『人民の星』 
  6140号1面 2016年11月5日
佐賀空港オスプレイ配備 米軍基地化が狙い
九州に一大軍事拠点作る

 県営佐賀空港への自衛隊オスプレイ配備、自衛隊基地化が企まれているが、これは佐賀空港を米軍基地にするための第一歩である。佐賀空港一帯に、山口県東部にある米軍岩国基地級の巨大な航空基地を建設し、米軍佐世保基地や周辺の自衛隊基地・日出生台演習場とも連結させて、九州を一大軍事拠点にすることがアメリカの狙いである。米軍基地がつくられれば佐賀市・周辺市町は基地依存経済にかえられ、工場はなくなり、労働者には大「合理化」がおしつけられるだろう。農地や漁場がとりあげられ、全国有数の穀倉地帯や有明ノリ漁は壊滅的な打撃をうけ、農漁民は生業をうばわれてしまうだろう。米兵相手の歓楽街がつくられ、腐敗文化が子どもや若者をむしばみ、沖縄や岩国のように米兵犯罪が横行するだろう。戦争になれば、真っ先にミサイルの標的になる。それは空港のある川副だけの問題ではなく、佐賀全市、全県、九州、全国の問題である。佐賀空港の自衛隊基地化の看板ですすめられようとする米軍基地化をはばむことは、「安保」のもとにアメリカがいまなお日本を支配していることをうちやぶっていくことであり、戦争をはばむたたかいである。
 一〇月一三日、首相・安倍晋三が国会答弁で「米軍の訓練の一部を佐賀(空港)でおこなうということですすめている」と表明した。
 翌一四日には防衛相・稲田朋美も会見で、米軍普天間基地のオスプレイの訓練について「佐賀空港の利用も考慮したい」と言明した。
 佐賀空港への自衛隊基地建設、オスプレイ配備をめぐって、昨年一〇月に佐賀を訪れた前防衛相・中谷元は「自衛隊配備と米軍訓練は切りはなす」といったが、こうした人だましの理屈も面倒だとばかりに首相や防衛相が発言した。佐賀空港を自衛隊基地にすることは米軍が使うことだと、政府として公言したのである。もともと佐賀空港に白羽の矢をたてたのはアメリカだった。

普天間基地の移転先だった佐賀空港
 二〇〇二年から〇六年ごろ、米国防長官ラムズフェルド(当時)が主導して米軍再編にかんする日米協議がおこなわれた。それにたずさわった米外交官が、沖縄の米軍普天間基地を佐賀空港に移転する案を日本側に提示した。そのさい、外交官は「佐賀空港は発着便が少ない。周辺に住宅もない」「沖縄の普天間基地を移転するのにもってこいだ」といい、こういっている。
    佐賀空港から強襲揚陸艦の母港である佐世保基地(長崎県)までは五五㌔㍍と近い。また、陸上自衛隊西部方面隊総監部がある熊本県健軍駐屯地まで五八㌔㍍、福岡駐屯地が四五㌔㍍の距離にある。西日本最大の日出生台演習場(大分県、四九〇〇㌶)まで九八㌔㍍だ。
 沖縄本島の南北延長一二〇㌔㍍を半径にして、佐賀空港を起点に円を描くと、九州中北部に演習場、港、駐屯地の全機能がすっぽりはいる。小さな沖縄と比べて広い演習場がある九州なら、海兵隊も十分に訓練して、自衛隊とのインターオペラビリティ(相互運用性)も高めることができる。
 しかも、日本がもっとも脅威を感じる北朝鮮にたいしても、佐賀空港との距離は七六〇㌔㍍で、沖縄からの距離一四〇〇㌔㍍のほぼ半分だ。佐賀はまさに、ナイス・ロケーション(好立地点)である。   
 米海軍佐世保基地には滑走路がなく、米軍は大村湾にある海自大村基地を使っている。だが米軍は、大村基地の滑走路が一二〇〇㍍で短く使い勝手がわるいと不満をならしてきた。米軍は二〇〇〇㍍の滑走路をもつ佐賀空港を手にすれば、佐世保基地と一体化させて強力な軍事機能をもつことができると見ている。
 しかも九州北部には陸上自衛隊が新設する水陸機動団を配置する相浦基地(長崎県)や陸自部隊の駐屯基地(熊本、福岡県)、米軍が訓練場として多用する日出生台演習場(大分県)、航空作戦をになう築城基地(福岡県)なども集中している。それらを勝手放題に使い、九州中北部を米軍の軍事拠点にできるともくろんでいるのである。
 米日政府は二〇〇九、一〇年ごろ、米軍普天間基地の移転先として佐賀空港を具体的に検討した。このときには佐賀県民が猛反対し、知事が反対表明し、県議会も佐賀市議会も全会一致で反対決議を採択して、計画はとまった。
 そこで今回、自衛隊基地をつくるのだとごまかして、米軍基地にするという策略を使うことにした。それが一四年夏の防衛省による自衛隊オスプレイの佐賀空港配備表明だった。
 防衛省は今年五月一二日に抜き打ち現地調査をやり、六月三日には県と佐賀市、有明海漁協に基地施設配置図を提示するなどし、一〇月中旬には首相や防衛相が基地建設の本格的なゴーサインをだした。

