Top Page 文書館 No.044 No.042
ある会社で仕事帰りにみんなで飲みに行った。 音頭を取ったのはその会社の課長で、その日、自分の部下をみんな引き連れて居酒屋へと向かった。 その中に一人A君という男の子が混じっていた。ちなみにA君は係長でも主任でもない、単なるヒラ社員である。 居酒屋に着いてみんなでガヤガヤとやっていると、だんだんと話も盛り上がってきて、その場の話題がなぜか相撲の方へと移行してきた。 何人かで相撲の話をしていると、そこへ突然課長が口を挟(はさ)んできてこう言った。 「相撲なんてどうせ八百長だろ。あれって最初から勝ち負けが決まってるんだろ。」 この発言をした次の瞬間、課長はいきなりA君に胸ぐらをつかまれていた。 「相撲のどこが八百長なんやーっっ!! 何も知らんくせに偉そうなことを言うなーっっ!! 」 そうだった・・A君は相撲マニアだったのだ。 周りの者がびっくりしてA君を止めに入る。しかし完全に激怒したA君はその手を離さない。 「謝れっ! 相撲取りに謝れ!! 今の発言、取り消さんとブチ殴るど、わりゃあ!! 」 A君が切れてしまった。普段おとなしくて、仕事上のことでは、いくら課長に怒られても反論しないA君が相撲を馬鹿にされたことで完全に切れてしまったのだ。 胸ぐらをつかまれて完全にビビリあがった課長が、やっと口を開いた。 「す、すいませんでした・・。相撲は八百長ではないです・・・。」 課長もヒラも関係ない。マニアが相撲を馬鹿にされて黙っていられるわけがない。ついに課長にワビを入れさせたのだ。 それまでの楽しかった雰囲気は一変した。 確かに相撲の八百長疑惑はたまに報道されたりするし、A君もそのことは十分に承知しているが、八百長が発覚した力士以外は全員真剣勝負をしていると信じているし、信じたい。 相撲に限らず、本当にその競技が好きな人ならば、こういうことを言われれば怒って当然である。こういう純粋なファンは、その競技の宝でもある。 |