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日本救う家庭発電所

普及阻む規制洗い出しを
 排熱使い効率倍に (日経2000/04/03サイエンスアイより)

 電話が一回りも二回りも小さな携帯電話となってモバイル文化が芽生えたように、圧倒的な小型化は技術の本質をがらりと変えてしまう。そして今、小型化の波はエネルギーの世界にも及び、巨大な発電所からは想像もつかない超小型の「家庭発電所」の姿がほのかに見えてきた。
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 発電機は大きく、高額の機械だ。そんな機械を家庭に置くほど小さく安価にできるのか、と問われれば、現代には少なくとも二つの有力候補が台頭している、と答えたい。
 まず水素と酸素を反応させて電気を作る燃料電池。「二十一世紀は燃料電池車の時代」とみた世界の自動車会社は競って研究を進めている。走行時の過酷な振動に耐える燃料電池ができれば、静かな家庭への転用は保証されたも同然だ。
 燃料電池には都市ガスが使える。だから都市ガス会社も家電メーカーと連携し燃料電池の開発に励む。
 燃料電池には、キーパーツの「イオン分離膜」の低コスト化が難しいという懸念もある。だが都市ガス会社の手中には第二の候補もある。大阪ガスは二年後にガスエンジンを使った家庭用発電機を発売するプランを温めている。
 家庭周辺のコンビニエンスストアなどに視野を広げれば、超小型のガスタービン発電機という選択肢も加わる。最近、高性能ぶりがにわかに注目を集め始めたハイテク機器である。
 超小型発電所は家庭に魅力的な製品となるだろう。遠隔地の発電所なら捨てるしか仕方のなかった排熱を給湯や暖房に使えるからだ。燃料から取り出せる電気エネルギーはたかだか三〇〜四〇%。だが排熱を拾い上げれば効率は倍に高まる。月々の電気代とガス代の支払いは大幅に減る。
 家庭は一国の縮図でもある。小型発電所が全国の約四千四百万世帯だけでなく事業所や産業界にも晋及した事態を想像すれば、興味深い光景も見えてくる。
 まず日本全体のエネルギーコストが減り、産業競争力を高められる。エネルギー効率が高まれば資源の寿命も延びるし、地球を暖める二酸化炭素(CO2)の排出も抑制できる。一連の効用は、すべて発電機の小型化がもたらすプラスの連鎖反応だ。
 家庭発電所に異を唱える企業があるとすれば、それは顧客を失いかねない電力会社だろう。しかし、彼らには発想の転換を求めたい。都市ガス会社からガス配管を借りさえすれば、彼らも家庭発電所をにらんだ新ビジネスを営む道が開けるはずだ。
 懸念はまだある。発電所を大きな「事業用電気工作物」とみなして有形・無形の規制をかぶせたままの現行の法体系だ。家庭への普及を阻む規制を洗い出し撤廃するよう、政府に求めたい。
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 今、日本を取り巻くエネルギー情勢には怪しい気配が漂っている。原油価格は上昇し、アラビア石油はサウジアラビアでの権益を失った。原子力発電所の立地は難航を極め、政府が長年唱え続けた「原発の二十基新設」は見直しを余儀なくされた。
 エネルギー利用効率を飛躍的に高める家庭発電所は窮地に陥った日本を救うかもしれない。政府も産業界も小型化がもたらす可能性に目を向ける時である。
  (編集委員中島彰)

●●●HomePage管理者のコメント●●●
「日本を取り巻くエネルギー情勢には怪しい気配が漂っている。」と書いています。
巨大施設・巨大企業を目指し、産業革命からやみくもに突っ走ってきた経済活動・政治が、そこそこほころびが出てきたと言うことでしょうか…。
 ただし、科学技術の進歩が全てを「解決」するというのは非常に短絡的な発想であり宗教的な匂いさへ私は感じます。小型化の科学技術が1つの問題を解決するかもしれませんが、次に小型化の科学技術が別の問題を引き起こす可能性があると言うことは歴史的な例は枚挙をいといません。
 ただ、バランスの上に立って(利益追求の綱引きで・・と置き換えてもいいです)判断・実行することは要求されるでしょう。
● 追伸
 高速増殖炉「もんじゅ」の危険性の裁判で危険性を訴えていた住民が敗訴しました。
裁判をしている最中にナトリウム漏れを起こしてあわや大事故になろうとしたのにです。
裁判官の勉強不足と思っている人はまずいないでしょう。
大事故を引き起こしても事業を進めた方が利益が多い・・と思っている人の方に裁判官は自分の立場を置いただけです。

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