試験飛行と滑走路延長の目的は何か
 この八日に、米軍オスプレイが佐賀空港での試験飛行をおこなう。これは「県知事の要請による騒音調査」といっているが、実際には米軍オスプレイを使って米軍基地にする第一歩であり、米軍が実際に佐賀空港を使って使い勝手を調べ、空港を米軍基地にするうえでのさまざまなデータを収集する軍事調査である。
 米軍は日本の民間の港湾や空港を使うさいに詳細な調査をおこなう。航行コース、気象条件、地上目標など航空・港湾データだけでなく、施設の荷揚げ・給油・保管能力、消防・警備体制、駐機可能な面積、通信・交通事情など詳細に調べるのである。米軍は実際に空港や港湾を使ってみなければ公開データだけではわからない知識は得られないといっている。それを今回、佐賀空港でやろうとしている。
 また八月二三日に、山口祥義・佐賀県知事が佐賀空港を現在の二〇〇〇㍍から二五〇〇㍍に延長する方針をにわかに表明した。空港の利用者は開港時予測の三分の一にすぎず、万年赤字経営となっている。大阪、名古屋便も廃止され、いまは東京便しかない。需要がふえる見通しがないのに、巨額債務を負ってまで滑走路を延長するのは、政府の指示があったこと以外には考えられない。
 滑走路や施設をふくめた佐賀空港の建設費は約二八〇億円、工事期間は五年であった。それを五〇〇㍍延長するだけで一〇〇億円の事業費と一〇年の工期をかけるというのは、軍用滑走路仕様にするためと見てよい。滑走路は通常はアスファルト舗装だが、米軍岩国基地の新滑走路は米軍の要求でコンクリート舗装になった。佐賀空港をコンクリート舗装にやりかえるには巨額の費用がかかる。
 二五〇〇㍍滑走路は、岩国基地の滑走路(二四四〇㍍)に相当する。防衛省は県道四九号線以南の空港沿いを自衛隊基地にする構想を出しているが、それは表向きのことにすぎない。四九号線より北側には県道三一三号線まで三㌔ほど人家のない耕地がひろがっている。米軍はその土地もすべて手にいれようと狙っているものと思われる。そうすれば七、八〇〇㌶ほどの広大な基地になるからだ。ちなみに岩国基地の面積は七九一㌶である。地図に見るように岩国基地周辺と佐賀空港周辺は滑走路配置や地形などよく似ている。米軍は佐賀に岩国基地並みの巨大な航空基地を建設することを狙っている。

基地化企み30年かけ赤字空港を建設
 佐賀空港の開港は一九九八年だが、最初に建設の構想が出されたのは六九年で、じつに三〇年もかけてつくられた。佐賀市中心部から遠く、佐賀駅からバスで三五分かかり、しかもバスは一日四便しかない。同駅からJRと地下鉄をのりつげば四五分で福岡空港までいける。佐賀市民、県民は通常、便数も行き先も多い福岡空港を利用している。開港当初から佐賀空港の利用者は少ないだろうと懸念されていた。実際、開港いらい赤字続きで、名古屋便や大阪便は廃止された。
 こうした事情から、佐賀空港開港にはべつの政治目的があるのではないか、と指摘されていた。軍事利用である。空港用地の地権者だった漁協の幹部たちは「赤字経営はあきらかで自衛隊が使わせろといってくるにちがいない。わたしらはみんな先の戦争にかかわったものばかりだ。佐賀空港が自衛隊基地になればまた戦争になったとき、ここは火の海になる」と懸念し、空港をめぐる県との協定に「自衛隊との共用の考えをもっていない」との一項をいれさせた経緯がある。
 当時の懸念通り、やはり赤字にして、しかも自衛隊どころか米軍にひきわたすという計画なのである。これは岩国愛宕山開発など政府の常とう手段だ。
 岩国基地では、「騒音防止、安全対策」と市民をだまして、沖合をうめたて滑走路を拡張した。もともとあった滑走路も米軍は返さず、米軍基地は一・四倍になった。
 さらに愛宕山に民間住宅をつくるといい、山を切りくずしたときにでる土砂を沖合の埋め立てに使う事業を県、市がはじめたが、住宅需要はなく、赤字になったといって開発跡地を防衛省に売りわたし、そこにいま米軍住宅が建設されている。

