Top Page  文書館  No.031  No.029


No.030 これを一気しろ

ある宅配便のお兄さんが担当しているエリアの中には、とっても気むずかしいというか、頑固というか、冗談の通用しないオッサンが一人住んでいる。

先日もそのオッサンのところに荷物を配達しに行った時、家にいるにも関わらず

「今忙しいんじゃ!あさって持って来い!あさって!」

と言って受け取りを拒否したりする。

「あ・・いや、そこのところを何とか・・」と言って食い下がると

「あさって来いと言っとるだろーが!ブチ殴ったろーか、わりゃ!」

という調子ですぐに怒り出す。

しょうがないからこの日は引き下がったが、次の日の配達の途中、お兄さんはまたもやこの家の前を、たまたま通りかかった。

「あさって来い」とは言われていたが、もしかしたら受け取ってくれるかも知れないと思ってちょっと家に寄ってみると、いかにも暇な状態であるにも関わらず、

「あ〜、お前か! ワシは今日来いと言うたか?! 明日と言っただろーが! なんで今日、来るんや!」と言ってやっぱり怒られる。


ある日、またそのおっさん宛に荷物があったので、嫌々ながらも家を訪問すると珍しく機嫌が良かった。いつも怒られているし、少しはコミニュケーションをとろうと思ってお兄さんは、

「いや〜、今日は暑いですね〜。」

と言って話しかけた。

するとそのオッサンが「暑いか!お前暑いんか!」

と聞くので

「あ・・はい・・ちょっと暑いですね。」

と答えると、

「お前、ちょっとここで待っとれ!」と言って奥の方へ何かを取りにいった。

ジュースでもくれるのかと思って待っていたら、なぜか一升ビンを持って出てきた。

おう!これは酢じゃ!夏バテにはこれが一番じゃ!お前、これ一気に飲め!!」と言う。

「は・・? 酢ですか・・?これを飲むんですか・・?」

「さっさと飲めーや!!夏バテ防止じゃ!」

「い、いや・・すいません・・酢はちょっと飲めません・・。」

「ああ〜?ワシの酢が飲めんのか!一気せえと言うとるだろーが!!」

「す、すいません、すいません!勘弁して下さい!」と言って逃げるように伝票を持って走って逃げた。

なぜ「暑いですね」と言っただけで謝らなくてはならないんだろうかという疑問はあったが、そういう人なんだからしようがない。「暑い」と言ったお兄さんが悪いのだ。そういうわけで、難しい客には変に話しかけない方が無難という一例であった。