空腹は怒りを招く
減量期間中に「腹が減ってしょうがない時、とにかくイライラする」と、自分も実生活で減量中だった友人たちから聞いたことがあります。これは人間本来の感情としてありがちなことです。
胃の具合と感情を結び付けているのは、脳にある視床下部です。視床下部には満腹中枢や摂食中枢が存在し、腹の具合によって反応します。
満腹になって血糖値が上昇すると満腹中枢が刺激され、これ以上の食欲は抑えられます。
逆に腹が減ってくると血糖値は減少し、体内の脂肪の分解が始まります。分解された脂肪の一部は遊離脂肪酸となって視床下部に届き、摂食中枢を刺激して食事を摂るように指令を出します。
視床下部へ届いた空腹の合図は、その周辺にある扁桃核や側坐核にも伝えられます。この扁桃核や側坐核は「不愉快な感情に深く関わってる神経細胞」であり、この部分に刺激を受けると「腹が立つ」という感情を生じさせます。
つまり、胃がカラになってくると遊離脂肪酸が脳に届き、しかもその届いた部分は脳の中でもマイナスの感情を発生させる部分であって、ここに刺激を与えるということになります。腹が減ってくると腹が立ってくるというのは、当然の反応ということになります。
何か頼みごとをする時とか、言いにくい報告をする時に、相手が空腹の時にそういう話を切り出してしまうと、思いのほか話がこじれたり相手が怒り出すこともあります。
悪い話をしなければならない時は、相手が満腹か空腹かで結果が違ってくる場合もあるのです。
随分昔の話ですが、かつてバングラディシュの北部のランプールというところで、1日中働いてお腹をすかして帰って来た農夫のモミヌル・ラーマンという男が家に帰って来た時、夕食の支度が出来ていなかったために怒りが爆発し、妻の頭を棒で思い切り殴って死亡させた事件がありました。これは極端な事件ですが、空腹は怒りを招くのは本当のようです。
空腹を耐えていると、それほど空腹を感じなくなる
何か食べろという摂食中枢からの指令は延々と繰り返されるものではなく、ある一定の時間出されると、摂食中枢の方が諦めて、そういった指令を出さなくなります。
腹が減ってもそのまましばらく我慢していると、あまり腹が減ったと感じなくなるのはそのためです。
人間の脳はとても高性能で、忙しい仕事をしている人ならばよく体験しているでしょうが、これをしながらあっちに注意を向けて、あの人が来たらこういうことを伝えなくては、ということも思い出しながら、就業時間内にあれを片付けなければ、などと、ほぼ同時に色々なことを考えることが出来ます。
腹が減ったからといって、脳はいつまでもその指令に関わってはいないのです。それだけ人類の脳が発達しているという証でもあります。