カ所でクーデター抗議の行動がたたかわれた。参加したのは土地なし農民運動(MST)、ホームレス労働者運動(MTST)、大衆住居運動(MPM)などの貧困層の人民である。抗議行動の参加者は、「全国での抗議行動はまだはじまりにすぎない」とさらに運動を拡大する決意をしめした。
 またこの日、ブラジル全土で少なくとも四七大学でストライキがたたかわれた。全国学生同盟(UNE)が呼びかけた。学生らは、今回のクーデターを一九六四年の軍事クーデターとかさねあわせ、その目的が労働者の権利、教育、国家主権、民主主義的自由の破壊であり、この間かちとられてきた人民運動の成果を破壊するものだと批判している。
 また、新自由主義の復活であり、公的部門の民営化であり、ブラジルをはじめラテンアメリカにたいするアメリカの支配の復活であり、ブラジルの主権を国際金融資本と外国人投資家の隷属下におくものだと暴露している。
 五月一日のメーデーは、クーデターに抗議し民主主義を防衛する労働者の決意をしめす国民的斗争の場として、全国各地でデモ、集会が計画されている。労働組合や学生団体、婦人団体など二〇あまりの人民団体は三月末に共同で斗争宣言をだし、五月一日を一大抗議行動の場とするよう呼びかけている。このなかでメジャー(国際石油独占体)をたたきだし、国営としたペトロブラスを防衛するというスローガンもかかげられている。
 ブラジルでは政府は労働党がにぎったが、権力機関、マスコミ機関、金融機関など主要な経済・政治・権力機関をアメリカと財界がにぎっており、人民がクーデターをうちやぶるとともに、権力をにぎらなければならないことが重要問題として浮上している。