Top Page  心霊現象の小部屋  No.14  No.12


No.13 霊と共存するガブリエル卿

かつてイギリスに住んでいた貴族のガブリエル卿(きょう)は、ある時、城を買った。この城は毎晩夜中になると変な物音がするというので、気持ち悪がって前の持ち主が手放したもので、破格値で買うことが出来た。

もちろん、そんなことは承知の上で・・幽霊がいるのならそいつと仲良くなってやろう、くらいの気持ちでこの城を買ったのだ。


ガブリエルが城を買ってまもなくした頃、ある晩彼が2階の寝室で寝ていると、下から階段を上ってくる足音が聞こえてきた。城には誰もいないはずなのに・・。

足音は寝室の前でピタッと止まり、次の瞬間ドアをドンドン!と叩く音が聞こえた。ガブリエルは暖炉の火かき棒を持って思い切ってドアを開けてみた。が、そこには誰もいなかった。変だなと思いつつ再びベッドに入るとまたノックする音が聞こえる。ドアを開けるとまた誰もいない。

こういうことが一晩中繰り返されてガブリエルも睡眠不足になってしまった。


それから数日後、ガブリエルは引越し祝いと新居の披露を兼ねて何人かの友人を呼んで城でパーティを開いた。みんなで楽しくやっていると、突然テーブルに置かれたガラスの食器がカチャカチャと動き回り始めた。

会場内は騒然となったが、ガブリエルは友人たちを静め、「どうもこの城には何かがいるらしいんだ。今からその人物とコンタクトを取ってみようと思うんだ。」と友人たちに言った後、上を向いて

「幽霊君、私の言うことが聞こえてますか?これからアルファベットを順々に言いますから、あなたが必要な文字を私が言った時に食器を叩いて反応して下さい。そうして文章を作って欲しいのです。」と、話しかけた。

こう言ってガブリエルはA・B・C・・と順に言い始めた。幽霊の方もこの意図を理解したらしく、反応はあった。
こうして作られた文章によると

「私の名前はカール・クリントという。100年ほど前にこの城に住んでいた。だがある時、私と恋人を争った男を殺してしまったのだ。死体はこの城の地下に埋めてある。」

こう言ったきり、あとは反応がなかった。友人たちは騒然となり、この話はまたたく間に近所に伝わった。もともと幽霊に興味津々であったガブリエルはすっかりこの件に夢中になり、役所へいって昔の記録をあれこれ調べてみた。


するとカール・クリントという人物がこの城に住んでいたこと、また、それらしい事件があったことは確かに確認された。だったら次は・・ガブリエルは、今度はその霊と喋ってみようと思い立ち、城に霊媒師を呼んで霊を呼び出してもらうことにした。

何人かの立会いのもとで実験は開始され、降霊の実験は見事に成功した。クリントの霊がぼんやりとではあるが、部屋の中に実態として現れてきたのだ。部屋の中は騒然となった。

現れた霊はガブリエルたちをにらむような目で見て「なぜ、お前たちは私の家にいるのか!」と怒ったような口調で語りだした。この城に他人が住んでいることが面白くないらしい。

「私は恋人のシャルロッテと二人だけでこの城で静かに暮らしたいのだ。」と言う。まあまあ、とガブリエルは霊をなだめて話し合いを行った。その結果、「この城の中でお互いに領域を決めよう」ということになった。

つまり、霊は地下の部屋で恋人と一緒に暮らし、私は決してそのあたりに踏み込んだりしない。部屋にもカギをかけておく。その代わり君たちも私の前には現れないで欲しい、という約束がなされた。

それからは霊も約束を守り、あの足音もピタッとやんでしまった。


そしてそれから何年も経った。ガブリエルは事情があってある時、別の町に引っ越すことになった。引っ越すに際して気になるのがあの幽霊である。一応は別れの挨拶をせねばなるまい。

再び霊媒師を呼んでクリントの霊を呼び出してもらった。ガブリエルはこれまで約束を守ってもらったお礼を言い、最後に
「私に何かして欲しいことはないかね?」と聞くと、霊は
「出来ればあなたの引越し先に連れて行って、一緒に住まわせて欲しい。」と頼んできた。

これにはガブリエルも驚いたが、それだけ好かれていたということだろうか。ちょっと困ったのは確かだが、
「まあ、いいよ。一緒に来るかい?」と仕方なく答えた。

こうして幽霊はガブリエルといつまでも一緒に住むことになった。多分、ガブリエルは死ぬまで・・いや、死んでからもこの霊との付き合いは続くであろう。