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警察の情報公開こそが急務

(朝日新聞2000/04/19論壇)
清水 勉弁護士(東京弁護士会)全国市民オンブズマン連絡会議幹事

 昨年秋から、神奈川県警、新潟県警などで社会常識を逸脱した不祥事が相次いで報道されている。このような警察の組織的な腐敗堕落ぶりにはだれしもがあきれるが、では一体なぜ警察はこうなってしまったのか。原因は単純である。外部のだれからも批判されないという閉鎖性・秘密性への,確信”がいまの日本の警察を存在させている。
 だれでも自分の仕事がだれかに見られていると思うと襟を正すものだ。全国市民オンプズマン連絡会議は、一九九四年に都道府県の知事室や東京事務所の食糧費、監査事務局の管外出張に関して全国一斉に情報公開請求を呼びかけた。自治体ごとで公開の程度に大きな開きがあったが、この請求以降、どの自治体でも支出が激減した。住民に説明できない食糧費の支出や管外出張はしないという傾向が一気に定着した。
 次に私たちが取り組んだのが、条例で実施の対象になっていなかった都道府県議会と都道府県警の情報公開である。議会については先駆的に実施していた神奈川県や山梨県などのほか、最近の条例改正で実施機関とする自治体が増えている。しかし、警察は国の情報公開法成立に合わせてようやく数県が情報公開の対象とし始めた程度である。
 しかし、警察といっても会計関連の文書に関しては現状でも情報公開を請求できる。知事は、地方自治法が定めるように予算の執行や会計の監督、財産の取得や管理処分の権限を持っており、警察についてもこれらの関連文書を管理していなければならないからである。
 警察の総務部企画課の食糧費と管外出張旅費の情報公開請求に対して知事はどう対応したか。すべてが全部非公開の回答だった。その主な理由は
1. 県警は情報公開の実施機関になっていない
2. 2.警察は全国組織なので自治体独自の判断では決められない
3. 3.対象文書を「管理」していないというものである。
1. が理由にならないことはすでに説明した。2.も全国一律に判断しなければならない特殊な事情のある情報ならともかく、すべてがそのような情報であるはずがない。
問題は3.である。「管理」を地方自治法の問題として考えるか、各自治体が定める内部規則の問題として考えるかで、裁判例も分かれる。
 前者は、知事の予算執行権限に基づいて法的な管理責任がある以上、地方自治法よりも下位の規範である「文書管理規程」などでどのような管理の仕方を定めようとも、知事の管理下にあると考える。宮城県の非公開処分を取り消した先月の仙台高裁判決はこの考え方である。
 これに対して、後者は自治体の会計管理の規定の仕方で判断すべきだとする。しかし、これらの内規は自治体の都合でどのようにでも作り替えることができるため、容易に情報公開条例が空洞化してしまう。現に私たちが情報公開請求をした後、会計事務規則などを改正して知事部局での「保管」をやめてしまった自治体が多数出た。
 ところで仙台高裁の考え方でも、もう一つ大きな問題が残っている。警察が情報公開の対象となっても、捜査への支障や個人情報の保護などを理由に、実際には情報が開示されないことだ。これこそが中心的な問題なのだが、裁判所は消極的である。昨年三月の東京地裁判決が認めた管外出張旅費文書の一部開示個所は、ほとんど書式部分だけと言ってよい程度のもので、
「いつ」「だれが」「どこへ」「何の目的で」「幾らで行ったか」という基本的な部分が全く開示されなかった。
 そんな中、新潟県警で特別監察に来た関東管区警察局長を温泉マージャンで接待した事件が発覚した。警察の情報公開が出張旅費だけでも進んでいれば、こんなばかげた行為はそもそもできなかった。不正を放置した責任は公安委員会だけではない。知事や裁判官の警察の情報公開に対する消極姿勢も原因である。
 英断が求められているのではない。知事と裁判所が現在ある情報公開条例を正しく解釈運用するだけで警察は一変する。       =投稿=

●●●HomePage管理者のコメント●●●
皆さんの周りにもこのような例がありませんか?
私の身の回りにもあります。
 と言うのが、下関市の地方卸売市場に弊社は現在入居しています。
なんせ、40年以上たった老築建築なので建て直しが進行しています。関門海峡朝景色での工事現場です。
下関の行政側は業者の意見を聞くとは言っていますが全て「結論ありき」で自分たちの都合の良い情報しか出してきません。当然、役員以外の末端の業者はほとんど情報に触れることなく工事はどんどん進行している状態です。市民の税金を使い卸売市場を建設するのですから、建設業者の「利益」より市民の「利益」を優先すべきだという視点も抜けています。

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