牧場に現れたチュパカブラ
チュパカブラとは、1995年にプエルトリコで島中の家畜が多数襲われ、血を吸って殺されるという事件が起こり、その犯人としての謎の怪物につけられた名前である。チュパカブラとは、「ヤギの血を吸う」という意味になる。
このチュパカブラらしきものが2000年4月に再び南米のチリに現れた。この年の4月12日、チリの首都サンティアゴから300kmくらい南にあるウエピルという町で、ホセ・イスマエル・ピノという59歳の農民が、仕事を終えて納屋から出て来たところ、大きな牛が狂ったように走っている場面に遭遇した。
牛が走り回ってる理由はすぐに分かった。その付近に見たこともないような奇怪な生物が立っていたのだ。その生物は、じっとホセを見つめている。
その生物は猿にちょっと似ており、身長は150cmくらい、口からは牙が突き出していて目が赤く血走っているように見えた。背中には羽のようなものが生えている。
びっくりしたホセは、すぐに納屋に走っていき、全ての柵(さく)を開けて牛を開放した。牛をけしかけてこの怪物を追い払おうと思ったのだ。牛も牧羊犬も怪物に向って突進する。どうなったのかは分からないが、しばらくして帰ってきた牧羊犬は首の辺りが血にまみれていた。
牧場主にこのことを報告すると「チュパカブラだ!それは吸血獣チュパカブラに間違いない!」と驚きの声をあげた。この牧場主は最近、プエルトリコにいる知人の家畜が、まさにホセが見たような怪物に襲われ、血を吸われて殺されたという話を聞いていたのだ。
これ以降、牧場主はショットガンを持って牧場を見回るようになった。幸いこの牧場ではこれ以後事件は起きなかったが、近隣の町では家畜が何者かによって殺されるという事件が相次いで起きた。
血を抜かれた動物たちの死体
2000年5月2日、このウエピルの近くのサンタ・フェという町で、なぜか妊娠しているメスの羊ばかりが狙われて、8頭も殺されていた。警察の調査では野犬の仕業ということになったが、チュパカブラの噂は町の人達にも伝わっており、地元の人達はそれでは納得しなかった。
更に不審な目撃情報は続く。その翌日の5月3日の深夜1時ごろ、コンセプシオンのラグーナ・レドンダ地区に住むリリアナ・カスティーヨは、自分の家の裏の路地に住みついていた野良犬が激しく吠える声を聞いて目を覚ました。
ベッドから起きて窓を開けると、自分が「ブラック」と名づけたその野良犬が、身長2mくらいはあろうかという大男に向って吠えていたのだ。ブラックは怯(おび)えているのか、壁まで下がって尻を付けている。もっとよく見ようと思ったが、その大男はすぐに姿を消してしまった。
翌日、ブラックの死体が発見された。首には1cm近い大穴が、5cmの間隔で二つ並んでおり、死体の血は全て抜き取られていた。異常に軽いその死体は全身がしわくちゃになっており、血を吸われたと見られる。警察には通報したが、調査を行った後警察からは「地元住民がパニックになるので、このことは口外(こうがい)しないように。」と警告を受けた。
その同じ日には近隣の牧場で、35羽の鳥が小屋の中にいたにも関わらず殺されているのが発見された。その35羽は全て血を抜かれていた。
また、チュパカブラと思われる生物は、チリだけでなくアメリカ・メキシコ・グアテマテラ・ブラジルなどでも目撃されており、身長も2mくらいの大男から90cmくらいのものまで目撃されている。そして殺されて血を抜かれていたのは犬や羊だけではなく、ウサギ、アヒル、ネコなどもその被害に遭(あ)っていた。
捕獲されたチュパカブラをアメリカ軍が回収する
日付は分からないが、ある時「チリの陸軍が三匹のチュパカブラの捕獲に成功した。」というニュースが伝えられた。情報の発信元は、チリのテレビ局「EFEニュースサービス」の担当であるマーシャル・カンポス・マザという記者である。
捕らえられたのは雄と雌、そしてその子供らしき生物で、カラマという町の北の方にあるラドミロ・トミック鉱山の近くの砂漠で捕獲されたという。そして捕獲作戦の最中に兵士が一人死亡したというニュースも伝えられた。これが本当ならば驚きのニュースである。
その後、このチュパカブラは、とりあえず捕獲作戦の拠点となっていた建物の中の檻(おり)に入れられ、数時間後、アメリカ軍の回収チームがヘリコプターでやってきて、チュパカブラを引き取った。
チュパカブラは生きた状態のまま、アメリカ軍のロゴマークをつけたコンテナに入れられ、カラマでアバント航空機に積みこまれ、どこかへ運ばれて行った。
カラマの町を中心とした地域ではアメリカ軍の批判が巻き起こっているという。なぜアメリカ軍がここで介入してくるのか。あくまで噂や推測の域であるが、チュパカブラというのはアメリカ軍と政府が行っている遺伝子実験によって作られた生物だというのだ。
その根拠として、1998年、アメリカ・ネブラスカ州で、軍事施設の跡地のミサイル格納庫からチュパカブラのものと思われるミイラ化した死体が発見されており、「チュパカブラとは、軍が開発した生物兵器ではないか。」との噂が広まっていたことによる。
そしてその生物を実験経過中にうっかりと取り逃がしてしまった。そのおかげで家畜襲撃事件が相次いだ。何より、これらの実験が全てチリの国内で行われているということに批判が集中した。チリの学者たちは防衛省を通じ、チュパカブラとアメリカ軍の関係を調査するよう、政府に直訴したという。
これら一連の事件の犯人は本当に吸血獣チュパカブラなのか。そしてチュパカブラとは自然界に存在する生物なのか、人口的に作られたものなのかは何も判明していない。
<2005年5月アメリカ・ユタ州のレッドロック砂漠で発見された奇妙な頭蓋骨。チュパカブラのものと推測している人もいる。>
<チュパカブラを捕らえた写真。日本のスポーツ新聞では「偽物だった」と報道された。>
偽者と発表されたものは本当に偽者か?
ただ、情報も写真も信憑性(しんぴょうせい)については情報操作されている可能性がないわけでもない。
このコーナーの「No.122 太陽系の星々に点在する知的文明の跡」の「情報の信憑性と公開されない情報」にも書いたが、例えば真実の事件がマスコミに知られて報道されてしまった場合、その事件が政府や軍、ある組織にとって知られては困る情報だった場合、「あの事件はエイプリル・フールのジョークだった。」と改めて発表し、事件そのものを冗談にしてしまうのは先進諸国がよく行う手段だという。
本物だと思っていたものが実は偽物だった、というパターンは世間では非常によくあることだが、その逆も存在する。
実際は本物であるのに、それが本物と知られてはまずい、という場合、組織などから「あれは冗談だった、作り物だったと発表するように」と圧力をかけて、本物なのにそれが偽物になってしまう場合もある。
このチュパカブラの写真にしても偽物と報道されたが、アメリカ軍や政府が関与しているという噂がある以上、本当に偽物なのか、本物が偽物になってしまったのか、疑うほどに判断が難しくなる。