Top Page  心霊現象の小部屋  No.72  No.70


No.71 幼い頃には謎の手、就職してからは会社と車で霊現象

※管理人の、ネット上の友人・和泉裕臣さん(HP:リングの女神)から、和泉さんの知人の、ある男性の体験談をメールでいただきましたので、書き直して記載しました。。


▼子供の頃に見た「手」

清瀬 弘さん(仮名)が、まだ小学生のころ、家のまわりで友達二人と遊んでいる時に、近所のゴミ捨て場で乳母(うば)車を発見した。見ればまだ新しい感じで、小学生の彼らにとっては、それは格好の遊び道具となった。

さっそくその乳母車をゴミ捨て場から持ち出し、みんなで乗って遊ぼうということになった。近くにちょうどいい道路がある。緩やかな坂になっていて、綺麗に舗装されている、あの道路。

みんなでその道路の坂の上まで乳母車を押して持って行った。ここから滑(すべ)り落ちるのである。一人が車を押す係、そして一人は赤ん坊が本来座る場所に入り、もう一人は赤ん坊の位置の、その更に前に座った。つまり二人が乗って一人が押すのである。


しかし清瀬さんが最前列に座って走り出した時に異変は起きた。坂の真ん中くらいにあるL字型のカーブにさしかかった時、乳母車は曲がろうとせずにガードレールの方へとまっすぐに進んでいった。

ガードレールの向こうは崖になっており、高さは6〜7mはある。その下は墓地になっている。

清瀬さんも、押している友達がふざけているのだろうと思っていたが、それにしては方向を変える様子もなく一直線にガードレールに向かって進んで行く。

さすがに怖くなり、振り返って乳母車を押しているはずの友達を見てみると、そこには誰もいなかった。車を押していた友達は、はるかに後ろの方ですでに転んでいたのだ。

「うわぁっ!」
どういう状況かは一瞬で判断出来た。清瀬さんはすぐに乳母車から飛び降りた。そして数秒後、もう一人の友達を乗せたままの乳母車はガードレールに激しく衝突した。乳母車に乗っていた友達は肋骨(ろっこつ)と脚を骨折、後ろで転んでいた友達は鼻の骨を骨折し、小学生の彼らにとっては大惨事となった。


後になって、この時のことをお互い話し合った時、三人とも共通の、変なものを見ていることが分かった。まず、乳母車を押している友達が転んだ場所からすれば、乳母車はもっと早くガードレールに激突しているはずなのに、ある一定の場所まで道路に沿って進んでいたということがまずおかしい。

そして乳母車を押していた友達が言うには、「地面から手が出てきて足を掴(つか)まれたから転んだ。」と言うのである。

また、ぶつかるまで乗っていた友達は、清瀬さんがいきなり飛び降りたので、びっくりして後ろの操作役の人を見ると、そこには誰もいなくて、手首から上だけが乳母車を押していたと言う。

そして当の清瀬さんが見たもの・・。乳母車がガードレールに激突して、飛び降りた清瀬さんがその現場へ行こうとした瞬間、崖の下の方からヌッと手が伸びてきて、その手はしきりに空中の何かを掴(つか)もうとしている動作を繰り返し、清瀬さんがうめき声を上げながら近づいていくと、スッと下に引っ込んだのだ。

後日分かったことをしいて言えば、あの乳母車は地元の人が捨てたのではないだろうということ、崖下の墓地には戦争で亡くなった女性の墓があり、その女性の子供たちも戦死し、遺体は帰ってこないままだったということ。

これらのことが三人が見た「手」と関係があるかどうかは分からないが、墓地の近くで遊んだことによって、霊現象に巻き込まれた可能性は十分ある。


▼社会人になって

それから10年以上が経ち、清瀬さんは社会人になっていた。
東京・品川の、ある会社へ就職のために面接に行った時のこと。建物内に足を踏みいれた瞬間、「この会社はヤバイ。」と感じた。建物の中の、あちらこちらにお札(ふだ)が貼ってあるのだ。いかにも何か起こりそうな雰囲気である。それでも面接は受け、採用されてこの会社で働くことになった。

