Top Page  心霊現象の小部屋  No.57  No.55


No.56 車の通らない道路

首都圏から少し離れた場所にある、ある住宅地。ここに一本の道路が通っている。長さは約500m。何の変哲もない普通の道路だ。だが、この道路を通る車は一台もいない。

その理由は道路の両端が、○○街道と××通りに面しているというのに、その両方に・・街道側にも大通り側にも「進入禁止」の看板が立てられているからである。


しかしこの道路も昔から進入禁止になっていたわけではない。以前は街道と大通りを結ぶ抜け道としてよく利用されており、幅のわりには交通量の多い道路だった。それが平成に入ってから、少し状況が変わってきた。

この近くに分譲マンションが建設されることになったのだ。毎日のように大型のトラックがこの道路を行きかうようになった。元々交通量が多いところへ、更にトラックが異常に増えてきた。

住民たちも、嫌な感じはしていたのだが、どうすることも出来ない。
そしてある日、ついに事故が起こってしまった。雨の降る夜、小学校4年生の女の子がトラックに跳(は)ねられてしまったのだ。


雨が激しかったせいもあってか、当のトラックの運転手は自分が跳ねたことにさえ気づかず、その場を通り過ぎてしまった。跳ねられた際にランドセルと傘は飛ばされてしまったが、少女の身体は跳ねられたまま道路に残ってしまった。

その後、何台のもトラックが少女の身体の上を通りすぎていった。無残にも顔は潰(つぶ)され身体はズタズタになっていった。そして何台目かのトラックが通った時、少女の身体は跳ね飛ばされて道路の横の茂みに落ちた。道路に残った鮮血も、あっという間に雨に流されてしまった。


いつまで経っても帰ってこない娘を心配して、少女の母親は娘を探しに出かけた。そして雨の降る中、娘のランドセルを道路で発見した。猛烈な不安が頭をよぎった。すぐに警察に駆けこみ「娘が誘拐されたかも知れないのです!捜索して下さい!」と訴えた。

警察の捜索により、当時少女のさしていた傘が発見された。そしてしばらくして、横の茂みから変わり果てた少女の死体も発見されることとなった。

この道路でランドセルを背負った少女がたびたび目撃されるようになったのは、この後すぐである。しかも少女は、明らかにこの世のものではないような姿をしていた。

目撃した作業員たちは恐怖に顔が引きつり、
「も、もうこの現場は辞めさせてもらう。冗談じゃねえよ。こっちを見た女の子の顔はつぶれてぐちゃぐちゃになってて・・!あの現場にはもう行けねえよ!」
そう言って建設現場では一人、また一人と作業員が退職していった。


マンションの建設は依然続けられてはいたが、トラックが通りかかると、ふいに女の子が道端(みちばた)から飛び出してくるというようなことがたびたび起こった。女の子を目撃した後、何か柔らかいものに乗り上げるような異様な感覚を味わった運転手も多数に上った。

トラックが急ブレーキをかけ、中から運転手が悲鳴をあげながら飛び出してくるのは、この道路では普通の光景となってしまった。そのうちに、普通の乗用車が通りかかっても女の子は現れるようになり、急ブレーキをかけ過ぎたり、女の子をよけようとしてハンドルを切り過ぎて自損事故を起こす車が続発した。

警察の調べでも「女の子が急に飛び出してきて・・。」という証言ばかりで、どの運転手も口をそろえてそう言う。はっきりした原因がわからない事故があまりにも頻発するため、いつしかこの道路は両端に「進入禁止」の標識が立てられることとなった。

今でも標識に気づかなかった車が時々道路に迷いこむが、これらの車も無事に道路を抜けられることはほとんどないという。今日もそしてこれからも、少女はいつまでもこの道路で遊び続けていくことだろう。