Top Page  心霊現象の小部屋  No.22  No.20


No.21 台所に立つ二人

10年の交際期間を経て、岩崎さん(仮名)と良子さんは結婚した。結婚後、良子さんは夫のためか料理教室へ通い始めた。岩崎家では教室で習った料理が毎日次々と食卓に並ぶ。

だが、最初は頼もしく思っていた夫も、毎日油っこいものばかりで多少飽き気味になってしまった。
「毎日作ってくれるのはありがたいんだけどさ、ちょっとあっさりしたものを作ってくれないかな? こう毎日こってりしたものばっかりじゃ成人病になってしまうよ。」

何気なく言ったこの一言が良子さんをひどく傷つけてしまった。
「ひどいわ!愛情込めて作ってるのに、そんな言い方はないでしょ!そんなこと言うんだったら自分で作ったら!?」
良子さんも言い返し、このことがきっかけでケンカが始まり、あげくの果てに良子さんは実家へ帰ってしまった。


成り行きとはいえ、妻に出ていかれ、その日から岩崎さんは自分で食事の支度をしなければならなくなった。何とか機嫌が直らないものかと電話をかけては説得するのだがなかなか妻の怒りはおさまらない。そして4日ほど経過したある晩の12時、突然良子さんから電話がかかってきた。

「どう?私がいないと大変でしょう?ちゃんと謝るんなら帰ってあげてもいいわよ。」
ちょっと高飛車な態度だったが、これ以上こじれてしまうと離婚になってしまう。岩崎さんも素直に謝ってなんとか仲直りすることが出来た。

「じゃ、土曜日に迎えにきてくれる?」と言うので、迎えの約束をしてとりあえず電話を切った。


ところがその数時間後、突然良子さんは帰ってきたのだ。真夜中というより早朝に近い時間だ。そんな時間に帰ってきたことに驚きもしたが、何よりも帰ってきてくれたことのほうが嬉しかった。

「今から料理作ってあげるね、4日間何も作ってあげなかったからさ。」そう言って良子さんは台所に立ち、料理を始めた。次から次へと料理は出来上がってくる。料理のことでまたケンカになるのはごめんだ、そう思った岩崎さんは妻に話しかけながら出来上がった料理を口へと運ぶ。

だが、食べてみて妙なことに気づいた。子供のころに自分の母親が作ってくれた味にそっくりなのだ。
「あれ?これって俺のおふくろの味じゃないか、なんでお前がこういうの、作れるんだ?」
「なんで・・って、私、この4日間であなたのお母さんから料理を習ってきたのよ。」

「冗談言うなよ!俺のお袋は、俺が子供の時に死んでるんだよ!お前が会えるわけないだろう!」
「だって本当なんだもん。」


そう言ってまた良子さんは台所へ戻っていった。
何か変な胸騒ぎがして、岩崎さんは台所をそっと覗いてみた。するとそこには死んだはずの自分の母親が、良子さんの横に立って料理を教えているではないか。

「母さん!!」と岩崎さんが叫ぶと、母親はこっちを振り向き、にっこり笑ってそのままスーッと消えてしまった。
そして良子さんも・・全く同じようにスーッと姿が消えてしまった。びっくりしたのと恐ろしいのとで、岩崎さんも何がなんだかわからない。

と、その時、家の電話が突然鳴り出した。出てみると警察からだった。良子さんが交通事故にあって即死したという知らせだった。事故の時間は、ちょうど良子さんがここへ帰ってきた時間とぴったり一致していた。


Top Page  心霊現象の小部屋  No.22  No.20