『人民の星』 
  6102号2面 2016年6月22日
都知事・舛添の税金乱費問題
GHQが作った賄賂と買収の露骨な仕組

 税金の乱費や公私混同などで人民の批判をあびてきた東京都知事・舛添要一は一五日、辞任表明に追いこまれた。さきに口利き疑惑で経済再生相辞任となった甘利明をはじめ、政官財の金権腐敗は底しれない。政治とカネの問題は個個の政治家の資質や倫理観もあるが、それだけではなく、米日独占資本が政治家にカネをわたし、かれらの望むままに政治をうごかす日本の対米従属の支配構造に根ざしている。政治家どもの腐敗の打破は、このアメリカの対日支配の打破とむすびついている。

人民の批判に包囲され辞任
 舛添の問題をめぐっては、「第三者」としてやとった弁護士が「不適切だが違法とはいえない」との報告書をだし、舛添がそれを利用してごまかそうとした都議会での「説明」にたいして、都庁になん万もの苦情が殺到した。安倍政府や自民党本部が参議院選挙への影響をおそれ、やむなく、都議会与党の自民党や公明党も不信任案提出をきめたため、都知事のイスにしがみつこうとしていた舛添も辞任を表明せざるをえなくなった。
 けっきょく、まともな説明もせず辞任することや、舛添に二二〇〇万円もの退職金が支給されることに、「納得がいかない」と三万件をこえる苦情が都庁によせられた。
 都知事の辞任は、前任者の猪瀬直樹が徳洲会グループから五〇〇〇万円ものカネをうけとっていたことが発覚し辞任した(二〇一三年一二月)のにつづくものである。安倍政府・自民党は、東京オリンピック招致をアベノミクスの柱にすえ、猪瀬をかつぎあげたが、それが不正献金問題で辞任に追いこまれると舛添をかついだ。
 二人が二年半のあいだにあいついでカネの問題で辞任に追いこまれたことは、安倍政府・自民党の金権・政治腐敗がいかに深刻であるかをしめしている。舛添にせよ、甘利にせよ、私腹をこやしたり、公金横領は、氷山の一角にすぎない、とみな怒っている。

独占奉仕の政治が腐敗生む
 金権・政治腐敗があとをたたないのは、日本の政治が米日独占資本に奉仕する政治であり、自民党をはじめとする政治家を米日独占資本が飼っているからである。自民党など議員どもの大半は米日独占資本の代理人となりカネをもらい、私腹をこやしている。
 安倍は米日独占資本に奉仕することをあからさまに公言している。安倍は首相に復帰した直後の施政方針演説で「日本を世界で一番、企業が活動しやすい国にする」(一三年二月)とさけんだ。
 そしてアベノミクスによる超金融緩和で、株価は二万円台を回復し、企業は最高益を計上した。このなかで安倍政府は、一三七兆円もの年金積立基金について、内外の株式・債券市場での運用を倍にした。日本の大企業の株式は、アメリカをはじめとする外国人投資家が三割を保有し、株売買の六割は外国人投資家である。
 また安倍政府は、軍事力増強に力をそそぎ、防衛費を増額し、三菱重工などの軍需産業への発注を拡大し、アメリカ製の最新兵器を購入するために税金を湯水のようにつかっている。安倍晋三は毎月のように財界の頭目の同行で、外遊にくりだし、「経済援助」といって、昨年末までで三〇兆円も税金をばらまいている。

政治献金は政治家への賄賂
 それらの見返りとしてあるのが自民党をはじめとする政治家への政治献金つまり賄賂である。自民党の政治資金団体である国民政治協会への企業・団体献金は、自民党が野党だった二〇一〇年から二〇一二年は年間一三億円台だったが、安倍政府が発足した一三年は一九億五四〇八万円で四割以上もふえ、二〇一四年は二二億一三一二万円で五年ぶりに二〇億円台を回復した。
 政治家やその政治団体は個人や団体からも献金をあつめている。安倍の政治資金団体が二〇一四年にあつめたカネは一億八四七三万円だが、三回の「朝食会」で五六五〇万円、三回の「政治資金パーティー」で約一億円のカネをかきあつめている。
 こうした表にでている「政治献金」は、賄賂のごく一部である。ロッキード事件では、田中角栄はロッキード社から全日空の機種選定にかかわって五億円の賄賂をうけとっていた。
 自民党のドンといわれた金丸信は、佐川急便から五億円のヤミ献金をもらっていたことで、政治資金規正法違反や脱税で家宅捜索をうけ起訴されたことがある。このとき金丸の家の金庫には、現金二七億円、金の延べ棒数十㌔、各種債券など計四四億円もの隠し財産があった。
 こうした金権・腐敗まみれの政治はいまもかわらない。さらに「選挙にカネがかかる」「政治とカネの問題を解決する」「政党・政治団体への政治献金制限の代償」と称して、一九九五年から国民からすいあげた税金を政党にわけあたえる(議員数や得票率で分配)、政党助成をはじめている。このもとで自民党は毎年一〇〇億円以上の税金をうけとっている。昨年の自民党の助成金は一七〇億四九〇〇万円にもおよんだ。

