毒入りチョコレート事件The Poisoned Chocolates Case | 1929 | |
アントニー・バークリーAnthony Berkeley(高橋泰邦訳・創元推理文庫) | ||
入会するにはきびしいテストに合格することを要し、現在は6人の入会だけが認められている「犯罪研究会」。この会の会長シェリンガムがある晩会員に向けて提案したのは、警察も匙を投げ迷宮入りの懸念のある、ある事件を解明しようというものだった。その事件とは・・・あまり身持ちのよくないと噂のあるユーステス卿宛に送られてきたチョコレートの試作品に端を発していた。ある事情からたまたまそのチョコレートを譲り受けたベンディックス夫妻がそのチョコレートを食べたところ、夫は一命をとりとめたが、夫人は死亡したのだ。なんとそれには毒が仕込まれていたのだ!しかし、試供品と称してそのチョコレートを送ってきたとされる会社によると、全くそのような事実はないという。一体誰が、なんの目的で?狙われたのはユースタス卿であろうと思われるのだが・・・。この謎に挑んだ6人の素人探偵たちは、それぞれ解決策と真犯人を示す。 ★★★アントニー・バークリーの傑作、『毒入りチョコレート事件』をようやく読むことが出来ました。期待どおりの面白さでした。 事件そのものは非常に単純に思えるのですが、これを誰が仕組んだのかを解明するのはなかなか困難なようです。まず疑われるのは夫でしょうね。よくある妻殺し?しかし、チョコレートが送られてきたのはユースタス卿の元ですから、やはり犠牲者となるべき人はユースタス卿だった筈・・・。となるとユースタス卿の奔放な女性関係か、離婚寸前の妻が絡んでいるのか、財産をめぐるトラブルか??といろいろ考えることが出来るわけです。 6人がそれぞれの推理を発表する、というのは面白い趣向ですね。当然前の人が発表したことを踏まえることが出来るわけだから、後になるほど有利です。次々新しい視点からの解決策が示され、ついには「真実」が明かされる・・・読んでいて非常にすっきりします。途中からは「う〜ん、こう言う展開なら、犯人はこの人だよね〜」と感じてしまう読者の方も多いとは思いますが・・・(^_^)意外な犯人を探すというより、6人が徐々に事件を解決していくこの展開を楽しむという感じで、そういう点ではとても楽しめると思います。 ―「その種の本の中では、与えられたある事実からは単一の推論しか許されないらしく、しかも必ずそれが正しい推論であることになっている場合がしばしばです」―素人探偵のうちの一人がこんなことを言っていますが、これは私が古典本格推理小説を読んだとき、しばしば感じていたことでもあります。これを読んで、この時期にすでにこういう疑問があったんだ、と少なからず驚きました。 それはともかく、6人の解決法はそれぞれの推論から導いたものですから、いろいろ欠点はありますが、一つの殺人事件からこれだけの解決法を考え出し、それを提示して見せる、というのはなかなか出来るものではないでしょう。それを楽しめるだけでも十分ですよ、ほんとに。 |
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オペラ座の怪人Le Fantome de L'Opera | 1910 | |
ガストン・ルルーGaston Leroux(三輪秀彦訳・創元推理文庫) | ||
「幽霊が出たのよ!」今日もオペラ座のそこここで幽霊を見た人がいる。骸骨のような骨格をして、だぶだぶの黒い服を着ている、と噂される「OのF」は、実在するのか?そんなとき、道具方主任のビュケが首吊り自殺をするという事件が起こる。幽霊事件との関連は?はたまた五番ボックス席を独占し、月給二万フランを要求する幽霊とは一体・・・?おりもおり、子爵ラウルはある歌姫に恋をしたことから、この幽霊事件に巻き込まれ、オペラ座の奈落に落ち込んで幽霊と対決することに。彼の愛する歌姫を誘拐した幽霊の真情と、幽霊となった彼の哀しい運命とは・・・。 ★★★ミュージカルで大ヒットとなりましたよね。ずいぶん前から一度読んでみようとおもっていたので、今回楽しみに読みました。これは怪奇ロマンス、というのですかね〜?コミック・オペラ的な面白さを感じつつ読んでいたのですけど。