フロントナックルアーム EF、EG、EK、DC用

FFの場合、駆動、操舵、制動と、ドライバーからの指示が
すべて、このナックルアームを介して路面へと伝えられています。
そこで今回は、フロントナックルアーム周りのパーツをスムーズに動作させる為の
チェクポイントと簡単な構造説明をしてみたいと思います。
見落とされがちですが、安全の為にも要チェックです。

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↑ こちらがナックルアーム本体です。
画像上がホイールハブ、ハブベアリング、ボールジョイントを抜き取った状態です。
外見上損傷が無いかを目視点検し、同時にアームの長さをスケールやノギスを使い点検します。
クラッシュ等による変形、また個体差により左右で高さが違う場合が多々あります。
左右の高さが均等でないと、キャンバー角に左右差が発生してしまいます。
左右に差がある場合は、交換、又は調整して組付けを行います。

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こちらがハブベアリングです。インナーレースを取外した状態です。
ベアリングはアウターレース、ボール、リテーナー、インナーレース、ベアリンググリスにて構成されています。
アウターレースがナックル本体に圧入され、インナーレースにホイールハブが圧入されています。
ボールを支えているリテーナー部分が樹脂製ですので、熱の影響により破損している場合や、
グリス漏れやシール不良により内部が焼き付けをおこしている場合があります。分解の際は要チェックです。

ところで、このハブベアリングは、すごく重要な働きをしています。お気づきでしょうか?
車重は車軸によって支えられています。前軸重と後軸重をプラスした重さが車両重量となります。
FF車の場合、車両重量が1000kgだと、フロントが600kg、リアが400kgの重量配分になっています。(停車時)

では走行中はどうでしょう?
加速・減速・コーナリングにより、前後、左右へと常に荷重変化をおこし走行しています。

これがサーキット走行になると、さらに大きな過重を受けて走行していることになります。
それに加え、ハードなブレーキングによって発生する熱によるストレスをも受け続けながら
車重を支えてくれる働きものなのです。

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つづいてホイールハブです、ベアリングインナーレース圧入される部分に
擦り傷等、摩耗がある場合は交換をお勧めします。
ハブボルトについても、カジリや変形がある場合は交換です。

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油圧プレスにてベアリングを抜き取っているところです。抜き取り後、洗浄、組付け、ペイントをします。

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ボールジョイントを、ぐるぐると手で回し重さの確認をします。
重さに変化がある場合はブーツを外して内部を点検して下さい。

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ブーツを外してみて、↑の画像の様な場合は即交換です。
ボール部分を支えている部分の樹脂パーツが破損している場合があります。
不具合の場合、フラフラとわだちの上を走行しているような症状が出ます。

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ボールジョイントの交換は、こんな感じでバイスに挟み込んでSSTを差込み
ハンマーでショックをあたえ抜き取ります。意外と簡単に抜き取れます。

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これはRハブが走行中に破損したものです。劣化による金属疲労が原因です。

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Rブレーキローター部分がホイールに取りついたまま壊れています。こんな事も時にはあります。

エンジンやミッションをチューニングしていっても、
意外と見落としているポイントが、実はこのハブ廻りのメンテ、チューニングです。

エンジン 〜 ミッション 〜 ドライブシャフトを介して、
このハブ廻りへと力が伝達され始めて走行が可能になります。

レーシングカーでは、少しでも回転抵抗を低減するために、ベアリング内部のグリースの成分等を調整したり、
ボール部分の球面精度をあげ、コーティングするなど実はいろんな仕掛けをしています。
回転抵抗を低減するチューニング技術は意外と未知の世界があるかもしれませんね???

これからもいろんなアイデアをテスト&トライし情報を公開していきます。

今回はここまで。次回へとつづく    By藤田ぴょん