素材の接合

超軽量・高剛性のボディの製作にあたって、
欠かせない作業の、素材の接合についてお話したいと思います。
接合する箇所や素材、必要な強度によって、色々な方法を使い分けますが
それぞれの方法の特性を御紹介します。

板の接合には機械的接合法と、冶金的接合法などがあります。
どちらも金物を接合する方法として古くから使われている技術です。
機械的接合法とは(はぜ組、リベット締め)により金物を接合する方法で、
冶金的接合法とは、溶接による接合のことです。

まずは、機械的接合法の代表的なもので、リベット接合です。
ジャンボジェット機の胴体や主翼、尾翼に現在にも利用されており、
一昔前のF1も、はぜ組やリベット締めで、モノコックが製作されていました。

リベットの種類も多種類ありますが
フォーミュラーカーのフレーム接合に使用される平リベットのアルミクローズドタイプを
使用してサンプルを作りました。


↑の写真がリベットで接合された状態です。

リベット接合の長所ですが、誰でもどこでも簡単に素材を接合する事が可能です。
ドリル、リベッター、根気があれば可能。仕上がりも奇麗です。

リベット接合の短所は、リベットの数程下穴の加工が必要で、
リベッターで打ち込む数程重量増になり、劣化と共に下穴が広がりメンテナンスが必要とされます。


つづいて冶金的接合法(溶接)には多種類に分類されますが、ここでは3つに分けて説明をします。


↑の画像 MIG溶接(炭酸ガス溶接)多くは母材を炭酸ガスでシールして溶接します。
自動車の板金修理の際は7〜8割りぐらいがこの接合方法にてフレーム交換やパネル交換を行っています。

MIG溶接(炭酸ガス溶接)長所ですが、母材の材質、板厚、形状、使用目的に適したワイヤーを選べば、
薄鋼板の溶接が誰でも簡単にでき、溶接機に至っては半自動タイプが大半をしめていますので、
作業者の熟練を必要としないので大変便利です。

MIG溶接(炭酸ガス溶接)短所は下穴の加工作業に時間がかかり、
溶接時の火花が発生するので引火や火災また火傷には十分注意が必要です。

また溶接箇所が増えるとワイヤー分の重量が加算され、
溶接後はサンダー等にて溶接部分を研磨して仕上げにペイントをしますので、
大変根気と時間が必要とされます。



画像↑スポット溶接(抵抗溶接)で接合したものです。
スポット増しというボディの補強方法は、多くの方が耳にしたことがあると思いますが、
この溶接方法で接合する箇所を増やし、強度を上げることです。

スポット溶接とは、2つの母材を接触させて、大きな電流を流し、
接触部の電気抵抗による発熱により接合部分を溶融付近(母材が溶け始める状態)になった時に
加圧(力をかけて)して接合する方法です。
作業効率が早くまた軽量かつ表面のデコボコもないので極めて美しい仕上がりとなり、
フロントガラス、ドアー、ハッチ開口部分等の接合に利用され、確実に効果を体感する事ができます。
ここ近年ツーリングカーのボディー補強では、ボディーの大型化に伴い軽量化を目的として、
モノコックフレームにいたるまでスポット溶接にて接合補強をしています。

スポット溶接の長所ですが、作業効率が良く、溶接機にいたっては半自動機でダイアルをセットし、
ボタンを押すだけで軽量かつ表面のデコボコも少ない極めて美しい仕上がりとなり短時間での作業が可能、
溶接強度も十二分に確保する事が可能です。
溶接時の火花の発生が少ない為、フロントガラス、ドアー、ハッチ開口部分等の接合には大変便利です。

スポット溶接の短所ですが、溶接機のアーム部分やトーチの取りまわし自由度が少ないため、
溶接箇所が制限され、アームや先端のチップも溶接の都度セッテングが必要で、
アーム自体の重量が非常に重い為、長時間の作業になると疲労との戦いとなります。


画像↑のテストピースがTIG溶接(イナートガス溶接)で接合したものです。
多くは母材をアルゴンガスでシールし電極にはタングステンが使用され、
溶接棒や直流、交流電流の切り替えにより、
スチール、アルミ、ステンレス、チタン等、様々な素材を接合することができるマルチな溶接方法です。

TIG溶接(イナートガス溶接)の長所ですが、薄板から厚板に至るまで
セッテング次第でスチール、アルミ、ステンレス、チタン等、様々な素材を接合することができ
マルチな溶接方法で軽量かつ美しい仕上がりが臨むことができます。

TIG溶接(イナートガス溶接)の短所ですが、溶接部分の下処理が必要。
処理が不備の場合溶接の溶け込みが悪く、仕上がりにも影響を及ぼします。
またシールドガスに高価なアルゴンガスを使用するためコストがかかります。

以上簡単に素材の接合のお話をさせていただきましたが、様々な方法がありそれぞれ一長一短です。
溶接技法を知る事により、素材を活かし美味しい部分を引き出せるかどうかが
ボディー作りにおいては重要なポイントであると考えます。

当然、軽量化、高剛性の目的達成のため上記の接合にて補強をしてみました。
後日お披露目しますのでもう少しお待ち下さい。

日々努力し、すばらしい作品を生み出せる技術者になりたいものです。

今回はここまで。                  つづく by藤田ぴょん