Top Page 文書館 No.030 No.028
あるスナックに、アルバイトの新人の女の子が入って来た。そのコが入ってきて、3日目か4日目の時、いつものように、店に車で出勤してきたのだが、普段停めている場所がいっぱいにふさがっていたので、ちょっと離れた空き地に車を停めた。 それから一時間後。今度はママさんが出勤してきた。ところがママさんも、いつも車を停めている場所がいっぱいだったので、近くの空き地に車を持っていった。空き地にくると、先日から雇った新しい女の子の車が停めてある。 「あぁ、このコの後ろだったらいいか。どうせ一緒に帰るんだし。」そう思ってママさんはそのコの車の後ろに自分の車を停めた。 一応、店に出勤してきてから、「〇〇ちゃん、私、あなたの後ろに車、停めたけど、もし今日早く帰る都合があったら言ってね。私、動かすからさ。」と、一言断っておいた。 そして店が開店してから数時間が経った。その間、お客と一緒に飲んで、その「新しい女の子」も相当に酔っぱらっていた。そして、話し相手をしていたお客が、もう帰ると言うので、その女の子はお客を送って店の外へ出た。 お客と一緒にちょっと外を歩いていると、たまたま自分がさっき車を停めた空き地を通りかかった。 空き地に来た時、女の子は突然叫び声を上げた。 「あーっ、私の車の後ろに誰か停めてるーっ!! 何、これー! 前、壁になってるのに、私、車出せないじゃーん!!」 さっきママさんが「私、あなたの後ろに車停めたから・・。」と言ったことなどは完全に忘れ、送ってきたお客に向かって「ひっどいことするヤツがいるわよねー! 常識ないんじゃない!? こいつ!」などと訴え始めた。 お客も当然のごとく酔っている。気が大きくなっているのと、いいカッコしたいのとが混じって、 「〇〇ちゃん、ワシ、車をレッカーする仕事しとんのや。待っとれ。今、仲間呼んで、この車レッカーで動かしたるけぇ。」 そう言って、携帯で仲間を呼ぶと、本当にちょっとしてから仲間がレッカー車を持って来た。その車をレッカーにつないでズズズーっと動かす。 「おう!〇〇ちゃん、これで出せるやろ。」 「わー。ありがとう!」 「しかし非常識な車やのお。〇〇ちゃん、どうするや?この車。傷でもつけたるか!?」 「そうよねー! 全くアタマに来るわ! ヤッちゃってよ!!ボコボコにしてやって、こんな車!!」 そう言い終わるが早いか、その男たちは「よっしゃあ!!!」とかけ声をあげ、その車のドアを蹴って蹴って蹴りまくった。その女の子も混じって十円玉で傷をつけまくる。 それがママさんの車であることは見事なほど忘れ去られていた。 「これだけやっとけば思い知るじゃろう。」そう言ってお客は帰って行った。女の子も気が済んだみたいだ。 それからしばらく経って、店も終わり、代行を呼んで、ママさんとその女の子は一緒に空き地まで歩いて来た。しかしママさん、自分の車を見てびっくり。車の両サイドが無惨にもボコボコにへこまされている。しかも傷もいっぱいつけられている。 ブッたまげて「警察を呼ぶわ!」とママさんが騒ぎ出した時に、その女の子は全てを思い出した。 「あーっ!!そうだった! この車って・・!」 警察を呼ばれる前に全てを正直に話し、何回も何回も謝って、結局その車の修理代は全額女の子が払うことになった。 |