Top Page 文書館 No.054 No.052
運転中、眠くなるというのは誰にでもあることである。特に高速道路を走っている最中に眠くなるというのは恐ろしい。 近年では、高速バスの運転手が居眠りをして大事故を起こし、何人もの死者が出た事件があったが、これに限らず、居眠りが原因の事故は後を絶たない。 自分が昔いた会社の同僚だったAさんは、その点、特に慎重な人で、「運転中、眠くなったらすぐ寝る」を信条にしている人だった。 すぐに道路の左に寄せて車を停め、イスを倒して寝る。夜だったら、よくバス停に停めて眠りに入るらしい。 そのAさんが、ある休みの日、実家へ帰省するために、高速道路を走っていた。所要時間は約2時間の予定だった。 高速に入ってしばらくすると急に眠くなってきた。眠くなったらすぐに寝るのがAさんなので、いつものように、道路の左端に車を停めて、イスを倒して寝ることにした。 しかしこれが一般道ならまだしも、高速道路で左に停めて寝るようなことは普通の人はしない。 Aさんの場合、このあたりがちょっと感覚がズレているのかも知れない。 横を100km以上のスピードで次々と車が通過していくが、Aさんは気持ち良く眠りについていた。 しばらく経つと、窓をコンコンとノックする音が聞こえてきて目が覚めた。Aさんが窓の外を見てみると、車の外にスーツ姿の男が二人立っている。 ルームミラーで見ると、自分の車の後ろに乗用車が停まっており、その乗用車の天井には赤いパトランプがついていた。 高速道路によくいる覆面パトカーだった。当然、ノックしてきたのは警察の人。 「どうかされたんですか?具合でも悪いんですか?」と、聞いてきた。 「いや、別にそういうわけじゃないですけど、眠たくなったので、ここで寝ていただけです。」 とAさんが言うと 「あんた、高速道路で寝てちゃいけませんよ。寝るんだったら、パーキングエリアに入って寝て下さい。」 と警察は言う。 「しかし、眠いまま走ってたら事故するだろうが。あんたら、ワシに事故起こさせる気か!」 と言い返すと 「別にそんなことは言ってません。とにかくここで寝てはダメです。すぐに発進して下さい。」 「眠くても走れと言うんか!」 「まあ、そうなりますが・・。何とかパーキングエリアまで、行って下さい。」 「警察が事故を誘発させるようなことを命じる気か!眠くても走らせるとは、それが警察のやることか!言ってることがメチャクチャじゃないか!」 「いや、メチャクチャなことを言ってるのはあなたの方です。とにかく、早く発進して下さい。後続車の迷惑になりますから。」 押し問答をしていても時間を使うだけなので、しぶしぶAさんは発進することにした。 後にAさんが、自分と会った時にこの話をしてくれて 「ワシが高速で寝とったら、いっつも警察が来て起こしやがる。誰かが通報するんじゃろう。」 と言っていたので、こういったことはしょっちゅうやっているようである。 しかしこの場合、Aさんの言うことにも一理あり、この場合、どっちが正しいのか判断に迷うような気がするが、やはり警察の言い分の方が正しいのだろうか。 |