Top Page 心霊現象の小部屋 No.51 No.49
渡辺健一さん(42歳)は、転勤続きの会社勤めだった。今の会社に入ってからというもの全国規模で転勤があり、地元である愛媛県にもなかなか帰ることが出来なかった。 だが、このたびの転勤でやっと愛媛県に配属になり、久しぶりに地元で働くことになった。そしてこちらでの仕事にも大分慣れたころ、ある日、自宅に小学校の時の同窓会の案内状が届いた。 同窓会はこれまで何度もあったが今まではずっと遠くにいたので出席することは出来なかった。だが、今回は会場もすぐ近くだ。久しぶりに旧友たちの顔を見てみることにした。 そして同窓会当日。会場は居酒屋の一室を借り切って行なわれた。何しろ30年ぶりだからみんなすっかり顔も変わっている。頭が薄くなったり白髪が目立ったり、太ったり・・。女の子だった女性もすっかり歳をとった感じだ。 一通り自己紹介を済ませた後、宴は盛り上がり、昔話に花が咲いた。そして2時間くらい経ったころ、渡辺さんはちょっと飲み疲れて、座敷を出て外のソファーへ腰かけて休むことにした。 座ってボーッとしていると、隣のソファーに誰か座ってきた。座ってくるなり、その男は、 「よう!渡辺健一君だろ?久しぶりじゃないか!元気だった?」 と、話しかけてきた。 誰だったろう・・?自己紹介は聞いていたつもりだったが、30年前の子供の時しか知らないので、思いだせない。 「えーと、すいません・・。誰だったっけ?」 と、渡辺さんは聞いてみた。 「なんだよーっ、忘れちゃったの?俺も同じ『健一』だったのに。」 苗字を聞こうと思ったのだが、その男は勝手に話し始めてしまったので、聞きそびれてしまった。 「この間、一級上の島本さんに出会ってさ。それがまた、あの人全然変わってないんだよ。顔も子供の時のそのまんまって感じでさ。」 などと他愛もない会話を続けていたのだが、ふと変なことに気づいた。一級上の島本さんて、何年か前にガンで亡くなったと、さっきみんなが喋っていた。この間島本さんに出会ったというのはどういう意味だろう? 「あれ?島本さんは・・。」と言いかけて、彼の方へ顔を向けると、すでにその男はいなくなっていた。 「勝手に話しかけてきて勝手にいなくなるなんて。」と思いながら、渡辺さんは再び座敷へと戻り、今会った男の話を隣の席の友人にしてみた。 するとその友人はいきなり引きつったような表情になり、 「『健一』って柴田健一のことか?! あいつならもう、10年以上前に死んでるぞ!」と青ざめた表情で叫んだ。 思いだした。そういえば柴田健一というクラスメートがいた。よくいじめられていたので、同じ名前のよしみで助けてやったこともある。ひょっとしてあの世から同窓会に出席してきたのだろうか? 後日、同窓会の時にみんなで撮った記念写真が送られてきた。その写真には、あの時の柴田健一さんも、しっかりとみんなの後ろに写って微笑んでいた。 |