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No.02 幽霊屋敷に住んでいた男

私の大学時代の後輩で、自称「幽霊屋敷」に住んでいた男がいる。その男と私は当時、同じコンビニでアルバイトをしていたのだが、そのバイト先でしょっちゅう、最近家で起こった怖い出来事を真剣な顔をしてみんなに話していた。


たとえば・・・
その男が住んでいた家は何の変哲もない普通の一軒家。両親が買ったものらしい。家族はその男と妹、そして両親の四人家族。

夜、妹が風呂からあがり、鏡の前で髪を乾かしていると、鏡に映った自分の後ろに誰かが立っている。誰かが、などとなまやさしいものではない。髪がボサボサで顔が半分焼けただれた女が明らかに自分の後ろに立っているのが鏡の中にハッキリと見える。しかもその女と目が合ってしまった!

「きゃーっ!!」っと叫んであわてて振り向くと・・・しかし、そこには誰もいない。恐怖で泣きじゃくる妹・・。


また、その私の後輩がある夏の夜、ベッドで寝ていると突然金縛りにあった。彼が言うには金縛りなんてしょっちゅう起こることらしいが、その夜の金縛りはいつもと違っていた。

なにかベッドに重さを感じる。仰向けの体勢のまま身体も顔も動かせないが、感覚的に、自分の腰の両側に二ヶ所、そして両肩の付近に二ヶ所、明らかにベッドがへこんでいるのが分かる。

「何やこれは・・。何でベッドがへこんどるんじゃ・・。」と彼が思った瞬間、なぜか顔の真上から、妙になま暖かい風を感じた。ふわっと風が顔に当たる。しばらくしてもう一回、そして更にもう一回。

そう、彼は次の瞬間、この状況の全てを理解した。今、霊が四つん這いになって自分の上にまたがっている! ベッドが四ヶ所へこんでいるのは、その霊の両ヒザと両手が置かれている部分なのだと! 顔に感じる風は、霊が自分に顔を近づけて息を吹きかけているのだ。

「うっわあぁぁぁ!!」と声をあげようとしたが声も出ない。どうしようもない、何も出来ない。彼はなすすべもなくその状況を耐えしのいだ。

時間にしてどれぐらいだろう。そしてようやく金縛りが解け、ベッドのへこみも風もそれと同時に消えてしまった。「助かった・・」と思った瞬間冷や汗がどっと出た。もちろんその夜は一睡も出来ず朝を迎えることになった。


また、ある別の日の深夜、家族がみんな寝静まった頃、彼は自分の部屋でテレビを見ていた。するとどこからともなく、いや、よく聞くと洗面所の付近から何か音が聞こえてくる。

「パン、パン、パン」というか「パチ、パチ、パチ」というか、何か拍手に似たような音だ。「あぁ・・また何か起こるんか・・。」怪奇現象慣れした彼はピンときた。

しばらく耳をすましていると音がピタッとやんだ。一応テレビの音も切ってみた。シーンとした静寂が家の中を襲う。このまま寝てもよいのだが、何かそれでは釈然としない。「一応確認に行くか。」彼は部屋のふすまを開け、洗面所へ向かった。そして洗面所の電気をつけてみると・・

なんとそこには、洗面所の壁一面に「人間の血の手形」がつけられていた! あの、相撲取りが手のひらにインクをつけて色紙にパーンとつけるような、あの手形が、赤い色で壁一面に何十となくつけられている!!

「ぐわあぁぁぁ!!」ビビリあげた彼はすぐに家族全員を叩き起こした。妹は恐怖に歪んだ顔をして駆けつけて来た。お父さんとお母さんは眠そうな顔をしてぼちぼち歩いて来て一言言った。

「何ね〜、これは。あんたら、また変ないたずらしたねー。誰が掃除すると思っとるんね。」助けを求めたのに逆に怒られてしまった。


変なものが見えたり感じたりするのは、その私の後輩と妹だけで、両親は全く何も感じないらしい。この奇怪な手形もどちらかのいたずらだと思っている。

「台所に、かんたんマイペットあったじゃろ。あれ持ってきんさい。」とお母さんに言われて彼は「かんたんマイペット」と一応「キッチンマジックリン」も持ってきた。

「まったく、もぅ。」とプツプツ言いながら掃除する両親と、恐怖に顔を歪めながらマジックリンを手形に吹き付ける私の後輩とその妹。「あんなに怖い掃除は今までなかった。」と彼は言っていた。

あれからもう、何年も経つ。大学を卒業して以来、彼には会っていないが、今でもその家に住んでいるのだろうか。



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