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Top Page 心霊現象の小部屋 No.44 No.42
弘中真さん(仮名)は、都心の会社から郊外の自宅へと、毎日電車で帰っている。本当は会社の近くへ引っ越した方がずいぶんと楽なのだが、一人暮らしをすると金がかかる。 通勤に時間はかかるが、親と一緒に住んでいた方が経済的にはかなり楽なのだ。金をとるか時間をとるか、弘中さんもずっと考えていた。 そんなある日。その日も会社帰りにみんなと居酒屋へ行った。会社帰りに飲みに出ると、いつも弘中さんが乗る電車は、その方面の最終電車になる。そして降りる駅は終点だ。この日も、普段飲みに出た時の行動パターンと全く同じように最終電車に乗った。 最終電車の車内は人もまばらだ。これもいつものことだ。しばらくすると、ちょっと酔いがまわってきたのか、弘中さんは電車の中で眠ってしまった。どれくらい眠っただろうか・・。 ハッと目を覚ますと、ちょうど電車はどこかの駅を出発するところだった。構内の標識を見てみると、弘中さんが降りる終点の一つ手前の駅だ。ちょうどよいところで目が覚めた。 何げなく正面に目をやると、さっきまでいなかった男が座っている。多分どこかの駅から乗ってきたんだろう。普段なら別に気にも止めないことなのだが、弘中さんの正面に座っている男は何か苦しそうにうずくまっている。 呼吸も荒く、身体も小刻みに震えているようだ。さすがにちょっと気になって、声をかけてみた。 「どこか具合でも悪いんですか？」 弘中さんが声をかけると、その男はゆっくりと顔をあげた。 どこかで見た顔だ。しかしどこだったか思い出せない。 「家に・・家に帰らなきゃ・・。」 男はそう言いながらゆっくりと立ち上がった。 立ち上がった男を見てびっくりした。男の服は血だらけだったのだ。身体の正面の部分が血に染まっている。そして身体からはどくどくと鮮血が流れ落ち、みるみる床に血溜まりを作っていった。 何よりも驚いたのは、男の胸にはナイフが突き刺さったままだったのだ。 「うわあぁぁ！ち、ちょっと！ナ、ナイフが刺さってますよ！」 弘中さんは悲鳴を上げた。男はそれにかまわずよろよろと出口の方へ歩いていく。と、同時に電車は駅へ着いた。扉が開き、男はホームへと降り立つ。 しばらく呆然としていたが、弘中さんもすぐに後を追うようにホームへ降りた。だが、そこに男の姿はなかった。「そんなバカな・・。あれだけの大怪我をして走れるわけはないし・・。」 目の前で起こったことがよく分からないまま、弘中さんは改札口へと歩いていった。するとその時、一枚のポスターが目に入った。 それは「目撃者はいませんか？」という警察の貼ったポスターだった。二ヶ月くらい前、この、同じ終電で、お客同士が口論となり、片方が相手の胸をナイフで刺して逃亡するという事件が起こったのだ。 刺された方は死亡。帰宅途中のサラリーマンだった。彼は終点の一つ前の駅で降ろされ、そこで刺されたということだった。弘中さんと同じく終点の近辺に家のある人だったらしい。そして犯人はまだ見つかっていない。 どこかで見た男だと思ったら、さっきの男は刺されて死亡した、このポスターの男だったのだ。家を間近にして、死亡してしまった、その思いがこういう形となって現れたのだろうか。 |