普通に生活していた人間が、ある瞬間、突然燃えあがり、そのまま謎の焼死を遂げてしまうという事件は世界中でいくつも報告されている。
いずれも発火元は人間の身体そのもので、中には身体は重度のやけどを負っているのに服はこげていないという例もある。以下に記したものはそのほんの一例である。
1995年7月4日、アメリカのジョージア州。ある老夫婦の、妻の方が風邪を引き体調を崩していた。夫は妻を居間のイスに座らせて、自分はビールを取りに台所へ向かった。その、ほんのわずかの時間のことである。
「ギャーッ」っという妻の叫びが突然聞こえてきた。びっくりして夫は居間に戻ってみると、そこには全身を炎に包まれ、悶え苦しむ妻の姿があった。夫は、あまりのことに身体は硬直し、何も出来ないまま見ているだけだった。
わずかの時間が過ぎ、ハッと我に帰った時、妻の身体は完全に灰と化していた。通報で警官が駆けつけた時に現場に残っていたものは、イスの燃えかすと背骨らしき骨の一部、そして左の足首だけだったという。
1998年11月17日、フランスで人体発火と思われる事件が起きた。住民から「近くの農家で何か焼けたような臭いがする。火事かも知れない。」と警察に通報があった。
警察は消防と連絡を取り、すぐに現場に向かった。問題の農家に到着したが、ドアには中からカギがかかっている。
呼んでも応答がない。しかし焼けたような臭いは確かにこの中からしてくる。警官たちは無理矢理ドアを破り、中に侵入した。
ドアを開けると急に熱気を感じ、天井のあたりが少し焦げているのが目に入った。そしてその真下には、テーブルがあり、その横には灰の山が出来ている。
灰には骨の一部らしきものが混ざっていたが、もっと驚いたものは、スリッパをはいたままのヒザから下の両足が残されていたことである。
燃焼範囲は極めて限定されており、燃え広がった様子もない。テレビも付けっぱなしのままだった。発火元はこの家の住人・・・人間の身体から、としか考えられない状況であった。
1989年5月3日、アメリカのインディアナ州の道路で、走行中のドライバーが驚くべき光景に遭遇した。路肩に停止している車から炎が出ていたのだ。しかし車そのものが燃え上がっていたのではない。燃えているのは運転席に座っているドライバー自身だったのだ。すぐに救急車と消防を呼び、ドライバーを救助したが、病院に搬送される途中で死亡してしまった。
車の内部はほとんど損傷しておらず、激しく焼けた跡があるのは運転席前方だけだった。もちろんガソリンが引火したとか煙草の火が身体に燃え広がった様子もなく、身体だけが激しく燃えていたのである。
車内における人体発火はいくつも報告されており、1960年11月19日には、ケンタッキー州で5人全員が乗ったままの状態で焼死体で発見されたという事件も起こっている。この時には骨の水分がなくなるほどの激しい炎で焼かれているとの調査結果も出された。しかも誰も車外に逃げ出そうとした形跡がないことから発火原因は謎のままとされている。
また、1998年8月24日には、オーストラリアで、自分の母親と一緒に車で職場に向かい、母親を車に残して数分間作業をしていた時に突然車の内部から煙が上がりだし、あっという間に車内が炎に包まれた、という事件もあった。
中に乗っていた母親が原因不明の炎で突如として燃え上がったのだ。母親はしばらく意識不明の重体だったが、一週間後に死亡してしまった。
これらは人体発火のほんの一例であり、まだまだ多くの事件が発生している。しかし必ずしも死にいたる場合ばかりではなく、助かった人もいるのであるが、それらの場合、突然肌から煙が上がりだしたが、やけどだけで済んだ場合や、履いていた下着が燃え始めたが少しのやけどで済んだ、などの軽度の発火現象もあるようだ。
いずれにしろ、人体が突然として燃え上がる現象は事実として存在し、身近に起こりうる現象であることは確かである。