脇役のオペラ座の支配人とか、バレリーナとかの描かれ方はかなり滑稽ですから、あまり深刻な物語ではないのだろう、と思っていたのですが、実は幽霊の存在の裏にはすごく哀しい物語が隠されているのです。これって悲劇なんだ!華麗なオペラ座の裏にうごめく人々の世界を垣間見ることができて、わたしはそういうところがとても面白く感じたのですけど、ストーリィとしては、ラウルと歌姫クリスチーヌの恋物語に、幽霊のクリスチーヌへのせつない愛情が絡み合って起こる悲劇が主題なんですね。幽霊が「可哀そうで不幸なエリック・・・」と言うかたちで描かれていて、最後はもう悲劇的純愛って感じで、それはそれでいいんですけど、わたしとしては湖の家での冒険と攻防がとても生き生きして面白かったので、エリックも哀しみの主人公ではなく、希代の大悪党、つまり本当の怪人として描いてあった方が良かったかな、なんて思いました。私的には幽霊が怪人なのか、人間なのかどっちつかずなのが、ちょっと不満でした。最後に幽霊がオペラ座で起こしていたさまざまな現象の種明かしもしてありましたが、これもちょっと興ざめかな。しかし、こんな物語には、もう二度とお目にかかれないかもしれませんね。いかにも黄金期の巨匠にふさわしい、スケールの大きな作品です。この荒唐無稽さは、今読んで初めて楽しめるのかも・・・なんて思いました。 |
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奇厳城L'aiguille-Creuse | 1912 | |
モーリス・ルブランMaurice Leblanc(石川湧訳・創元推理文庫) | ||
アンブリュメジーの古い館で起こった盗難事件。そこに住む当主の姪レーモンドは盗賊に銃で傷を負わせ、確かに犯人はこの館のどこかに潜んでいるはずなのだが・・・。必至の捜索にもかかわらず瀕死の重傷を負った盗賊の姿は発見されず、当主は盗まれた物はないと言い出す。しかし当主の秘書は殺されていた。そこへ新聞記者と偽って入り込んだ高校生イジドールが示した意外な犯人とそのからくり。なんと犯人はかの有名なアルセーヌ・リュパンだと言うのだ。そして彼が残したある紙切れに書かれた暗号が、新たな対決の引き金となった。その暗号とは遥かな歴史を超えて王家に伝わるある伝説と巨万の富のありかを示すものだった。 ★★★このお話は、実は二十数年前、小学生の時に読んでいるのです。しかも小学生向けとかに書かれたダイジェストではなかったので、全く理解できず、ただ、イジドール少年が海に鋭く立つ針の城を発見した場面を描いた挿絵をよく覚えていることと、ラストがすごく哀しい結末になっていた、というのが印象的で、なんでルブランの小説にホームズが出てくるのか、なんて言う疑問は全く持たなかったものでした。(実は後になってこのことはわたしをかなり混乱させたんですけどね)しかし、久しぶりに手に入れたので読み返してみると、面白かった〜。そして小学生のわたしに理解できなかったのも無理はない、と思いました。イギリス王朝からフランス王朝へ伝わる「エギュイーズ・クルーズ」の秘密。これがいかにして歴代王に伝えられたか、とか最後にマリー・アントワネットによって祈祷書に封印されて云々、ジャンヌ・ダルクや鉄仮面まで出てくるし、ある程度イギリス・フランスの歴史を知っていないと、なんの事やら(実は今読んでも完全には理解できていない)かなり難しいですね。まあ、それはともかく、古典的な謎解きや暗号解読の楽しみはしっかりと味わえること間違いなし。古文書をめぐるロマンを楽しむこともできるし。ホームズがかなり間抜けな書かれ方をしているので、ホームズファンの方にとってはムカツクかも。リュパンが単なる華麗なる変装名人の盗賊、という描かれ方だけではなく、ある女性に対する誠実な恋人としての一面を見せているあたりは、なかなか人間味があっていいですね。イジドール君もリュパンの敵役としては大変健闘しているのではないでしょうか。 |
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死んだふりJust Play Dead | 1998 | |
ダン・ゴードンDan Gordon(池田真紀子訳・新潮文庫) | ||
