『人民の星』 
  6139号1面 2016年11月2日
米国の鉄砲玉になる自衛隊
南スーダンの戦斗任務 米国の石油のため

 安倍政府は、南スーダンPKO(国連平和維持活動)に派遣している自衛隊部隊に、「駆けつけ警護」や「宿営地の共同警護」などの新任務を、一一日に閣議で付与することをきめようとしている。南スーダンは事実上内戦状態であり、停戦合意も崩壊していると現地勢力が宣言している。しかし、安倍政府は停戦はまだくずれていない、派兵は可能と強弁し、戦斗任務までくわえようとしているのである。安倍らは平和のためでなく戦斗をさせようとしている。
 なぜここまで南スーダンへの自衛隊のPKO派兵に固執するのか。
 南スーダンへの自衛隊のPKO派兵は、アメリカの強い要求である。アメリカはアフリカの石油資源を略奪しようとしている。
 現在の派兵は、二〇一一年にアメリカのテコ入れで、南スーダンがスーダンから分離独立したのにともなって開始されたものである。
 一九八三年いらい内戦続きのスーダンで、二〇〇五年に包括的和平が成立したが、このとき「国連スーダン派遣団(UNMIS)」の設置を主導したのはアメリカだった。派遣団設置は国連で決議され、スーダン南部へのPKO部隊派遣がきまると、アメリカは日本に自衛隊によるPKO部隊の派兵を要求した。
 当時の小泉政府は国民の批判が強いため部隊派兵は見送ったが、〇八年一〇月、麻生政府は国連スーダン派遣団の司令部に自衛官二人を派遣することをきめた。
 アメリカは、それまでスーダン政府をテロ支援国家に指定(一九九三年。現在も継続)し、敵視してきた。そのうえで包括的和平を機にPKOによるスーダンへの介入にふみだした。スーダンの石油を手にいれるためであった。
 スーダン南部には豊富な埋蔵量をもつ油田がある。それを発見・開発したのは米石油メジャー・シェブロンだったが、アメリカ政府によるテロ支援国家指定のため投資できなくなり、撤退していた。その後に進出したのは中国で、中国はスーダン政府との関係をつよめ、インド洋にぬける石油パイプラインを建設し、スーダン石油の四分の三を輸入するまでになった。
 慌てたアメリカは、二〇〇一年にブッシュ政府が成立し、石油関連企業ハリバートンの最高経営責任者(CEO)であったチェイニーが副大統領に就任した。
 チェイニーは「国家エネルギー政策」報告書をブッシュに提出したが、それは、今後二五年間でアメリカの石油消費量が一・五倍になると予測し、外国からの輸入を大幅に増やす、エネルギー安全保障をアメリカの通商・外交政策の優先課題にすることを主張した。
 チェイニーは、ラテンアメリカとともに「西アフリカは、アメリカ市場への石油・ガスの供給源として急成長が見込まれる」とした。
 また、〇二年一月の米シンクタンクのシンポジウムで、当時の米国務次官補カンスタイナー(アフリカ問題担当)はアフリカ大陸の石油は「アメリカにとって国家戦略的関心事になった」とし、下院外交委員会アフリカ問題小委員会の委員長エド・ロイスも「アフリカの石油は、九・一一以降の国家安全保障上の優先課題の一つとしてあつかうべきだ」とのべた。〇三年にはブッシュ自身がアフリカ諸国を歴訪した。
 このアフリカ戦略にそって、アメリカは一一年に南スーダンの分離独立を主導した。当時の鳩山民主党政府は、アメリカの要求をうけ、南スーダンが分離独立する前からPKO派兵の準備をすすめ、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)が設置されると、すぐにPKO部隊を南スーダンにおくった。

新パイプライン建設も計画 日本の商社ら
 スーダンの石油鉱区は南スーダンおよびスーダンとの国境地帯にある。アメリカは、スーダンの石油資源を奪おうと南スーダンの分離独立をはかったが、南スーダンの石油は、中国がスーダン内に敷設したパイプラインでしか輸出できない。
 南スーダンはこの石油輸出に国家財政の九割を依存しており、そのためにはスーダンのパイプラインを使わなければならず、その使用料を払わなければならない。
 中国もこの石油を引きつづき調達するために、南スーダンが分離独立するとただちに承認し、PKO部隊を派兵した。だが内戦で、石油生産は大幅に低下している。
 こうしたもとで、南スーダンからケニアへパイプラインを敷設する計画が浮上している。計画に関与しているのが日本のトヨタグループの一角をしめる豊田通商である。豊田通商は南スーダンの分離独立前の一〇年三月にケニアでのパイプライン建設を発表した。
 一二年一月には、南スーダンとケニアの両政府が南スーダンからケニア北部ラム港まで原油パイプラインを敷設することに合意した。豊田通商は、両国およびウガンダの三カ国政府と共同で会社を設立する方針としている。
 こうしてアメリカと日本もかんだ南スーダンの石油資源略奪の計画が、自衛隊派兵と戦斗任務付与をごり押しですすめる安倍政府の対米従属政治の背景となっているのである。アメリカの石油資源略奪のために日本人の命がうばわれようとしているのである。