「鄧州～無錫」夜行列車の旅

平成１８年７月１７日（月）「鄧州～無錫」夜行列車の旅

  鄭州のはずが、あさっての地、鄧州へ着いたのは５時間半後の１３時半であった。鄭州市は河南省の省都で政治、経済、文化の中心、人口７１６万を抱える大都会である。そんな駅に着くはずが、なんと！ど田舎の農村の駅に降り立ったのだから・・・
  なんかの間違いであってほしい、ビルらしき建物は駅だけ、あとはバラックのような民家があるだけ！改札を出、駅前のタクシー（２，３台しかなかった）のオッサンに鄭州はとこだと聞くが、ここは鄧州という。河南省の地図をひろげる。
  なんと、あさっての方向へ来ているではないか、それも倍以上の時間をかけて洛陽から南へ来ている。ノーテンキであった！鄭州は東である。一瞬無事帰国できるのだろうか？と頭をよぎる。
  すぐに切符売り場へ行き鄭州までの切符を買う（５６元）、当然普通座席しかない。発車時刻は１５時５６分である。まだ３時間もある。売店で時刻表を買う。鄭州着が２２時半だと１４日に買っておいた鄭州から上海行きの長距離バス（１７時２０分発）には間に合わない。パーだ。

  真夏の昼下がり、列車から降りた人が散ってしまった駅前は、真夏の太陽が照りつける閑散とした田舎の風情にもどっていた。のんびりとした風景のなかに場違いの私だけがウロウロしているようであった。「さて、どうしよう！」
  売店でカップヌードルを食べながらおばさんに、明日上海へ行きたいがよい方法は？と聞いてみる。彼女は「同じ列車で終点の無錫まで行けば」といってきた。既に２６１元の上海までのバス代はふいにしている。鄭州から上海までの飛行機は９００元、鄭州で１泊するとしたら１５０元はいるであろう。飛行機の切符はたぶん買えると思うが、売り場をまた探さなければならない。・・・
  鄭州までの切符を無錫までに替えてもらおう。切符売り場へ行くとダメだという。なぜだと聞くが相手の言うことがよくわからない・・・どうやらその切符で其のまま乗って行けと言っているようであるが、一度発券したものはどうも引き取らないようである。
  そうこうしているうちに丁度鄭州まで行く人が現れたのでその人に買ってもらい、改めて無錫までの切符をいただくことになった。（１４０元）無錫まで其のまま行くのは良いが体力勝負になりそうである。

  鄧州駅からの乗客には座る席は残っていなかった。
  まずは自分の荷物を置く場所を確保するのが先であった。なんとか網棚に１個のスペースを見つけ荷物を押し込む。その近くの通路に立っていられる場所を確保しホットする。乗ったのが午後４時過ぎ、鄭州着が１０時半、終点の無錫は翌日の午前１１時１４分の予定である。
  無錫まで行けば上海へは１時間のはずだ、一応、無錫までの切符を買って乗ったが無錫まで約１９時間立ちんぼはできない、鄭州で降りる人が多くいるはずだ、そこからは空いた状況になるであろう。場合によっては鄭州で降り、翌日飛行機で上海へ行く手もある。
  それにしても鄭州まで６時間こんな状態なのだろうか？通路を挟んで２人掛けと３人掛けの席は満杯で通路には２０～３０人、デッキにも人が溢れている。
  ２時間ぐらいは何とか立っていたが、つらくなり３人掛けの椅子の端っこに尻を乗せさせてもらい何とか腰を下ろした状態にした。しかし体は通路を占有しており、人が通るたびに立ち上がらなければならない状況であった。

  こんな状態の列車に乗ったのは何年まえであろうか学生のころ、まだ新幹線がないころ、年末年始の帰省時何度かあった記憶があるが、１９時間はなかった。２０時をすぎたころ近くにいる人が鄭州までなので、それ以降は私がそこに座りますからよろしくと言い一応、鄭州以降の座席を確保した。

  そもそも予定が崩れてしまったのは、洛陽駅で鄭州までの切符を買った時がいけなかった鄭州までと思って買った切符は鄧州までのものであった。窓口で鄭と鄧を間違っているのも気づかず時刻表を見せて買ってしまった。
  列車に乗るときも乗ったときも鄭州到着まで何時間か尋ねたけれど、発音が悪かったのかはっきりと回答は得られなかった。鄭州はZhengzhou(チョンジョウ）鄧州はDengzhou(ドンジョウ）である。
  乗って３時間過ぎたころ、少しおかしいなとは思ったが、ノーテンキに窓にひろがる中国の穀倉地帯を見ていた。１５日バスで鄭州から洛陽へ来たときは約２時間であった。

  ２２時４０分鄭州に到着、何とか座席を確保する。鄭州で降りる人も多かったが、乗ってくる人も同じくらいで結局列車が空く状況ではなかった。若干立っている人が少なくなったな、と言う程度であった。しかし一応ホットする。列車が動き出してやっとトイレにいくことにする。
  この列車は宜昌発無錫行きの夜行列車である。宜昌は、あの有名な三峡下りの長江沿いの都市である。湖北省の宜昌を出発した列車は鄭州へ北上、その後は東へ開封をとおり徐州まで行き、徐州からは、南へ向かい南京を経由し無錫へ至る１３８１ｋｍを一昼夜２４時間かけて走る列車である。

  乗車率１００％を超えた夜行列車、満席時の人間模様は面白い。すさまじいものである。要領よく各席の人々にどこまで行くか尋ね回る人、相変わらずあつかましそうなおばさん達、座っている人で気を使ってくれる人たち、一種の連帯感が生まれてくるような雰囲気でもある。けたたましい口げんかも発生していた。あのおっさん少しあつかまし過ぎるのでは・・・と見ていると、案の定、口げんかになってしまった。

  色黒で上半身が裸、半ズボンのオッサン二人組みが入ってきた。どのへんに陣取るのか、それにしても荷物を置く場所（網棚や椅子のしたなど）をつくるのも大変である。そんな満員の列車にも物売りはやってくる、弁当売り、カップヌードル売り、ジュース・ビール等雑貨売り、果物売り、スイカ売り雑誌売りとひっきりなしであった。それも夜中１２時半ころまで頑張っていた。
  私の目の前の若いカップルは終点無錫までである、恋人同士かな、２歳くらいの子連れの夫婦、鄭州より一緒の席である。この夫婦も終点までのようである。
  さすがに１時から４時ぐらいまでの３時間うとうととした。南京に着いたのが８時４０分頃、南京はかって遊んだところチョット降りてみたい衝動にかられたが我慢する。１１時半無事無錫へ到着、やれやれであった。食事をしよう。

  無錫からは、１５時２８分軟座（日本で言うグリーン車）でリッチに上海へ。１６時４０分であった。朱さんとの待ち合わせ（魯迅公園正門前）１９時まで少し時間がある。荷物を預け少しぶらぶらしてみよう。

※鄧州へ着いて無錫までのキップを買った後、カメラが盗まれたと思い、探しまわりました。実はバッグの中にあったのです。駅員さんたちに少し迷惑をかけたしまった。そんな訳で鄧州の写真はありません。