『人民の星』 
  6113号2面 2016年7月30日
原子力規制委 美浜原発3号機の運転延長
老朽原発の認可急ぐ 米日政府が推進を指図

 原子力規制委員会が二五日、老朽原発である関西電力美浜3号機(八二・六万㌔㍗、一九七六年運転開始。福井県美浜町)について、新規制基準への適合審査の事実上の合格を八月三日以降にだすことをあきらかにした。稼働四〇年をむかえる老朽原発では、関西電力高浜1、2号機(福井県高浜町)につづく二例目の“合格”である。原発の「原則四〇年」は完全に骨抜きにされており、原子力規制委員会は、米日政府、電力資本の原発推進政策の下請け機関になりさがっている。

老朽原発の審査最優先する
 関西電力は、出力の小さい美浜原発1、2号機については一五年三月に廃炉をきめたが、同時に、3号機については新規制基準にもとづく原子炉設置変更許可申請と保安規定変更認可申請をおこない、同年一一月に最長で六〇年運転するための運転期間延長認可申請と工事計画認可申請をおこなった。
 高浜1、2号機といい、美浜3号機といい、原子力規制委員会は、他の原発をさしおいて、老朽原発の審査をいそいでいる。
 新規制基準が施行された直後の二〇一三年七月に再稼働のための原子炉設置許可変更を申請した各社の原発では、審査手続きがいまだに終わっていない。だが、原子力規制委員会は、それよりもずっとあとに設置許可変更申請書を提出した老朽原発の審査を最優先している。それは、四〇年をむかえる老朽原発の審査期限が切られており、それを過ぎると廃炉になるためである。
 しかも、審査期間が短いために、審査もいい加減である。高浜1、2号機の審査は、関電の申請からわずか一年二カ月の審査で認可した。このため、数年かかるとみられる一次系冷却設備の耐震確認作業を先送りし、全長一三〇〇㌔㍍におよぶ可燃性ケーブルの防火対策も難燃性ケーブルに交換するにはぼう大な時間とコストがかかるとして防火シートでまくという関電の対策をみとめた。また専門家から重大な危険が指摘されている原子炉圧力容器の経年劣化について、関電側が炉内の試験片の調査結果を元に、劣化の進み具合を予測し、運転開始から六〇年時点でも健全性をたもてるとしたのを、規制委は説明を妥当とみなして認可したのである。
 まさに、合格ありきの審査である。どうしてこうしたでたらめな審査で、原発の再稼働を急ぐのか。それは、米日政府が原発推進をつよく要求しているからである。

米国が原発の再稼働を要求
 二〇一一年の東日本大震災で福島第一原発は炉心がメルトダウンの過酷事故をおこし、全国の人民は原発の廃止を強くもとめた。このため、当時の民主党の野田政府は一二年九月、エネルギー・環境会議で二〇三〇年代に原発稼働ゼロとすることを目指した「革新的エネルギー・環境戦略」を決定した。同戦略では、①原発の四〇年運転制限制の厳格適用、②原子力規制委の安全確認を得たもののみ再稼働、③原発の新増設を行わない、という三原則をしめし、「二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」とした。
 野田政府は、同戦略を閣議決定するにあたりアメリカ政府にお伺いをたてたが、ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)の補佐官フロマンらが「原発ゼロ」を強く懸念し、「閣議決定して政策をしばることを懸念する」と反対したため、野田政府は閣議決定を断念した。
 一二年一二月に首相にかえりざいた自民党の安倍は、二月に就任後初の訪米をし首脳会談をおこなったが、そのさいオバマに「二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするとの前政権の方針はゼロベースで見直す」と約束した。そして安倍政府は一四年四月に、原子力を「エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」と位置づけた新エネルギー基本計画を閣議決定した。その直後に安倍は訪米し、首脳会談でオバマに、先般、エネルギー基本計画を決定し、その中で安全性の確保を前提に原子力利用を進める旨記載したことを説明し、民生用原子力の協力を進めたいとのべた。安倍政府はアメリカの指揮にしたがい、原発再稼働をすすめることを約束した。それが原子力規制委員会の原発容認の背景にある。
 日本が原発を再稼働させないと、アメリカの原子力関係企業は打撃をうけるのである。原発の燃料となる濃縮ウランを供給しているアメリカのユーゼック社は一四年三月に破産し、日本の民事再生法に当たる連邦破産法の適用を申請した。ユーゼックは世界四大ウラン濃縮企業の一つであるが主要な輸出先である日本の原発がとまったため、経営がゆきづまった。ユーゼック社には東芝が資本参加しており、東芝などが再建に力をいれている。

濃縮ウランの七割米国から
 日本はアメリカとの間で、輸入濃縮ウランの七割をアメリカから購入することが決められている(昭和六〇年以降の「原子力白書」は、日本の電気事業者が昭和五九年一〇月までに各社必要量の三〇%を上限とし、米国エネルギー省以外からの濃縮ウランの混焼を認める等を内容とする契約を締結したことを記している)。日本もウラン濃縮工場をもっているが、稼働率が悪く、九割は輸入である。二〇一〇年は輸入量が約七〇〇㌧で、うち約五〇〇㌧がアメリカからの輸入であった。また、〇四年から一〇年までの濃縮ウランの輸入先は、アメリカが四六〇二・七㌧と全体の七三%を占めている。つまり、日本の原発はその燃料面からもアメリカに支配されているのである。
 原発の燃料は濃縮ウランである。そのためには、天然ウランをイエローケーキ(酸化ウラン)に精錬し、これを気体の六フッ化ウランに転換し、これを三~五%に濃縮して粉末状の二酸化ウランにし、さらにこれを焼結したペレットにして燃料棒に詰めて束ねた燃料集合体にして燃料として原子炉でもやす。だが、日本はイエローケーキも六フッ化ウランの工場ももっておらず、濃縮ウランも大部分は外国依存とくにアメリカに依存しているのである。
 アメリカの要求で安倍政府は原発をベース電源とすることをきめたが、二〇三〇年時点での電源構成を原子力発電二〇~二二%としている。それは、原発依存を減らすのではなく、現状を維持するということである。
 原子力規制委員会が老朽原発をふくめて再稼働をいそぐのは、こうした米日政府および電力企業、原子力企業の要求が背景にある。原発再稼働を阻止し、原発を廃止していくためには、戦争問題と同様に、日本の対米従属構造をうちやぶり、真に日本の独立を勝ちとることが不可欠である。