Top Page  心霊現象の小部屋  No.53  No.51


No.52 電話の相手

中学3年生の松本絵里さんは、その日友達の家で一緒に宿題をしていた。だが、数学の問題で、どうしても分からないところがあり、二人であれこれ考えてみたのだが、やっぱり答えが見つからない。

結局数学の得意な同級生である、杉川陽子さんに電話をして聞いてみようということになった。さっそく松本さんが杉川さんの家に電話をかけた。

「あ・・もしもし。私、松本といいますけど、陽子さんはいらっしゃいますでしょうか?」

電話口には杉川さんの妹である、小学生の知恵(ちえ)ちゃんが出た。
「あ・・お姉ちゃんは今、ちょっと出てますけど・・。」

「あら知恵ちゃんじゃない。こんにちは。」
「こんにちは。」

「そうなの・・。お姉ちゃん、今いないんだ・・。あ、それから、知恵ちゃん。この間お姉ちゃんから『知恵ちゃんが入院してる』ってから聞いてたんけど、もうよくなったんだね。」

「うん。昨日退院したの。」

「そう、よかったわね。じゃ、お姉ちゃんが帰ってきたら、私、恵子ちゃんの家にいるから、後でお姉ちゃんに電話してくれるように伝えてくれる?」

「はい。分かりました。」
「じゃ、お願いね。」


と言ってとりあえずその場は電話を切った。そしてそれから2時間が経った。だが、待てども待てども電話はかかってこない。もう待ちくたびれて、松本さんたちはもう一回、杉川さんの家に電話をかけてみることにした。

電話をかけると今度は杉川さん本人がすぐに出た。
「あ・・、陽子? 私よぉ!さっき電話したんだけど」
「え!?そうなの?」

「知恵ちゃんから聞かなかった?知恵ちゃんが電話に出たから、陽子が帰ってきたら後で電話してくれるように頼んでおいたんだけど。知恵ちゃん、伝えてくれなかった?」


「知恵・・!知恵が電話に出たですって!?」
「そうよ。ずっと入院してるって聞いてたけど、さっき聞いたら昨日退院したんだって?よかったわね。」

「そんな・・。さっきまで私、知恵のいる病院にいたのよ!ずっと白血病で入院してたんだけど、今日、急に病状が悪化して・・2時間くらい前にとうとう息を引きとってしまって・・。私、お通夜の準備のために、さっき家に帰ってきたところなのよ!」

陽子さんの話を聞いて松本さんたちは呆然(ぼうぜん)となった。2時間くらい前といえば、息を引き取った時間と電話で喋った時間がぴったり一致している。

最後まで家に帰りたいと願っていた少女の心が、電話に出たとでもいうのだろうか。