|
死体安置所にてIn the Vault
|
「バーチは一八八一年に、葬儀屋という自分の仕事に限界を感じて、商売変えをした、が、そうする気になるきっかけとなった事件については口をとざして語らなかった」その真相は、バーチがベック・ヴァレー墓地の死体安置所の暗闇に、九時間も閉じ込められ、恐ろしい体験をした、というものだった。さて、その恐ろしい経験とは…。
この物語では、死体はまず、死体安置所に収められ、葬儀屋の気まぐれで適当な時期に墓穴に埋葬されるらしい。安置所には、埋葬を待ついくつもの死体が?これだけで十分怖い。不気味な死体安置所の様子、闇夜にいななく馬、バーチの陥った身の毛のよだつ境遇、そして因果応報というにはあまりに恐ろしい真相が。 |
▲
|
|
壁のなかの鼠The Rats in the Walls
|
ウェールズのイグザム修道院跡。そこではかつて、この館の主人と子供が五人、そしていくたりかの使用人が惨殺されるという悲劇があった。罪の嫌疑を受けてアメリカ・ヴァーニジア州に移り住んだ三男が、この忌まわしい家系の唯一の生き残りであり、わたしの直系の初代の先祖だった。
「この洞窟自体が、それこそ墓石をあばいて死肉を食う、あの悪鬼(グール)のすみか然たる観を呈している…」何一つ正体はわからないままに奥へ進むと、そこには…。例のぶよぶよした四つ足のけもの、肥ったノリス大尉の姿。なにか柔らかくて丸々と肥ったもの(鼠どもにちがいない?あの忌まわしい足音!)この感触が、肌に粘りつくほどの恐怖をよびおこす。
|
▲
|
|
インスマウスの影The Shadow Over Innsmouth
|
マサチュセッツ州インスマウス。1927年7月16日の朝早く、わたしはこの町から無我夢中で逃げ出した。「…あの評判の悪い、しかも死の影と異常なまでに神を怖れぬ雰囲気とに満ち満ちた暗い影のさす港町ですごした、ぞっとするような数時間の経験」とは?
インスマウス、という名前を聞くだけで、ちょっと条件反射的にぞくっとしてしまう。海の町独特の匂い、奇妙な特徴(インスマウス面)を持つ人々、「ダゴン教団」、倒れかかったあばら家に隠されているもっとも下等な連中とは?わたしに驚くべき話を語ったザドック老人は、何を見て驚いたのか?音の描写がかもし出す怪物の正体も怖いが、やはりラストの恐怖は圧巻。さて、これはある種のハッピーエンドと言えるのだろうか。
|
▲
|