萩灰被水指(はぎはいかぶりみずさし)
 大物の粉引手は化粧掛けするタイミングや化粧掛けするカオリンや陶石の濃度がとても難しく、ちょっとでも間違えると簡単に壊れてしまいます。化粧掛けする器の方も乾かし方が難しく、全体が均一に乾くように夏などは上部からどんどん乾くのでビニールを上に掛けてなるべく乾かないようにします。この鉢はロクロで引き上げたときに全体にカンナ(高台を削るときの道具)で筋を入れました。筋が上手く出るようあまり荒くない鬼萩土を使いました。写真では分かりにくいですがその筋に釉薬が溜まり、還元が掛かって青く光り、粉引手に面白い変化が付けています。残念ながら口の一ヶ所が切れてしまったのですが、自分ではそんな傷も気にならないくらい上がりの方に満足しています。

萩灰被片身替茶碗 (はぎはいかぶりかたみがわりちゃわん)

萩窯変叩水盤(はぎようへんたたきすいばん)

 鬼萩土ときついロクロ目は自分が長く拘ってきた焼物の技法です。どちらも茶碗には向かないと思います。でも自分が好きで長く拘ってきたやり方だけにそれを何とかいかした茶碗が出来ないかとずっと考えていました。以前西部工芸展に入選した茶碗でロクロ目に対してひとつの考えが見えてきたので、それを自分なりにデフォルメして辿りついた茶碗です。完成したというより経過点を確認出来た茶碗です。それでもちょっと不安だったので最近始まった現在形の陶芸・萩大賞展に出品したらなんとか入選しました。実はこの茶碗よりもう一歩進んだものが出来ているのですが自分でこれでよいのか悩んでいる最中です。

 水引きの時、メチャクチャ乱暴にロクロを引き、形を成さない状態のものを作り、少し乾いてから手で形を整え仕上げました。造形的にも面白かったのですが、焼きも登り窯らしい ことのほか美しい枇杷色に焼き上がりました。
 灰被りのような焼き上がりの方が難しいように思われますが、本当に難しいものはこういうものだと思います。

一番拘ったのは形です。鬼萩土をロクロで一気に引き上げた壺に思い切ってきつくロクロ目(ロクロを引いたときの指の跡)を出しました。自分のロクロの大きな特徴の一つはロクロ目の付け方だと思っています。小さいものにはロクロ目は割と簡単に付くんですが、壺なんかになるとかなり力強くというか、強引にやらないと、ここまではっきりしたロクロ目は出ません。それから、ロクロ目をきつく出すと全体の形がゆがんだりしますが、そのゆがみとロクロ目の荒々しさがうまくつながるように心掛けました。釉薬を厚くかけ、全体に流れるようにし、焼きも強還元をかけ柔らかさより強さを狙った作品です。
萩荒引壷(はぎあらびきつぼ
灰被ぐい呑 (はいかぶりぐいのみ
 鬼萩土に白萩釉を掛けたものですが、灰被は薪を投げ込むところに置くため、小さいものは薪が当たったらすぐ転げるし、その時々でおき(燃えた薪の粉)の高さが違うため、うまくおきに埋まり炭化した焦げの表情が出ません。そのため殆ど焦げの上手く付いた灰被りのぐい呑みはないと思います。この作品は本当に上手く行ったものです。
 第41回西部工芸展入選作品です。茶碗としては邪道と思いますが、茶碗全体にきつくロクロ目をつけ、薄い白萩釉を全体に流れるようにかけ景色を作りました。自分としては珍しくあまり荒くない鬼萩土を使ったので釉の垂れが面白く出ました。茶碗にはいろいろ約束事があります。しかし、それらを全部守っていると茶碗としては勢いというか力強さみたいなものがなくなります。だからそういうものを自分なりに壊して自分らしい茶碗が作りたいとずっと思っていました。僕はきついロクロ目が好きで、茶碗にもどうにか使いたいと考えていましたが、きついロクロ目は茶碗の内側にもロクロ目が残り茶筅ずりが悪くなると嫌がられます。そこで茶碗を浅くしてロクロ目が茶筅ずりをなるべく邪魔しないようにして、なおかつそのロクロ目に釉が流れ込むようにしてロクロ目の景色としての印象を強くしました。茶碗を作るということがどういうことかまだ良く分かりませんがこの茶碗が入選出来たことは僕の茶碗作りが一つ進んだような気がします。
これは楕円に作った水盤を板でバンバン叩き形を作った物です。釉薬は白萩釉で全体にピンクがかっています。これは萩焼の窯変といって、薪の窯で薪の炎が直接当たった所だけピンクや紫色に変わります。だから炎が直接当たらない裏側には白い部分が残っています。本当にこの色が出る場所は少なく、少し後ろでも上の方でもこの色は出ません。ガスや電気では出来ないので萩でも少し高級品になります。作りが激しいので荒々しい感じがしますが、実際は焼きのせいか優しく暖かい雰囲気になってます。
萩焼締異形花入(はぎやきしめいけいはないれ
萩粉引広口花器(はぎこひきひろくちかき)
白萩手付鉢 (しらはぎてつきばち)
窯変面取茶碗 (ようへんめんとりちゃわん
白釉沓茶碗 (はくゆうくつちゃわん)
 荒砂がこれでもかというくらい入った鬼萩土を乱暴に引き上げ、口を大きくゆがめ、白萩釉の濃淡が出るように器半分にたっぷりと水を吸わせて釉薬をかけ、流れるような釉の垂れを出し、釉薬が溶けるギリギリのところで火が止まった作品です。あまり茶碗を狙って造るよなことはありませんがこれは思ったとおりというか計算どおりに出来ました。計算外だったのは前面のカイラギ状の釉薬の縮れというかはげの部分が大きかったことです。これが良いといわれる人も多いかと思いますがこうなると三輪寿雪さん風になり過ぎこれが自分の茶碗だと今ひとつ言いにくくなるからです。しかし、そうは言っても良い茶碗だと思います。何かの公募展にでも出してみようかと思います。

