Top Page 心霊現象の小部屋 No.10 No.08
彼女は夫と二人暮らしの専業主婦。彼女にはA子さんという、とても仲の良い友達がいた。彼女とA子さんは、子供の頃から学校もずっと一緒で、互いに結婚した今でも家族ぐるみの付き合いを続けている。 だがある日、そのA子さんが交通事故に遭ってしまった。知らせを聞いて病院に駆けつける彼女。泣きじゃくりながらもA子さんが助かるように必死で祈る。が、彼女の願いもむなしく、A子さんはそのままこの世を去ってしまった。 落胆し、激しい悲しみに襲われながら、彼女はA子さんの葬式に出席した。そして、葬式も無事終了。だが、この時から彼女の周りに異変が起こり始める。 葬式が終わって自宅に戻り、彼女は自分の家のドアを開けた。その瞬間、彼女は息を飲んだ。そこに、A子さんがいる! A子さんがいるというと、言葉が適切ではないかも知れない。 「A子さんの胸から上」の映像が、部屋の中にゆら〜っとただよっていたのだ!! 顔も服もはっきりと見える。ただよいながら、A子さんは彼女の方をじっと見つめている。「A子さんの霊だ! 私に会いに来たんだ!」彼女がそう思った瞬間、A子さんはスーッと消えていった。 だが、A子さんが現れたのはこの一回だけではなかった。夜、寝ようとして彼女が部屋の明かりを消した瞬間、いきなり目の前に現れる。夕方、食事の支度をしていて、何気なく横を見ると、そこにただよっている。部屋の掃除をしていると、いつの間にか仏壇の前に現れてきている。 こんなことが三日も四日も続いたある日、彼女はふと思った。確かに最初はA子さんの幽霊だと思った。だけど、何か違うような気がする。幽霊ってこんなにはっきりと見えるものなのかしら。しかも昼間でもお構いなしに出てくる。顔だって、ホクロどころか、シワまではっきりと見える。しかもカラーで。 「ひょっとしたら私、悲しみのあまり何かの精神病になってしまったんじゃ・・? その精神病のせいで、幻覚が見えているんじゃないかしら。」彼女はそう考えるようになった。 その日一日、思い悩んだあげく、思い切って夫に相談してみることにした。そして夜、夫が会社から帰ってくるとすぐに話を切り出した。 「ねぇ、あなた、いきなりこんなこと言ったらびっくりするかも知れないけど、私、明日、神経科の病院に行ってみようと思うの。実は今まで黙ってたけど、この間亡くなったA子さんが、たびたび家の中で見えるのよ。最初は幽霊かと思ったんだけど、何か違うような気がして。私、頭がおかしくなったんじゃないかって不安になって・・。」 彼女の話を一通り聞いた後、夫は口を開いた。「A子さんの胸から上の像が部屋の中にただよっているって!? あぁ、それだったら・・俺にも見えるよ。実は俺の方こそ明日、神経科にでも行って診察してもらおうかと思ってたんだ。A子さん、今、・・・あそこにいるだろ。」 夫が指さした方向を見ると、いつも通りA子さんが、ゆら〜っとただよいながらこっちを見ている。 「なんだ、あれは本物だったんだ!! も〜っ 頭が変になったんじゃないかって心配して損した〜!!」 夫にもA子さんが見えていたことが分かって、彼女は安心した。自分は正常だったんだ。 その後もしばらくA子さんは現れていたが、初七日の法事が終わると、それを境にピタッと出なくなったという。 |