▼アメリカの掲示板に現れた未来人

2000年11月、アメリカの、ある掲示板に「私は2036年の未来からやって来た。」という書き込みがなされた。投稿者の名前はジョン・タイターと書かれてある。

文章がこれだけで終わっていれば、それは誰も相手をしないようなイタズラ書き込みとみなされるが、この場合の彼は違った。

彼の住んでいる未来の世界で起こった出来事などを語り始め、また、2000年以降に起こるであろう事件の予言めいた文章も投稿し始めた。最初は本気にしていなかったユーザーたちも、次第に彼の話に興味を持ち始め、次々と質問が寄せられるようになった。

自称タイムトラベラーであるジョン・タイターは、この掲示板で山のように寄せられる質問に対し、極めて真面目な態度で丁寧に答えていった。

彼の話は、近未来に起こるであろう出来事の話だけではなく、タイムトラベルの理論や時間の概念、未来人が過去に来て歴史はどうなるのかといった歴史干渉の話などにも及び、掲示板のユーザーたちと熱いやり取りが交(かわ)わされた。

また、自分が乗ってきたタイムマシンの説明や操縦マニュアルの写真、推進原理図の一部なども掲示板で公開した。

タイターは、2036年の世界では軍人であり、この現代には軍の任務でやって来たという。そして掲示板に登場してから4ヶ月後、タイターは「任務を完了したので帰還する。」という書き込みを最後にネット上から姿を消してしまった。

▼タイターの発言した未来の出来事

ジョン・タイターが、ネット上から姿を消してから8年後の2009年、すでに世間から忘れられかけていたが、あるメディアがこのジョン・タイターのことを取り上げたために、タイターは再び世間の注目を集めることとなった。

あの当時は漠然(ばくぜん)とした予言のようだった書き込みが、2009年の時点で思い起こすと、当たっているものが結構あったのだ。

例として(カッコの日付は投稿日、太字がタイターの発言)

●(2000.11.02)約1年後にはCERN(欧州原子核研究機構)で、タイムトラベルの基礎研究が始まり、2034年にタイムマシンが完成する。

<※欧州原子核研究機構 : スイスのジュネーブにある、世界最大規模の素粒子物理学の研究所。>

→ 欧州原子核研究機構は、2007年に完成予定である大型加速器を使用する実験で、小規模のブラックホールが作れる可能性があると発表した。ブラックホールを利用した時間旅行の基本となる研究が開始されることとなった。

●(2001.02.08)ペルーで地震が起こる。その地震の日を予言することも出来るが、それを行うと死ぬべき人が生き、生きるべき人が死ぬということが起こってしまう。

→ 2001年6月23日、ペルー沿岸でマグニチュード7.9の大地震が発生。大変な被害が出た。

●(2001.02.08)ローマ教皇が交代する。だが私は新教皇の名前は知らない。

→ 2005年4月2日、ヨハネ・パウロ2世が死去。4月19日にベネディクト16世が新教皇となる。

●(2001.02.19)中国は、もうすぐ有人宇宙船を周回軌道に乗せることが出来る。

→ 2003年10月15日、中国は初めての有人宇宙船「神舟5号」の打ち上げに成功した。

●(2001.02.25)イラクが核兵器を持っていることを知ったらあなたは驚くだろうか。それともイラクの核兵器とは、戦争のための偽(いつわ)りの情報に過ぎないと思うだろうか。

→ 2003年3月19日、アメリカとイギリスの連合軍は、イラクが大量破壊兵器を隠しているという理由で空爆を開始し、第二次湾岸戦争が勃発(ぼっぱつ)した。後にアメリカ調査団によって大量破壊兵器は存在しないと発表されたが、大量破壊兵器(タイターの言う核兵器)を理由にした、イラクとの戦争開始を示唆(しさ)している発言である。

●(2001.03.24)人は絶えず死んでいる。その多くはクロイツフェルト・ヤコブ病によるものである。この病気がいかに深刻な被害をもたらすかを言っておきたい。

→ 変異型クロイツフェルト・ヤコブ病と狂牛病は、非常によく似ていることから、同じ病原体によるものと現在では結論が出されている。アメリカにおける狂牛病の発生を示唆(しさ)した発言である。