 この茶碗が窯から出たとき失敗したと思いました。大体、作り手はある程度のイメージを持って窯詰めをします。しかし、それが自分の想定していたものと違う焼き上がりで出て来た時、直感で失敗したと思ってしまいます。想像以上に良かった時も自分のイメージを超えているので気が付くのに少し時間がかかります。酷いときはそれに数か月かかる時もあります。
 この茶碗は灰被りが焼ける焼座といわれる薪を投げ込む場所に茶碗を立てて焼いたのですが、片身に出ているカイラギ(釉薬の縮れ)は本来、温度の低いところでしか出来ず、ここでは釉薬は完全に溶けて流れカイラギは消えてしまいます。
 このカイラギの出方と半面のコゲ、偶然が偶然を呼び偶然出来た茶碗です。

これも灰被りなんですが、水指で困るのはフタと胴を別々に焼かなければいけないことです。萩焼は釉薬をかけて焼くのでフタを乗せたまま焼くと釉薬がとけてフタがくっついてしまいます。また、フタと胴を離して焼くと収縮率や焼き色が変わるのでフタと胴はすぐ隣に置きます。しかし、灰被りは薪を投げ込むところにフタを置けません、薪が当たって転がったりおきに埋もれて生焼けになったりしやしいからです。それで、なるべく近くにフタを置くようにしますが、やはり焼き色はなかなか合いません。この水指もよく見てもらえば分かりますが、フタの色が少し違うのが分かると思います。多少の違いは逆に味になったりしますが、ぜんぜん違う場合はいくら胴が良く焼けていても無駄になってしまいます。そういう意味でも気に入ったものが出来たときはとても嬉しいものです。この水指が出来たときも強い達成感みたいなものがありました。

鬼萩沓ぐい呑 (おにはぎくつぐいのみ)

 あまり萩焼では焼締をやることがありません。萩焼の土自体が弱く、自然釉が溶けるほど高い温度で焼くことに向いてないからだと思います。それでも登り窯をやってると焼締をやりたくなることがあります。
 萩焼の登り窯は普通焼物は棚を組んで並べていきます。自然釉の変化を求める作品は棚ではなく薪を投げ込むところに置いておきます。薪のおきに埋まってそれが溶けるからです。
 左の作品は本当にうまくいったものです。実は窯焚きの途中、薪が焼物に当たり倒れてしまいました。しかし、おきに埋もれた半分が炭化して黒くなり、残りの半分に自然釉が掛かりとても面白い物になりました。形もロクロで丸い花入れをひき、底の部分(下から1cm位)を残して切り離し、上の形を三角にゆがめて、もう一度、残した底の上に乗せて作りました。うまく形と焼きがマッチした作品の一つです。
 いくつか自作を選んで自分なりに解説・分析をしたいと
思います。納得のいく作品ばかりじゃなく時には失敗作
なんかも出してみたいと思います。
白釉平茶碗 (はくゆうひらちゃわん)
 タタラ作りの鉢を板で叩いて成形し、それに柄を付けました。鬼萩土を使い荒々しい作りなので全体に厚く白萩釉を掛け火の弱いところで焼きました。鬼萩土の砂の部分が釉をはじき上手くカイラギ(釉薬のちぢれ)が出て、やわらかく良い感じに仕上がりました。登り窯で焼くと白萩釉は窯変が付いて淡紫色になりがちですが、こういう風に真っ白になると白萩釉の本来の美しさはこっちじゃないかと思います。
 灰被りのぐい呑みです。前にも書きましたが灰被りは薪を投げ込むところに置くので、普通にやっても薪がちょっと当たっただけで転がったり、その時の薪のおきのたまり方で真っ黒になったり生焼けになったりとなかなか上手く出来ません。その為いろいろ工夫をしました。ぐい呑みをレンガで囲ったり、ぐい呑みの回りに炭を並べたりしました。しかし結局何をやっても自然に出来たものにかなわず、下手な鉄砲数撃ちゃ当たるではありませんがとにかく一つでも多く並べることが僕にとって一番上手く行く方法です。
萩灰被手桶花入(はぎはいかぶりておけはないれ)
とにかく豪快なものを作ろうと思い出来た作品です。こんなに厚くロクロは逆に引けないので、タタラで鬼萩土を厚い板状のものに作りそれを巻いて筒にして、豪快にへらで粘土を削るというより剥ぎ取る感じで成型しました。灰被りも深く灰を被るようにいつもより低い位置に置いて焼きました。そのためおきに埋もれ焦げの部分が多く萩焼には見えにくいですがなかなかの力強さが出たと思います。
 先日、田部美術館大賞「茶の湯の造形展」で入選した作品です。シンプルな筒茶碗を鬼萩土で成形し、激しく面取することによって鬼萩土の荒々しさを出し、白萩釉を掛け、片面に登り窯独特の窯変が付くように焼成しました。以前は公募展に出すものは自然に出来たものをと思っていましたが、近頃は自分なりにでも何か狙うと云うことが大事だと思うようになりました。林屋晴三さんが茶の湯の造形展に入選した茶碗はちゃんとお茶の呑めるものだと仰られた事がとても嬉しかったです。
灰被ぐい呑 (はいかぶりぐいのみ) 
荒土茶碗 (あらつちちゃわん)