「聞きなさい、ダーリン。ここハワイの最大の美点は、死亡宣告に死体が要らないことでね。場合によっては・・・殺人犯さえいればすむ」ジャックが美しい妻ノーラに持ちかけた保険金詐欺事件とは、自らの死を偽装するというとんでもない計画だった。しかしノーラは大乗り気。彼女の頭で素早く立てられた新たな計画は、ちょっぴり頭の鈍い愛人チャドを使って、この際この年寄りの夫に死んで頂き、保険金は自分一人のものに・・・そしてその後は愛人とセックス三昧の日々を・・・夢は膨らむばかり。ところがどっこい、夫ジャックは彼女など思いもよらぬ策をひそかに(ではなく実は堂々と)練っていたのだ。はてさて、どちらの計画が相手を出しぬくことが出来るのか??? ★★★「死んだふり」という題名に惹かれて買ってしまった本ですが、なかなか凝ったお話でした。最初にある金持ちのハオレ(白人)女がサメに喰われて死ぬ、という事件が起こるのですが、これと同じ筋書きである保険金詐欺事件の計画が練られます。その計画を最初に持ち出したのは夫ジャックですが、これを利用して・・・とノーラが考えることも、勿論ジャックの計画どおり。ノーラはチャドを利用するつもりだったのですが、実はジャックもチャドに近づいて、ノーラの本性をそのちょっと足らない頭に染み込ませようと懸命の努力。このゲームはチャドの出方次第という様相を帯びてくるのですが、途中までは、ジャックが一歩リードすると、ノーラがその体の魅力をチャドに思い出させて逆転、そしてまたジャックがチャドの自尊心をくすぐって再逆転・・・。さてどっちに転ぶのか、島中の注目の的になっていきます。この計画そのものは、いかにもジャックが破産を目の前に思いついたと言うふうに装っていますが、実はノーラはこの計画のために選ばれた妻だった様子です。しかし、ノーラも転んでただ起きるようなやわな女ではありませんから、勝負の行方はまだまだ分かりません・・・、と思いきや、最後に思わぬ伏兵が! 語り手は、ユダヤ人警官ダニー。人種の坩堝のごときハワイでも、ユダヤ人の警官は彼一人、という特殊な立場であり、もう少しでチャドの代役に据わっていたかも知れぬ彼が語る各人の歴史が、この物語に現実性をもたらしています。 作者は映画「ザ・ハリケーン」などを手がけた人気脚本家。「死んだふり」ははじめて書き下ろした小説だとのこと。脚本家らしく、軽妙で洒落た会話が魅力的です。台詞のなかに浮かび上がる登場人物の性格が、いかにもって感じで、誰に味方すると言うわけでもなく、どいつが勝つのか?と興味津々になってしまいます。 |
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不連続殺人事件 | 1947 | |
坂口安吾(角川文庫) | ||
昭和二十二年七月、私(矢代)は文士仲間の歌川一馬のたっての願いを聞いて、妻と共に彼の家に滞在することになる。そこには望月王仁、丹後弓彦、三宅木兵衛・宇津木秋子(一馬の前妻)夫妻、一馬の妻あやかの前夫土居光一、せむしの詩人内海明などなど沢山の滞在者が。一馬の母お梶の死因に不審な噂があり、一周忌の8月9日に何かが起こる、という脅迫めいた手紙が一馬に送り付けられていたのだ。しかし、私が滞在を決意した一馬からの手紙は偽造されたもので、そこに書かれていた巨勢博士、と呼ばれる人物への招待も一馬は預かり知らぬことと言う。とにかくも人々の集まってきた一馬の家では、次々と殺人事件が起こる。まずは望月王仁、そして一馬の妹珠緒、同居する従妹の千草、せむしの内海、腹違いの妹加代子、父親多門、前妻宇津木秋子。これらは同一犯による連続殺人なのか、それとも別々の犯人によって行われた不連続殺人なのか? ★★★「そうですね。この事件の性格は不連続殺人事件というべきかも知れません。・・・なぜなら、犯人自身がそこを狙っているからですよ」―とにかく次々殺人が起こります。それが歯切れのいい文章でテンポよく描かれているから、どんどんストーリーに乗せられてしまいます。すごく複雑な人間関係なので、最初は、え〜っとこの人は一馬の最初の奥さんでぇ・・・、今はモクベエの奥さんになっているんだけど・・・、この人はあやかの前のだんなさん・・・と、何度も行ったり来たりしながら読み進めました。あんまりたくさんの人が殺されるので、重くなりそうなもんなんですが、意外と話はスイスイ進むんですね。文士仲間の確執とか、いくら別れたとはいえ以前は夫婦だったもの同士が近付くことで起こる摩擦。