基地沖合に禁止区域でき漁師を排除
 佐賀平野南部が米軍基地になれば、県民各層に深刻な影響がでる。
 佐賀市や周辺市町は軍需生産など基地依存経済にかえられ、労働者には大規模な「合理化」やリストラがしいられるだろう。なによりも労働者には、アメリカ依存の屈辱的な労働環境がおしつけられることになる。
 今年三月、佐賀商工会議所など県の財界四団体は「地域経済に好影響をあたえる」とオスプレイ配備受入れをもとめる要望書を県知事にだした。自衛隊だけでなく米軍も来ることを見こし、佐賀を基地経済にかえてそのおこぼれにありつこうという薄汚い欲望からでたものだった。地元・川副からは「戦争準備をカネ儲けの手段にする死の商人に落ちぶれたのか」と痛烈な批判がおこった。
 米軍基地になれば広大な耕地が用地としてとりあげられ、佐賀農業は破壊される。佐賀平野は耕地面積にしめる作付面積の比率が一三三%と日本一高い西日本有数の穀倉地帯だが、それを米軍基地としてとられてしまうのである。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)と連携した佐賀農業つぶしにほかならない。
 岩国では、江戸時代から三角州周辺を埋め立て干拓し、肥沃な農業用地としてきた。その一部を戦前、日本軍が接収して基地をつくり、農民は立ち退きを余儀なくされたが、戦争がおわるとアメリカがのりこみ米軍基地にし、それのみならず基地をどんどん拡張し、農民は肥沃な土地をとりあげられた。
 米軍基地になれば、沖合にはかならず漁船操業および船舶の航行禁止区域がもうけられる。地図に見るとおり、岩国基地沖合にも一八・七平方㌔の禁止区域がもうけられ、漁業をすることも船舶がとおることも禁止されている。佐賀空港の沖合にもそれがもうけられるとノリ漁場が広範囲にとりあげられる。佐賀有明ノリは年商二二〇億円の全国有数のブランドだが、それが消滅することになる。
 岩国の場合、沖合埋め立てのため、魚が卵をうみつける藻場も完全にうしなわれた。

増える米兵犯罪と夜間の着艦訓練も
 米軍駐留には歓楽街の存在が不可欠の条件となっている。佐賀市にそれがひろがり、風紀が乱れ、アメリカ型文化がまん延し、子どもたちの成長にも悪影響をおよぼすだろう。米兵の事件や事故が多発するにちがいない。「日米地位協定」で米兵は守られており、日本人を死傷させても金品をぬすんでも、無罪放免され、日本人は泣き寝入りを強いられるのである。
 沖縄や岩国では、婦女暴行、殺人、窃盗、飲酒運転などが絶えない。沖縄では少女が米兵に暴行をうけたり、岩国でも市民が米軍属に車ではね殺されたが、その軍属がアメリカに逃げ帰ったりしている。
 佐賀新基地と佐世保基地を結ぶ道路(西九州自動車道、長崎自動車道など)は兵器や弾薬、兵士をはこぶ軍用道路と化すだろう。いま長崎自動車道の佐賀大和インターから佐賀空港にむけて四車線の弾丸道路が建設されている。
 これらも戦後、岩国が実際に経験してきたことである。いま岩国市は米軍の街になりつつある。行政が率先してアメリカ屈従の政治をやるため、米兵と軍属が急膨張し、基地直結の軍用道路があちこちでつくられている。
 米軍も自衛隊も、佐賀空港の利点として周辺に人家がなく「騒音問題」がないことをあげている。また防衛省は、佐賀空港を自衛隊基地にした場合、昼間だけでなく夜間も飛行させるといっている。普天間基地や岩国基地の場合、それなりに規制がかかって米軍も夜間は使いづらいが、佐賀なら二四時間使うだろう。米軍は岩国基地以上の軍事機能を佐賀に期待している。米軍が懸案事項としている空母艦載機のNLP(夜間離発着訓練)もやりたい放題にやるにちがいない。
 戦争になったら、佐賀新基地や佐世保基地、周辺の自衛隊基地は真っ先にミサイルでねらわれる。その犠牲の深刻さは、さきの大戦の比ではない。
 安倍や稲田が「佐賀空港で米軍の訓練をおこなう」と公言したことに、佐賀県民のなかで怒りの声がひろがっている。“自衛隊配備ならしょうがない”といっている人もふくめて、佐賀空港が米軍基地になることに反対する県民世論は圧倒的である。
 そしてアメリカ政府は米軍基地にするために動いているのである。「自衛隊基地にする」というふれこみによる米軍基地建設である。それは異民族に佐賀を売ることである。
 地元・川副でも昨年、反対する地域住民の会が結成され、二度の反対集会をおこなったのをはじめ、ノボリ立てや署名など精力的に反対運動がすすめられている。
 そしてそれは、日本民族の将来をかけたたたかいとなっている。米軍が佐賀にのりこみ、全国とおなじように産業をつぶし、県民を隷属させ、異民族の天国をつくるのである。このような屈辱的な基地建設を許すわけにはいかないのである。佐賀空港の米軍基地化は、佐賀だけでなく、九州、全国の労働者、農漁民、勤労人民すべての問題である。