当たった予言やタイターの知識などから、「彼は本物の未来人だ。」と信じるユーザーがネット上で急増し、タイターは再び議論の種となった。

▼タイターが2036年からやって来た理由

タイターの話によれば、彼はいったん1975年にタイムトラベルして、自分の父方の祖父に会い、その後、自分が生まれた1998年に来たと言っている。

そしてそこでフロリダに住む自分の両親と生後2ヶ月の自分自身に会い、4人で一緒に2年ほど暮らし、2000年になってから掲示板に書き込みをするようになった。タイターは2036年でもフロリダに住んでいるという。タイターの両親たちは、この成長したタイターが、今、自分たちの幼い子供の未来の姿だということは認めているらしい。

同居している間にタイターは、2000年問題で起こる混乱や災害から逃れるために家族に引越しをすすめている。タイターのいる世界では2000年問題で大変な混乱が起きたらしい。実際に一家は引越しを行ったというが、こちらの世界では2000年問題は別に何事もなく終わった。このことに対してタイターは大変なショックを受けたという。

<2000年問題 : コンピュータ内部での日付の表現方法が問題で、西暦を下二桁だけで表現している場合(例えば1998年を98年と表記)、2000年になった時、それをコンピュータが1900年とみなしてしまい、それによって様々な機械の誤作動が起こるのではないかと危惧された問題。

具体的には発電・送電機能の停止や停電、水道が止まる、航空機・鉄道機関が停止、銀行・株式市場の機能停止、通信機関が使えなくなったりミサイルの誤発射などが心配されたが、特に大きな問題は起きなかった。>

彼は2036年の世界では、軍に所属している軍人で、自分が過去の世界にやって来たのは、ある任務があるからだという。

タイターのいる世界では、2038年1月19日3時14分7秒を過ぎるとコンピュータが誤作動を起こす可能性があり、その時に世界は大変な混乱を起こすだろうと予測されている。かつて騒がれた2000年問題のようなものが2038年にも起きるというのだ。

2038年問題 : ウィキペディア フリー百科事典

この問題を回避するためには、IBM社製のコンピュータ「IBM5100」が必要であるという。IBM5100は、タイターのいる時代には、もう古すぎて現存はしていない。

このIBM5100には、UNIX系の各コンピュータ言語と、古いコンピュータ言語を翻訳する機能が搭載されており、旧型コンピュータを動かし、「2038年問題」を回避するためにはどうしてもこのコンピュータが必要なのだという。

タイターのいる世界は2036年であり、あと2年後に迫った2038年のために、まだ「IBM5100」が現存している、この世界に来たのだという。

実際、「IBM5100」には掲示板でタイターが指摘した通りの機能があり、この機能は説明書にも記載されていないし、これ以降の機種にも搭載されていない。タイターの発言を受けて、地方新聞のインタビューに応じた元IBMのエンジニアが、「なぜタイターがこの機能のことを知っていたのか、驚きだ。」といった発言をしている。

タイターの父はIBM5100の開発に関わった技術者でもあり、タイターがこの役目に選ばれたのは、それが理由ではないかと言われている。

▼未来人が過去に来ることによって、歴史は変わらないのか
~ タイムパラドックスとパラレルワールド ~

未来人が過去の世界に来て、今後起こる事件や天災の情報を教えたり、何らかの行動を起こしたりすれば、本来起こるべきことが起こらなくなったり、歴史にはなかったことが起こったりする場合が出てくる。

タイターが未来の世界へIBM5100を持ち帰ること、掲示板で予言のような発言をすることによって、我々のこの世界の未来が微妙に変わってしまうことはないのか。

こういった点についても掲示板でかなり突っ込まれた質問があったという。こういった問題に対してもタイターは真面目に返答を返した。

時間旅行が可能になることによって生じる様々な矛盾(むじゅん)を「タイムパラドックス」という。

未来の人間が過去の世界に来て、本来の歴史にはない行動を起こした場合、どうなるかということであるが、掲示板のやり取りにおいてもタイムパラドックスは議論の種となり、この点についてもタイターは説明を行っていた。

タイムパラドックスで有名なものに「自分殺し」の理論がある。未来の自分が過去の世界に行き、そこで過去の自分を殺した場合、未来の自分はどうなるのか、ということである。