こんな人たちを一堂に会させたりして、なんでこんな面倒くさいことになってしまうんだ?、と思うんですが、何者かが影で糸を引いているわけです。犯罪の真の目的が、その面倒くさい人間関係の中に埋没してしまって、実は明らかなのに誰にも見えていない。そんな感じです。私も、途中な〜んか引っかかるなぁ、と思った場面があったんですが、うまくカモフラージュされているんですよ。もしこの人間関係を額面通り受取れば・・・?あ〜もうネタばれしそうなんでこれ以上言えない! 坂口安吾という人の小説をはじめて読みました。『堕落論』とか有名なのにね〜、読んでないんです(ーー;)推理小説とか探偵小説とか呼ばれていた当時の翻訳ものに、とても関心のあった人なんですね。作中でも多門という人物の口を借りて、クリスティが面白いとか言っていて、ちょっと嬉しかったです。 |
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事件当夜は雨That Night it Rained | 1961 | |
ヒラリー・ウォーHillary Waugh(吉田誠一訳・創元推理文庫) | ||
わしはおまえさんに肥料代を五十ドル貸してある」―雨の夜突然やってきた男は、そう言うなりいきなり銃を発砲した。殺されたロベンスには、全く心当たりのないことだった。ロベンスの残された妻マータも隣人たちも、ロベンスはおとなしい穏やかな性格で、人の恨みを買うなど考えられないという。ロベンス夫妻の住んでいた家はかつて弟のジョージが住んでおり、それをを譲り受けたものだった。フェローズ署長以下警察では、ジョージが狙われたのかも知れないと考え始める。確かにジョージは身持ちが悪く、評判も芳しくはないが・・・。マータの奔放な生活態度は、以前から近所のうわさの的ではあった。彼女に原因があるのか・・・。警察はあらゆる可能性を探ってみるが、ことごとく行き詰まる。 ★★★ヒラリー・ウォーは警察小説の名手として有名ですね。フェローズ署長シリーズは他にもいくつか書かれているようですが、わたしははじめて読みました。舞台が1960年代ということなので、ややのんびりムードではありますが、最近の凝りに凝ったミステリにはない、シンプルな面白さがありますね。多分警察の捜査というものはこうしたものだろう、と思わせられます。意味の分からない言葉とか、背後の人間関係、無実の人々のちょっとした私生活の秘密、隠された感情。そういうものを一つ一つ丹念に調べて、関係ないものは捨てる、気になるところは徹底的に調べる。とても地味で根気の要る仕事です。結局、真相にたどり着くには、ささいな食い違いや犯人の少しの演出しすぎを見ぬくこと、そこから突破口が開かれる。と、ここまでは非常にスムースです。ところがどっこい、最後に罠が・・・。いやこの作品ははとても素直な解決になっていますから、後味もよろしいようですが、もうちょっとシビアな作家だったら、シビアなエンディングにしてしまうかも知れませんね。ここらへんはやはり年代を感じさせるところかな、やっぱり警察としてはきちんと解決しないと、というわけです。それにしても犯人がとても現代的、というか、最近よくいるんじゃない?こういうの。自分勝手なんですよね。(ネタばれしてないつもりですが)猟奇的犯罪やら血塗られた暴力にちょっと疲れている方に、そして警察への信頼を本の上だけでも取り戻したい方には、おすすめかも(^^) ヒラリー・ウォーの作品、他に二点ほど「ミステリの棚」あ行で紹介してます。よかったら見てね。 |
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リプリーThe Talented Mr.Ripley | 1955 | |
パトリシア・ハイスミスPatricia Highsmith(佐宗鈴夫訳・河出文庫) | ||
