本来、入り口から続く道路の左右が墓地の敷地となっており、墓地の中には森や沼も存在する広大な広さとなっている。このバチェラーズ・グローブで、これまで霊が目撃されたり怪奇現象を体験したという報告は100件以上にのぼる。 バチェラーズ・グローブが正式な墓地として整備されたのは1864年で、それ以前はここは小さな埋葬用の区画であり、「エバードンズ」という名称がつけられていた。しかしここに埋葬する人が増え続けたために1864年に巨大な墓地として整備され、名前も「バチェラーズ・グローブ」と改められた。 オープンして一年くらいは毎週のように葬儀も行われ、墓参りの人たちも訪れておごそかな墓地だったが、それもつかの間であり、すぐに悪い方向へと状況が変化していった。 墓地の裏門に続く道が夜になると全く人が近寄らないために、若者たちのデートスポットや密会の場所として使われ始めたのだ。 その中には心ない者も多く、ゴミを捨てたり墓石を倒したり、中には金になりそうな埋葬品を掘り出して盗む者もいた。悪ふざけや荒しは加速する一方で、厳粛だった墓地はどんどん荒されて墓石のほとんどは倒され、見るも無残な場所へと変わってしまった。 あまりにも度がひどいということで、ここを管理している事務所は墓地への立ち入りを禁止した。もちろん永久に立ち入り禁止ということではなく、短期間の予定であり、嫌がらせがなくなれば再び墓地は開放する予定だった。 しかし事務所側の考えとは逆に、立ち入り禁止になったことでいっそう墓地は荒されることとなった。誰も入ってこないということでシカゴのギャングたちの格好の密会の場所となり、時にはそこで彼らの手にかかって処刑された者の死体が見つかることもあった。 悪魔を崇拝する宗教団体が儀式を行ったりすることもあり、そうした時には生贄(いけにえ)にされた動物たちの死体があちこちに捨てられていた。すでに墓地と呼ぶにもあまりにも悲惨な場所となってしまった。 このようなことが続いていた頃、だんだんと妙な噂が立ち始めた。墓地の中で青白い光が踊るように動いていたとか、幽霊を見たとか、倒れていた墓石が勝手に動いて元に戻った、物が移動する、などの怪奇現象が話題にのぼるようになったのである。 そうなると今度は、ギャングやカルト教団の密会の場所から「肝だめしスポット」へと変化していった。怖いもの見たさの若者たちが多く訪れ、墓地荒しはとどまるところを知らない。 しかしふざけてここへ来た者たちの中にも異変が現れ始めた。原因の分からない高熱が出始めて家に帰ってから寝込んだり、仲の良かった者たちが些細(ささい)なことでケンカを始めたりするのである。特にケンカは多く、死傷者が何人も出た。 この墓地ではオーブなどの光の玉や揺れる光が目撃されただけではなく、人間の姿をした霊体も多く目撃されている。修道士の服装をした男がいきなり現れては、透明になって消えていったという目撃例が特に多い。 また、人間の霊だけではなく、犬の霊も現れたという報告もある。黒い犬が出現して、今にも襲ってきそうにうなりながら前に立ちはだかり、びっくりしながらも睨(にら)み返していると、突然犬が半透明になり、そのまま消えてしまったというのである。 地元の女性霊能者にここを霊視を行ってもらった結果、ここで一番強い霊気を放っているのは馬車に乗った農夫の霊だという。この時は記者も同行していたので、後に記者が図書館で昔の記事を調べてみると、1800年代に馬車に乗った農夫が馬車ごと沼に落ちて死んでいる事件があったことが分かった。 また、この農夫の霊ではないが、別の霊体も写真に撮られている。左の写真は赤外線フィルムを使って撮られたものだが、墓石に座っている女性の姿が写っている。この写真は地元の新聞「シカゴ・サンタイムズ」に掲載され、大変な話題となった。 この女性の正体は、推測ではあるが判明しており、自分の幼い子供が死亡して、悲しみにくれるあまり自殺してしまった女性ではないかと言われている。 満月の夜には赤ん坊を抱いて墓地を歩く女性の姿もたびたび目撃されており、おそらくこれも同一人物と思われる。彼女と子供は並んで埋葬されたためか、どうやらあの世で再開することが出来たらしい。 女性にはニックネームがつけられており「ホワイトレディ」あるいは「バチェラーズ・グローブ・マドンナ」と呼ばれている。 また、異変は墓地の中だけではなく、墓地周辺を走る道路にもある。この近くの道路で幽霊自動車が出現するというのである。暗闇の中に突然自動車が現れ、ぶつかりそうになるのでそれをよけようとして雑木林に激突した車が何台もいる。 彼らの証言を聞くと、確かに向こうから車が来たはずであるのに、自分がぶつかった後、あたりを見渡しても、それらしき車はどこにもいなかったと言う。 バチェラーズ・グローブで次々と出現し始めた霊や怪奇現象は、墓地荒しが始まってから増えていった。人間たちの心ない行動や悪ふざけが、あの世にいる彼らたちの怒りを買ったのかも知れない。 |