アメリカ・ニューメキシコ州のサンタフェから40kmほど北にある、チマヨという町に、一つの古びた教会がある。この教会には松葉づえや歩行器がたくさん置き去りされている。
なぜこういったものが多く残されているのかというと、この教会にしかない「癒しの土」が、不治の病を直したり、歩けなかった人が歩けるようになったりという奇跡を起こすため、訪れて歩けるようになった人たちが、そうした松葉づえなど置き去りにしていくからである。
見た目は何の変哲もない教会であるが、骨折や歯痛、関節痛、エイズなどの悩みを持った人々が連日訪れ、この「癒しの土」の恩恵にあずかっている。
この「癒しの土」は、「エル・サンチュアリオ」と呼ばれ、教会にある穴から採取される。この土を水に混ぜて飲んだり、直接食べたり、患部に塗ったりすると奇跡的に怪我や病気が治るのである。
この土を求めて訪れる人は年間30万人にものぼる。これだけ多くの人々が訪れていれば瞬く間に土がなくなってしまいそうであるが、不思議なことにいくら取り出してもこの穴が空っぽになってしまうことはない。
そもそも事の起こりは1820年、復活祭のミサで祈りを捧げていた、ある牧師が、土の中から少しだけ顔を出していた小さな十字架を見つけたことに始まる。
牧師はこの十字架を、16km離れたある教会へ納めに行った。
ところが翌日同じ場所に来てみると、昨日持って行ったはずの十字架がまた同じ場所にあったのである。不思議に思った牧師はもう一度その十字架を同じ教会と納めに行った。そして翌日戻ってみるとまたの十字架が地面に刺さっている。
こうしたことが三回もあって、この牧師はこの場所が聖地であることを確信し、この場所に教会が建てられることになったのである。
しばらくして身体の不自由な人がこの教会を訪れた時に、ここの土を水に混ぜて飲んだり、患部に塗ったりしたことがあって、その時にここの土が、傷や病気を癒す奇跡の土であることが発見されたのだ。
信じがたい話ではあるが、この教会に残されている莫大な数の松葉づえや歩行器が、この奇跡の土の効果を証明していると言えよう。
※写真撮影と土の採取はzigyさん。
教会の概観
置き去りにされた歩行器
礼拝堂
「癒しの土」。粒子が細かく、砂に近いような土です。