この「自分殺し」の疑問に対する回答は3種類が考えられている。

1つ目は、色々な外的要因が働いて、何回挑戦しても殺すことは出来ない、すなわち歴史は変わらない、とするものである。

2つ目は、「殺すことは出来る」とするものであるが、殺した瞬間、未来の自分は消滅する。未来の自分が存在しないということは、過去に行った自分も存在しないということになる。これは矛盾しており、あり得ない答えである。
3つ目は「パラレルワールド」によって説明しようとするものである。

パラレルワールドとは「並行世界」「平行世界」などと訳され、この現実の世界と同じ時間の流れで存在する、別の世界のことを指す。

このパラレルワールドは無数に存在し、例えば今現実の自分が、去年会社を辞めて転職していたとする。ところが、パラレルワールドの中の一つの世界では、まだ会社を辞めていない自分がおり、また別の世界では失業中の自分がいたりする。

国の政策を決定するような人物についても同じようなことが言え、それぞれのパラレルワールドでは世界の発展の仕方も違ってくる。パラレルワールドの中には、今自分たちがいる現実世界と極めてよく似た世界もあれば、全くかけ離れた歴史をもった世界もある。

同じ地球でありながら、「現実とは違う別の世界が多数存在している」という考えは、「地球は一つ、自分は一人」という固定観念を持っている人には、受け入れることが難しいかも知れない。

一般的に「この世とは違う別の世界」と言えば、大体の人は「死後の世界」や「天国と地獄」などを連想する。そして、これらの存在を信じている人も多い。だが、「死後の世界」や「天国・地獄」がどこにあるのかと聞かれれば、誰も答えることが出来ない。

パラレルワールドと「死後の世界・天国地獄」は全く違うものではあるが、パラレルワールドがどこにあるかと言えば、そういった感覚で理解するしかない。

タイターも言っているが、自分が過去の世界に移動する場合、自分が元いた世界の過去に正確に移動することは不可能だという。たどり着いた過去の世界は、極めて良く似てはいるが、わずかに違う別の世界であるらしい。

そこで自分殺しを行った場合、自分が殺した過去の自分は、別の世界(別のパラレルワールド)の自分であるから、未来から来た自分自身には何の影響もない。自分殺しは成功し、未来の自分が消滅することもない。

そして殺された時点で新たなパラレルワールドが分岐し、世界が一つ増える。過去や未来を行き来する場合、このパラレルワールドの考え方が最も合理的となる。

タイターによれば、パラレルワールドはいくつも存在するのでタイムパラドックスは起こらない、としている。つまり、過去の自分を殺すことも、仮に自分が生まれる前の親を殺すことにも矛盾はないということになる。

タイターは掲示板において、タイムパラドックスの説明をする際に、パラレルワールドのことを「ワールドライン」と呼んでいた。

日本語サイトではこの「ワールドライン」は「世界線」と訳されている。

(※以下、「パラレルワールド」はタイターの表現通り「世界線」と表記。)

タイターも、「異なる世界線に移動するので歴史が変わることはない」「なぜこの時代の人々はパラドックスが起きるのかどうかをそれほどまでに気にするのか理解出来ない。」という書き込みをしている。

▼タイターの書き込みは予言ではなく、自分の世界で起こった出来事

タイターによれば、最初に訪れた1975年の時点で2.5%の世界線のズレが生じたという。

時間を移動した時に、正確に自分が元いた世界線の過去に移動することは現在のところ不可能であり、これはタイターが、自分が元いた世界へ帰る時も同様で、極めて良く似た世界へは帰れるが、正確に自分のいた世界線へ帰ることは出来ないという。

タイターが書き込みをした未来の出来事は、当たったものもあり、はずれたものもありで、これらの書き込みはタイターが、自分のいた世界で起こった歴史を書いたものであり、それを2000年の時点で書くので2000年以降の事件は予言と受け止められてしまうが、タイター自身、「この世界と自分のいた世界では2.5%のズレがある」と言っている以上、それはこの世界に対する予言ではないし、全てが当たるはずもない。

タイターの住んでいる世界と我々のこの世界では、世界の発展の仕方や出来事の内容も違ってくる。ただ、共通したことも多く、起こった出来事の結果も同じになる。社会全般の人々の考え方や行動が極端に変わらない限りはそうなるらしい。

▼タイターのいる世界の歴史

タイターは、掲示板において、自分が住んでいた世界について多くの発言を残している。

それによると、タイターのいた世界では、2000年問題の時に大変な混乱が起きたという。そしてこの2000年問題で起きた混乱や災害が後にアメリカの内戦勃発(ぼっぱつ)へと発展していった。

