1994年3月24日、アメリカのフロリダ州ウィリストンの自宅を自家用トラックに乗って出た、ノーマン・ルイスという66歳の男性がそのまま行方不明になった。彼は家に財布などの持ち物も置きっぱなしで、誰の目から見ても、とても遠出をしたように思えなかった。
小さな町だったので、発生当初、すぐ解決できる事件かと思われたが、何の手がかりが得られないまま二年が経過してしまった。
捜査に行き詰まった地元警察は、一大決心をして、サイコメトリーによる調査に望みをかけることとなった。
サイコメトリーとは、人間や物体に触れたり景色を見ることで、それにまつわる情報や過去のこと、またはそこで起きた出来事など感じ取れる能力のことである。
指名された超能力者は、FBIアカデミー(訓練学校)の講師をしていた女性超能力者のノリーン・レニエである。彼女はこれまでいくつもの迷宮入りの事件を自らの能力で解決してきており、また1981年に起こったレーガン大統領の暗殺未遂事件も事前に予知していたということはよく知られていた。
彼女に手渡された物は行方不明となったノーマン・ルイスの財布と靴の片方だった。もちろんその時点で、その遺留品の持ち主が生きているのか死んでいるのかさえも知らされていなかったが、彼女が財布と靴を手に取り、意識を集中させると様々なイメージが脳裏に浮かんでくるのである。
それはまるで、行方不明になったルイス氏自身が自分の目で見たことと、それらを横で見ていた目撃者の目から見たような情景が浮かぶのだという。一通りイメージが感じ取れた彼女は口を開いた。
「ルイス氏はトラックに乗って出かけ、そしてある程度走ったところでいきなり道路を外れてしまい、その横の大きな裂け目のようなところに落ちしまったようです。彼は事故で命を落としている可能性があります。」
さらに彼女の口から出た情報として、事故現場はルイス氏の自宅から2.1マイル(3.36km)の辺りであること。また、道路の番号は44番(44号線)であること、近くに橋があって、大きな裂け目がある場所が事故現場であること、そしてまだ遺体がトラックに中にあること、などが告げられた。
またそのほかには、線路や流れていない水、そしてトラックの中に閉じ込められているノーマン自身の目から見た水草などイメージが感じ取られたという。
こうした情報を得た警察は、さっそくすべてのイメージに合致する場所を特定し始めた。そしてその結果、州道44号線沿いにある湿地帯の深みでノーマンのトラックが発見され、更に中に遺体があることも発見されたのである。
こうしてサイコメトリーのおかげで遺体は発見され、この事実はマスコミを知ることとなり、ノリーンの名前はアメリカ各地の新聞で大々的に報道されることとなった。