Top Page  心霊現象の小部屋  No.52  No.50


No.51 確かに事故車ではない

埼玉県に住む峰岸さんは、前々から欲しいと思っていた車が、ある店頭で破格の値段で販売されているのを見つけた。見たところ新車に近い状態で、この車種でこの金額ではあまりにも安すぎるため、事故車ではないかと疑ったくらいだ。

念のため店の人に聞いてみると、年式もそれほど新しくないため、次の車検までで乗りかえる人のために提供しているという。もちろん事故車などではないと言う。それなら、ということで、峰岸さんは思いきってその場で買うことを決めてしまった。

その車は中古とはいえ、痛んだ様子もなく、エンジンの調子も非常にいい。しばらくは友人たちを誘ってはドライブに熱中していた。だが、買ってから一ヶ月くらい経ったころ、同乗した友人が妙なことを言いだした。

「なんかこの車に乗ると息苦しいんだよ。エアコンの調子が悪いんじゃない?」

そういえば峰岸さん本人も、この車に乗ると頭が痛くなることがたびたびあった。ラジオを切ろうとしても切れなくてつきっぱなしだったこともある。まあ、たいしたことではないだろうと思ってその時は気にも止めなかった。


だが小さいトラブルがいくつも続き、ある日思いきって修理に出すことに決めた。指定の工場までは広い道を通っていけば到着するのだが、小雨が降っていたため、渋滞を避けて裏道を通ることにした。

しばらく走っていると小雨はどしゃ降りに変わってきた。峰岸さんはいつもの癖で、ワイパーを作動させる前にまず、ウインドウォッシャー液を噴出させた。

が、その瞬間、びっくりして急ブレーキをかけてしまった。出て来たのは、いつもの透明な液体ではなく、真っ赤なドロッとした液体だったのだ。まるで人間の血液そのものだった。

「まさか血・・?」
だがそれは一瞬のことですぐに雨に流されてしまった。後になっては確かめようがない。


「見間違いだって・・!血が出てくるわけないじゃないか・・。」

峰岸さんがそう思った瞬間、今度は助手席の方から声が聞こえてきた。
「お父さん・・苦しい・・。」

びっくりして助手席を見ると、そこには顔と身体から血を流した子供がいつの間にか座っていた。
「うわっ!!」

再び驚いて身体をのけぞらせると、今度は後部座席に人の気配を感じた。恐る恐る後ろを振り向いてみると、そこには中年夫婦が肩を寄せ合って座っており、恨みのこもったような目で峰岸さんをじっと見つめていた。

「うわあぁぁ!!」
もう、何がなんだか分からなくなって、すぐに車を飛び出して走りに走って近くの交番へと駆け込んだ。そしてそのまま気を失ってしまった。


「あれは絶対に幽霊だ」と、確信を持った峰岸さんは後日、車を買った店を訪れて追求してみた。するとやはり、訳ありの車だったのだ。

借金の返済に困った一家が、あの車の中で無理心中していたらしい。まず父親が子供を包丁で刺し殺し、子供の遺体と共に両親は車に乗り込み、そして排気ガスを引き込んだ。

林の中での心中だったため発見が遅れ、死後一週間くらいして発見された。車内にはガスがたちこめ、死体は腐乱し、変わり果てた姿で発見されたという。確かに車自体は事故を起こしていないし、販売店の言う「事故車ではない。」というのは嘘ではない。

だが世の中で販売されている車の中には、こういった過去を持った車が他にもあるかも知れない。