2004年ごろからアメリカでは都市外部と都市内部で抗争が発生し始める。この抗争はどんどん拡大していき、各地でも暴動が発生する。2008年にはアメリカ合衆国は5つに分裂して内戦状態となる。

また、世界オリンピックは2004年を最後に開催されなくなった。再び復活するのは2040年からである。

2011年、内戦のためにアメリカ合衆国は崩壊するが、翌年の2012年、アメリカ連邦帝国が建国される。

2015年、ロシア連邦がアメリカの「反乱部隊側(都市外部側)」につき、反乱部隊を援助するために、アメリカの都市部に核爆弾を投下する。このことにより核戦争となり、第3次世界対戦へと発展していく。

2015年はNデイと呼ばれる。Nは「Nuclear(ニュークリアー = 核)」のことを指しているらしい。

一方、中国でも2007年に暴動が発生し、軍が出動するが、中国ではこれ以降、軍が暴走し始める。アメリカの内戦に便乗して他の国へ軍事侵攻し、2015年までには台湾、朝鮮半島、日本を併合する。

中国軍はオーストラリアにも攻め入ったが、これはオーストラリアが中国軍を撃退する。しかしオーストラリアは、ロシアの核攻撃により、都市部が壊滅状態となる。

ロシアの攻撃は、アメリカ、中国、ヨーロッパをターゲットとし、特にヨーロッパは壊滅的に破壊される。

アメリカが反撃をするが、2017年、30億人の死者を出した末に、ロシアの勝利によって第3次世界対戦は終了する。

また、内戦の続いていたアメリカ国内でも、2020年、都市部の敗北によって内戦が終わる。新しい連邦政府が、ロシアの援助によって成立する。

アメリカの都市区分は「州」ではなくなり、内戦の時に分裂した5つの勢力によって構成されるようになり、社会主義国家のようになる。タイターのいた2036年の時点では、星条旗の星の数を5つだけにしようという議論も起こっているらしい。

アメリカの首都は変更され、現在のネブラスカ州オハマが新しい首都となっている。そして地球上のほとんどの国が社会主義国家になる。

タイムマシンは実用化されて2年になるが、その存在を信じていない人も多い。いくつかの国が数台所有しているが、一般市民はまだ利用出来ない。一般利用出来るようになるのは2045年からである。

タイターの住んでいる2036年の世界では、核戦争による放射能汚染がひどく、限られた地域でしか生活することが出来ない。各地で放射能による土壌汚染がひどいため、産地も確かめず気軽に食物を輸入することは出来ない。飲料水や淡水の確保も問題となっている。

人々は身を寄せ合ってコミュニティを形成し、自給自足の生活をしている。しかし、コミュニティにとって危険な人物と判断された者、コミュニティに損害をもたらしたり、身勝手と判断された者は容赦なく殺害されている。

また、タイターが1998年に来た時に知った、巨大企業であるマイクロソフト、デル、グーグルは、どれも存在していないらしい。

エイズとガンの治療薬はいまだに開発されていない。環境汚染と治安の悪化により、人間の平均寿命は60歳以下になっている。

第3次世界対戦以降、それぞれの国は孤立化していき、国同士の交流が激減する。国際的な航空便はあるものの、2000年の時に比べるとその数は極端に減っている。

終戦後も核兵器がなくなったわけではなく、まだまだ世界中には核も大量破壊兵器も数多く存在している。

タイターのいる時代は、まさに終末の様相を思わせる世の中だという。

ただ、これらの歴史が我々の世界でも繰り返されるかというと疑問で、タイターのいる世界では2000年問題で大きな混乱が起き、それが後の第三次世界大戦につながったというが、こちらの世界ではほとんど何も起きなかった。

2000年を基準にしても、タイターのいる世界とこの世界では、未来が大きく変わっている。タイター自身も、「自分が未来に関する出来事を書き込んだ時点で未来が変わってしまうために、自分が見てきたものとズレが生じる。」と発言している。


<ネット上で出回ったジョン・タイターが描いたとされる2020年の日本地図。これと同じ画像が様々なブログで紹介された。
東北関東が立ち入り禁止区域になっており、青い枠内の中心である岡山が新しい首都になっている。
本当にタイターが描いたものか、2000年2001年の時点で本当にこの地図があったのかどうか真偽のほどは不明である。>

