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伯耆大山
-中国地方最高峰-

upload 2000. 5.29

(夏山登山道)-弥山-六合目分岐-(行者コース)-元谷-大山寺

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 ゴールデンウィークに帰省する際に、山口から真直ぐ京都に帰るのは勿体ないので、ついで(にしては遠回りですが...)に大山に寄ってきました。大山はたった1700mあまりの標高ですが、これで中国地方では最高峰。この時期もう雪はないだろうと思っていたのですが、1300mより上はずっと雪の上を歩くことになりました。でも雪があったおかげで頂上からの剣ヶ峰の眺めは最高のものになりました。
 大山は火山活動でできた単独峰でまわりに高い山がないので、頂上からの眺めは富士山からの展望に似て眼下に広々とした平野、日本海が広がり素晴らしい高度感が得られます。そして目の前には槍ヶ岳に似た剣ヶ峰がそびえ、ジャンダルムに似た烏ヶ山も見えます。下山時は”行者コース”で元谷に降りると、眼前に広がる北壁の岩塊は涸沢からの眺めのようです。こうゆうアルプスの香りが感じられる山は中国地方唯一ではないでしょうか?(そもそも、中国地方で森林限界以上の標高の山は大山だけでは?)
 このアルプスの香りが感じられる世界に、たった2,3時間で登れてしまう大山、是非お薦めです。ただし、登りはずっと急登です。下山時は元谷へ降りる”行者コース”をお薦めします。”帰りはひたすら下るだけ”ではなく、元谷からの眺めで”2度美味しい”登山になるでしょう。5月の下旬にはブナの新緑が美しい、絶好のシーズンになると思います。