米国指図の政治資金規正法
 ともかく米日独占資本に奉仕する政治をやれば、いくらでもカネがはいってくるのである。賄賂事件や政治献金の問題で、「政治資金規正法がザル法だ」というが、けっして法制度の不備ではなく、そのようにつくったのである。
 政治資金規正法を日本政府につくらせたのはアメリカ占領軍である。第二次大戦後、日本を単独占領したアメリカは、日本をソ連の封じ込めや中国をはじめとするアジア諸国にたいする侵略の拠点にするために、戦後再編をすすめた。連合国軍総司令部(GHQ)は、日本の支配勢力から反米の牙をぬきとるとともに、人民への支配形態を天皇を頭とする専制支配の形態からブルジョア民主主義の支配形態にかえた。
 このなかでGHQは指導し、アメリカの腐敗行為防止法をモデルとして政治資金規正法を制定した(一九四八年)。政治資金の収支は公開するが、どんなことにも支出してよいとして、「政治資金」という名の賄賂を合法化したのである。
 これはアメリカ占領軍がさまざまな経済団体や機関が政治家どもに資金を提供できるようにし、こうしてアメリカと日本の資本家連中がかれらの意にそう政治家どもをつくるためだった。こうしていまにつづく腐敗・堕落した政治家どもは、対米従属を特徴とし、アメリカ占領軍の占領政策によってつくられてきたのである。
 政治資金規正法はこの間、さまざまに改定されているが本質はかわらない。
 一方、政治家の汚職の捜査・起訴を担当し、政治家を監視しているのは東京地検特捜部だが、その生みの親もアメリカ占領軍である。東京地検特捜部の前身は、GHQが一九四七年に検察庁のなかにつくった「隠匿退蔵物資事件捜査部」である。旧日本軍が戦争のために貯蔵していた貴金属やぼう大な物資を摘発し、アメリカ占領軍の管理下におくための、アメリカの指示で動く権力組織だった。この摘発物資の一部が、日本の支配階級や政治家を手下にするための買収資金としてつかわれた。
 同捜査部は、一九四九年に東京地検特捜部と名前をかえるが、その役割はかわらない。特捜部はアメリカの指揮下にあり、アメリカにとって都合がわるかったり、アメリカの利益にそむいたり、アメリカに歯向かう政治家や高級官僚にたいして、汚職事件や企業犯罪、多額の脱税事件などを「摘発」し、弾圧し、排除する役割をもっている。アメリカが東京地検特捜部をつかって、日本の政官財に政治的な圧力をかけ、屈服させるのである。
 田中角栄はインドネシアでの石油開発などで、アメリカのトラの尾をふんだという。近年では、「在日米軍は第七艦隊だけでいい」といった小沢一郎は政治資金問題でおどされた。それは名護米軍新基地建設の問題でアメリカの言う通りにしない民主党の鳩山政府への脅しでもあった。

人民の斗いこそ決定的な力
 ブルジョア・マスコミは政治のカネの問題、金権・腐敗政治をさわぐが、アメリカの支配やブルジョア法律の枠内ではけっして解決されることはない。
 政治資金規正法をつくったアメリカでも、いま民主党の大統領候補となる前国務長官ヒラリー・クリントンが米軍需産業やウォール街の銀行、金融ファンドから巨額の支援・献金をうけていることが暴露され、アメリカ人民の怒りの的になっている。
 金権・腐敗政治を追及していくうえで決定的なのは人民斗争であり、たたかいによってアメリカの日本支配を打破すること、日本の売国独占資本を一掃することが腐敗根絶の道である。