トム・リプリーはとある酒場で実業家風の男に声をかけられる。男は友人ディッキーの父親で、ヨーロッパヘ行ったまま帰ってこない息子を説得して帰国させて欲しいと依頼する。色々な理由からとにかくニューヨークを離れたかったトムは、滞在費用もだすというこの依頼に飛びつく。イタリアで首尾よくディッキーを探し出したトムは、彼の生活に入り込もうとするが結局拒絶され、挙句にディッキーを殺害してしまう。ディッキーになりすまして生きようと決心し方策を練るがやがて様々な綻びが露見しはじめる。 ★★★1960年に作製された映画『太陽がいっぱいPlein Soleil』の原作だということはみなさんもご存知の通りですが、私は恥ずかしながらこの映画見てないんですよ。それがこの度マット・デイモン主演で再映画化されたそうです。新しい映画のほうは今夏にも公開とのことですが、元の映画も見てないので全く先入観なしに読むことが出来ました。ストーリィはとてもシンプルで、人を殺してしまった男がいかにして逃れるか、というものです。トムという人はとっても場当たり的なんですよ。突然人を殺してしまったり、色々後始末をして何とかなりそうだと思うととたんにディッキーになりすまして財産を自分のものにしてしまうし、虚栄心のあまりローマにすみつづけて、結局知り合いに出くわして窮地に陥ったり。でも、うまく切り抜けられたりした場面では、まあ現実にはこんなこともあるかなぁ、悪は必ず露見するってもんでもないし…、しかしいっつもこううまくは行かないでしょう・・・なんて思いながら読みました。トムは、自分にとても自信がなくて人が羨ましくて、でも自分もちょっとひとかどの人物だと見せかけたくて、やっとそれが出来そうなチャンスに飛びついている。誰にでもある弱さがトムという人物の中心をなしているので、その心の動きが丹念に語られると、読んでいる方はいらいらしつつも、なんとかなるのか、次はきり抜けられるのかとついトムに同化してみてしまうんでしょう。でもそんなトムに対する醒めた視線をひしひしと感じることも確かなんですけど。 やはり1955年という古い作品だからでしょうか、私なんぞ最初にディッキーの父親が息子を探して欲しいと依頼するところで、これは何かの罠か〜?とか思ったりしたんですがそうでもなかったです^^;。そういう時代だったんですね。そういう点では、警察の捜査ってこんなもんか〜?みたいな物足りなさもありますが、そこは引き算して読んでみたら、イタリアのまぶしい太陽の下、トムがなんで殺人に至ったのか、結局トムは欲しかったものが手に入ったのか、私たちもどこかに行ったらそれが手に入るのか、そんなことを考えさせられました。そしてちょっと不安を抱えながら本を閉じることになるのです。 |
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ハンニバルHannimal | 1999 | |
トマス・ハリスThomas Harris(高見浩訳・新潮文庫) | ||
FBI特別捜査官クラリス・スターリングは、麻薬組織との銃撃戦で赤子をつれた組織のボスの女を撃ち、司法省やマスコミから糾弾される。「死の天使」それがマスコミが彼女に冠した名前だ。窮地にたったクラリスのもとに届いた1通の手紙。差出人はかのハンニバル・レクター博士だった。この手紙の後、司法省の査問はストップされた。かつてレクター博士によって「犬に顔を食わせ」られた、メイスン・ヴァ―ジャーは、復讐のための手段を欲していて、クラリスに届いた手紙に興味を覚え、手を回してクラリスを自分の元に呼んだのだ。その裏ではメイスンの恐るべき復習計画がはじまっていた。 ★★★もちろんこれは「レッド・ドラゴン」「羊たちの沈黙」に続くレクター博士の3作めですが、前のを読まれてなくても楽しめます。(と思いますが、やはり『羊たち…』のほうは読まれてからのほうがレクター博士がクラリスに語りかける言葉の意味を、汲み取りやすいと思います) 前半レクター博士は一時命の危機にさらされるんですが、そこを切り抜けるあたりは、さすがさすが・・・というか、レクター博士の面目躍如といった感じです。後半は・・・ネタばれしてはいけないので話せませんが、私としては前半に比べると、ちょっと弱いかな〜という感じを受けました。ただ、最後は怖いですよ〜。って私だけの感想かもしれないですがね。今度これ映画化されるそうですが、レクター博士はモチ、アンソニー・ホプキンズで、クラリスはジュディ・フォスターが辞退したので、ジュリアン・ムーアという人になりそうだそうですが、最後のシーンのクラリスの表情をどんな風に演じるのか、演出するのか?楽しみです。 |
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