2000. 4.29(土) 曇りのち晴れ
0:00 新南陽市発
 大山まで一体何kmで何時間掛かるかも調べずに、まあ朝までには着くだろうと、無計画に出発。国道2→54→183→181と乗り継いで大山登山口に向かう。中国山地の山間部を走る国道183に入ると霧で前がよく見えなくなってきた。それでも、予想天気図で良く晴れるものと確信していたので、大山に着くまでに霧も晴れるだろうと思っていたが、結局、大山まで霧の中を走ることになった。
5:05 大山登山口着
 大山道路を登っていくと、道端には所々まだ雪が残っており、アイゼンを持っていない私に不安がよぎる。大山は前に観光で来たことがあるので、迷わず大山寺橋横の駐車場に車を入れる。登山口に近い駐車場は、この大山橋横とキャンプ場の2ヶ所。駐車場は既に十数台の車が停まっており、駐車場でテントを張っているグループもいた。5時にもなると、少し明るくなるので、早くも出発していくグループもある。しかし、片道2時間位の山なので、出発は7時でも早いくらいだろう。出発を7時に決めて少し仮眠することにした。
6:50 登山口を出発
 と言っても、いつもながらほとんど寝られないので、6:30頃から出発の準備に取り掛かる。朝食を食べてから出発と思っていたが、寝不足と長い間運転したせいで気分が悪く、食べたいという気がしないので、バナナだけ食べてあとはリュックに入れる。
 真上の空は青いものの、まわりは黒い雲が立ちこめて山が何処にあるのかも見えない。”今日は絶対晴れるはずだったのに...”と思いながら出発。
 ゴールデンウィークにもかかわらず、駐車場にはまだ20台位しか車が入っていない。案外、大山って登る人少ないのかな?と思いながら駐車場をあとにした。だがこれは後で大間違いであることがわかった。下山途中出合った人によると、9時には駐車場はほぼ満車になったようだ。
 登山口は橋とは反対方向へ少し歩いた所で、山側に上がっていく階段と案内板が見つかるはずだ。道はすぐに左に折れて神社の参道のような雰囲気の石垣に囲まれた石段を登っていく
 石段が終わると、次はブナ林の中を横木の階段状の急登となる。”夏山登山道”は頂上に向けて直登していく尾根道なので、8合目までずっと急登が続くことになる。この時は残念ながらブナはまだ新芽が出たばかりで枯れ木同然であったが、枝振りから推定すると、5月下旬には登山道は眩いほどの美しい新緑のトンネルとなり、この急登も楽しくなるものと思われる(楽しくなっても楽にはなりません。あしからず...)。
 登山道はよく整備されていて、1合毎、また標高100m毎に標識が立っているのでペースがつかみ易い(と言っても、ひたすら急登です)。標高1000mを過ぎると登山道にも雪が出始め谷を覗くと真っ白に雪が残っている。アイゼンを持ってきていないので、この先どうなるかますます不安がつのる。
 さらに高度を上げると、だんだんブナ林が薄くなってきて枝の間から雪を戴いた剣ヶ峰が見え始める。(ブナが茂ったら、剣ヶ峰は5合目を過ぎるまでお預けです。)そして5合目を過ぎ、元谷へ降りる”行者コース”と別れると、ブナ林がなくなって、剣ヶ峰を始め北壁を構成する峰々の全貌が姿を現す...のはいいけど、道は完全に雪の下になってしまった。ここから8合目までが一番の急登なのだが、まるで雪山の稜線を歩くようで、転んで滑り出したら止まらないくらい傾斜がきつい。一歩一歩足元を確かめながら登り、六合目の避難小屋前に到着。
7:55 六合目避難小屋
 小屋前の看板の埋まり方から推定すると、1m以上の雪が積もっているようだ。冠雪してまるでアルプスの山のような風格の北壁の峰々を眺めながらひと休み。朝、曇っていたのがウソのように、いつの間にか期待通りの素晴らしい晴天になっていた。足元ばかり見ていたので気が付かなかったが、振り返ると、背後には米子の平野部、そしてその向こうには日本海が広がっている。大山は火山活動でできた単独峰なので、まわりが真っ平らなのが面白い。この辺、富士山からの眺めによく似ている。眺めも素晴らしいけど、足元も素晴らしい傾斜で、足を滑らしたらそのまま谷へサヨ〜ナラという状況なので、思わず足に力が入る。
 登山道脇の低い樹木の枝には、びっしり氷がついていて樹氷になっている。時折、カラカラと乾いた音を響かせてそれが崩れ落ちていく。おやつに樹氷をかじりながら歩いた。雪も固く凍っており、登るのはいいけど、降りる時はヤバそうだ。季節外れの冬山登山を楽しみながら(というよりも少々ビビリながら)登っていくと、目前のピーク、8合目に到着。剣ヶ峰も間近に見えるようになった。8合目からは傾斜も緩み、高山植物を保護するための木道となる。天候の悪かった前日にも新たに雪が降ったようで、木道の上にも雪が積もっていた。木道を歩くと、真っ白な雪原の向こうにようやく頂上小屋が見えてくる
9:00 弥山三角点(1711m)(朝食&大休止)
 頂上の展望所には既に多くの人が来ていたが、三角点の方には誰も居なかった。弥山三角点は剣ヶ峰(←こっちの方が弥山より高い。)へ続く尾根の一番手前のピークなのだが、尾根道の入り口に、剣ヶ峰への縦走路は崩れていて危険という旨の看板とロープが張ってある。ロープを越えるのはややうしろめたいが、目の前の三角点までなら危険もなさそうなので行ってみた。雪だらけで腰を降ろす場所のない展望所と違って、三角点の方は雪が少なく座る場所も確保できた。持ってきた朝食を食べる。
 剣ヶ峰へ続く尾根は痩せて険しく、北穂から槍へのキレットのようだ。よく見ると尾根の真ん中あたりに人が歩いている。剣ヶ峰の頂上にも一人いるようだ。危険なため縦走は規制されているはずだが、結構行く人がいるようである。その後も2人が剣ヶ峰へ向かった。見ていると40分位で剣ヶ峰に辿り着いた。規制されている所を行って落っこちてはひんしゅくなので、私は夏にでも元谷の方から剣ヶ峰に登ってみよう。