清瀬さんが最初に「おかしい」と感じたのは、コーヒーなどを飲んでいると、テーブルに置いていたはずのカップが突然ひっくり返るようなことがたびたび起こることである。


それでもしばらくはその会社で働いていたのだが、ある夜、清瀬さんは自宅で呼吸困難に陥(おちい)り、意識を失って救急車で運ばれたことがあった。はっきりした原因は分からないが、清瀬さんはそのまま入院した。

入院している間、あの会社の出来事と関係あるのかどうかは分からないが、夜中になると病院内からやたらと足音が聞こえてくる。革靴で歩いているような「コツ・コツ」という音がしきりに外の廊下から聞こえてくる。時間帯や音、その頻度からして看護婦さんとは思えない。

しばらくして、清瀬さんはやっと退院することが出来た。しかし、病院を出て車で自宅に帰っている途中、またもや異変が起きた。高速道路を走っている最中、ボンネットが突然「バン!」と開いたのだ。これで驚かない人はいない。視界はふさがれ、場所が悪ければそのままガードレールに激突してしまうところだった。幸い、事故には至らなかったが、冷や汗ものの出来事だった。

このことを発端として、車の異常が続発する。走行中にタイヤがほとんど同時に四本とも破裂したり、踏んだクラッチが戻らなくなったり、エンジンが走行中に止まったり・・。

確かに車は中古車ではあったが、「調子がおかしい」という領域をはるかに超えたトラブルで、ここに書いたもの以上にいろいろなことがあったらしい。車のトラブルはこれ以降も続いていく。


清瀬さんの会社では、社員が「幽霊を見た」という理由で何人かが辞めていった。同僚の一人は、機械の上から落下して腰の骨を折ったことがあった。その際、その同僚は「誰かに押されたから落ちた!」と言っていたが、その時に、その同僚のまわりには誰もいなかったと何人もの社員が証言している。

その後、その落下した社員は療養のために実家に帰ったが、最終的には彼女と心中して命を絶った。

また、霊感が強いという、別の社員は、仕事中にいきなり悲鳴を上げて、会社を飛び出るということがしばしばあり、清瀬さんを含めて何人もの人に目撃されている。まわりの人は笑いながらからかっていたが、本人にとっては異質の何かを見たのだろう。


それでも清瀬さんは辞めずに残っていたのだが、ある当直の夜、またもや奇怪な現象に遭遇した。

ある夜、清瀬さんが当直として会社に泊まった時、仮眠室で横になってウトウトしていた。壁の方に向かって横になって寝ていたので、背中は部屋の中心側を向いていることになる。

自分の背中の方から「ミシッミシッ」と足音が聞こえてきた。この部屋には自分一人しかいないはずなのに、自分の後ろを誰かが歩いているのだ。この時点では不思議とさほどの恐怖は感じなかったというが、しばらくすると、背中側からお経を唱える声が聞こえてきた。低い声、震えるような声で室内にお経が響く。

一気に恐怖が襲う。自分の後ろには、今、一体誰がいるんだ! 幸い、金縛りにはなっていなかったので、勇気をふりしぼって後ろを振り向いた。

だが、その瞬間、上から人間の形をした真っ黒な「何か」が、うねうねと波のように揺れて、清瀬さんの身体の上に落下してきた。

ずしっという感触はなかった。気持ち悪くて怖いだけで、特に重さも痛みも感じない。しかしだんだんと意識が遠のいていく。眠いという感覚とは違い、身体から力が抜けていくような感じである。「これが気絶ってやつか・・。」と思いながらそのまま意識を失った。

目が覚めた時には朝になっていた。身体は無事だった。以前から考え、意思を表明してはいたが、この一件の数日後、清瀬さんは退職の日を迎えた。


その会社は清瀬さんの退職後、しばらくして移転し、その場所からまた移転し、最終的には東京を出て千葉へと会社を移したらしい。社員や経営者も、さすがに場所が悪いと判断してのことだろうか。品川時代にいた社員は全て退職し、清瀬さんが品川時代の最後の一人となっていた。

清瀬さんはその後、別の会社に就職した。問題の愛車は、その会社に出勤の途中、大型ダンプたちがよく停まっている道路を走行中、運転ミスでダンプに突っ込み、車は大破し、廃車となった。当の清瀬さんは流血とムチウチ症でまたもや入院し、しばらくは原付で会社へ通うことにした。