▼タイターの使用しているタイムマシン

タイターの使っているタイムマシンは、重力制御装置であり、これを車などに搭載して使用する。

移動先の年月日、時刻を入力して装置を稼動させる。装置が加速していくにしたがって周囲がだんだんと暗くなっていき、やがて真っ暗になる。10年の時を移動するのに約1時間かかり、周囲が明るくなるとタイムトラベルの終了である。

だがこの時、問題になってくるのが、移動した先の「場所」である。地球も太陽系も移動しているため、通常にタイムトラベルしただけでは、着いた過去の世界は宇宙空間、ということにもなってしまう。

こうした事態を防ぐために、タイターのマシンには、地球上での空間座標を特定する機能がついている。これは現在地の重力を正確に測定して地球上での空間座標を割り出し、過去の世界でも同じ場所に移動することが出来る機能である。

また、タイターのタイムマシンは、過去でも未来でも移動先に60年以上を設定すると世界線のズレが大きくなり過ぎてしまい、全く異なる世界へ着いてしまう。全く異なる世界とは、自分たちが知っている歴史とは大きくかけ離れた歴史を持った世界であり、このようなことにならないよう、タイムトラベル出来る範囲は60年と設定されている。

移動した時に世界線のズレが生じるのは、自分が元いた未来の世界線へ帰る時も同様で、全く同一の世界へ帰れるわけではない。

少しでも少ない誤差で帰還するためには、一度自分がやってきた時間と場所に戻る必要がある。タイターの場合であれば、まず1998年に戻り、そこから1975年に戻ってから、2036年に戻ることになる。なお、タイムマシンとは重力制御装置であり、潮汐(ちょうせき)力が地球の重力に影響を与えているため、帰還するタイミングは1年に2回しかないという。


<タイターが使っているタイムマシン・C204型の一部。>

▼タイターは本物の未来人か

タイターは、多くの書き込みを残したが、結局予言の部分が一番大きくクローズアップされ、はずれたものが多いので「偽物だ」と主張する人たちが多い。

だが否定派の意見としても「自分は信じない」といった類(たぐい)のものであって、タイターのことを理論で詰めていって偽物だと結論づけられた人はいない。

はずれた予言にしても、タイターは自分のいる世界のことを書いたのであって、この世界とは世界線のズレがあると言っている以上、それは予言ではないのだが、未来から来たとも言っている以上、ほとんど予言の当たりハズレだけで本物の未来人かとうかを判断されている。

しかし当たった予言もあり、また、時間旅行の概念や歴史干渉、タイムパラドックス、世界線の概念など、理論の部分もしっかりしており、知識も相当なもので、タイターを本物の未来人だと信じている人も多い。

もちろん、このファイルは、タイターを本物だと断言するものではないし、信じる人が多いから本物だという理論も成り立たない。といって偽物だとも言い切れない。

タイターは今では完全にネット上からは姿を消してしまったが、タイターが去ってから2年後である2003年1月、フロリダの弁護士事務所に、タイターの両親を名乗る夫婦が5歳の子供を連れて訪れた。子供の名前はジョン・タイターだと言う。

この夫婦は、インターネット上でのタイターの発言と、質問者たちとのやり取りの全記録や、タイターが語った内容の証拠となる物件などをこの弁護士に預けた。

これらのものは後に書籍「JOHN TITOR A TIME TRAVELER'S TALE」として出版された。本は出版されたが、母親を名乗る人物は、平穏な生活を送りたいとの理由から本名は明かさず、彼との関係を断ちたいと語っている。

タイターの登場によって、本を出版した両親や弁護士には思わぬ収入があったが、当のタイター本人は、書き込みをしただけで去っていってしまった。

特に金銭目的というわけでもなく、このあたりがタイターの行動に疑問を感じるところで、タイターが仮に現代人のイタズラであったのならば、大量の書き込みをしたりユーザーたちとの山のようなやり取りを行った目的は何だったのだろうか。

「面白いからやった。」というわけでもないだろうが、もしタイターが偽物であった場合、嘘がバレた時点で社会的に非難を浴びることは目に見えている。

偽物ならばその動機もよく理解出来ない。しかし本物の未来人であれば、夢のある話ではある。(2012.04.04)


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