 雪を戴いた剣ヶ峰は頂上部が槍ヶ岳のように尖っており、その右手の烏ヶ山は、なんだかジャンダルムのようでもある。こうゆうアルプスの香りが感じられる岩だらけの世界は、中国地方では唯一大山だけではないだろうか? 剣ヶ峰〜烏ヶ山の向こうには蒜山の山影が重なっている。西方には、頂上広場、そして苦労して登ってきた急登の尾根が続いているその尾根の先には真っ平らな平野と日本海。素晴らしい爽快感と高度感だ。なんだか無性に空を飛びたくなった。鳥が羨ましい。
 登頂直後は少し風が吹いて寒かったが、その後ほとんど風もなくなり、山の上とは思えないくらい穏やかな天候となった。10時を過ぎるとガスが涌いてきて剣ヶ峰も半分見えなくなってきた。また、人も涌いてきて、約1時間独占してきた三角点も混み合ってきた。そろそろ退却かな?と思っているとガスが綺麗に晴れてきた。日も高くなったので、先程よりも北壁の峰々がさらに輝いて見える...やっぱり帰れない...。
11:00 休憩を終え出発
 お天気もいいので、いつまでも展望を楽しんでいたいが、もう2時間ものんびりしたので、そろそろ下山する。
 木道は狭くて離合しにくいので、人の多くなる夏期には、少し遠回りの木道が下り専用となって、上り下りが一方通行になるらしいので注意が必要だ。
 登りの際には固く締まっていた六合目〜八合目の急斜面の雪も、お天気がいいのと、人が沢山登ってくるおかげで柔らかくなって、かかとがズッポリ入るほどになったので、全く不安なく降りることができた(その代わり靴の中がグシャグシャ...)。まだ雪があるにもかかわらず、どんどん人が登ってきて、家族連れや若いグループも多く、小さな子も元気に登ってきた(今日は小さい子にはちょっと危ない...)。やはり大山は人気の高い山だ(”百名山”にも選ばれてるし...)。中には何を勘違いしたのか、平底の婦人靴で登ってくる普通の旅行客と思えるおばさん達もいた。六合目まで登ってくるパワーは賞賛に値するが、あの靴で雪の上を歩くのは全く無謀である。
11:45 六合目分岐
 登り下りとも同じコースでは面白くないので、下りは”行者コース”でと思っていたが、分岐点で休憩する間に先に行った2組がすぐに引き返してきた。谷コースなので、やはり雪が多いようだ。雪も嫌だけど、次々と人が登ってくる夏山登山道を道を譲りながら下るのは考えただけでもうんざりする。やはり”行者コース”を下ることにした。
 最初は深い雪の中を急降下して、この先どうなるのか?と思われたが、ずっと雪ばかりと言う訳ではなく、結局、最初の下りが最も雪が多く、その後は”時々雪”という程度であった。道はブナ林の中を急降下。期待通り静かな散策を楽しむことができた。途中、折れたばかりに見える枝がいくつも落ちているのが目についた。今年は雪が多かったので雪の重みで折れてしまったのだろうか? 30分弱ひたすら下ると、力強いブナの林を抜けて、頂上からも見えた元谷の砂防ダムの上部に出る。
12:20 元谷(昼食)
 弥山、剣ヶ峰と連なる大山北壁を間近に仰ぐ元谷からの光景は、まるで涸沢から穂高連峰を仰ぐようで迫力がある。あまりに素晴らしいので、まだ残ってるラーメンをここで食べてから帰ることにした。普通、頂上に立ったら、あとはひたすら下るだけという場合が多いが、今回は元谷からの展望で、降りてからも2度美味しい登山となった。
 剣ヶ峰の稜線の崩落は現在も進行中で、絶えずカラカラと落石の音が聞こえてくる。残ってる雪の上にも崩れてきた土砂が沢山載っていることからも崩落の状況が伺える。
13:10 昼食を終え出発
 雪の上を歩いてグチャグチャになったソックスを昼食の間干しておいたのだが、全く乾いていない。それもそのはず、絞れるほど濡れている。絞ってから干しておけばよかったと思いながら、ソックスを絞ると、手がチョー臭くなった...食事前に絞らなくてよかった...。
 元谷から先は林道を歩くことになる。私は地図をよく見ていなかったので林道を行ったが、大神山神社へ降りていく道もあるはずなので、林道を行く前によく探してみよう。林道は緩やかに下り、一度神社を行き過ぎてから指導標(←右手にある)から左手下の神社へ降りていくが、だいぶ遠回りしてるような気がする。
13:50 大山寺
 神社の次は大山寺を通る。それぞれで、無事下山できたお礼と帰路の安全を祈る。このあとみやげ物街を抜けて駐車場へ。寺や神社、みやげ物屋で道草しなければ、元谷から30分位で駐車場に戻れるのではないだろうか?
14:00 駐車場帰着
 元谷で大休憩したせいか、往きの急登を思うと帰りは随分楽に感じられた。考えてみると、登りはたった2時間。で、頂上で2時間、元谷でも1時間近くのんびりしたので、歩いてる時間と休んでる時間がほぼ同じという、お気楽登山であった。それでいて、冬山、ミニアルプス体験が満喫できた大満足の山行であった。
14:30 大山発
 少し離れた所から見た大山がまた堂々としていて素晴らしい。富士山を見てもそう思うのだが、このような大きな山が見える所で暮らしてみたいものだ。
 横目で小さくなる大山を見送りながら、国道9号線を京都に向かう。京都まではまだ300km近くもある。9号線は2車線区間もほとんどなく思うように走れないが、それでもなんとか順調に流れていたのに、家まであと10kmを残して亀岡で流れが悪くなり、老ノ坂トンネル手前でついに止まってしまった。10分以上微動だにしない完全停止の後、再び動き出すと何事もなかったかのように老ノ坂を越える事ができた。あの渋滞は一体何だったんだろう?
20:30 京都着
 山口から真直ぐ帰るより、距離で100km、時間で3時間くらいの遠回りであったが、楽しい寄り道であった。また秋にでも寄って帰りたい。




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