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No.46 6年間密室に閉じこめられていた、戦時中の不幸な事故



第二次世界大戦も終盤に近づいた1944年6月、ヒトラー率いるドイツ軍は、フランスの大西洋海岸・ノルマンディー地域の海岸線の防備を固めていた。ヒトラーはそれまで陸路も空路も完全に遮断していたので、連合軍が乗り込んでくるとすればノルマンディー海岸しかないと読んでいたのだ。

海岸線防備にはロンメル将軍があたり、まず海岸線の一帯に鉄条網を張り巡らし、地雷も莫大な数を砂の中に埋め込んだ。そして海岸には沿岸砲を並べ、海上には機雷を浮かべ、更に海の中には障害物をいくつも配置した。


そして更に、海岸の近くには、厚さ2ートルの壁で作られたブロックハウスをずらりと建築した。このブロックハウスは、縦が5メートルから6メートル、横は4メートルくらいで、もし海岸近くで戦闘になった場合には、全員がこのブロックハウスに立てこもり、最後の一兵までもが戦い抜くつもりだったのである。

だがこうした情報は、連合軍側が事前に察知し、空挺師団が空からパラシュートを使って次々降下し、敵地に攻撃をしかけていったのである。虚をつかれたドイツ軍はたちまち大混乱に陥り、そのスキをついて海からも連合軍は上陸し始め、大量の兵士や車両、補給物資などが運び込まれた。ノルマンディーの戦いは連合軍側の圧倒的な勝利に終わったのである。


そしてその戦いから6年が過ぎた。戦争の傷跡もだんだんと癒えたころである。だがノルマンディーの戦闘の際に作られたブロックハウスは今だにその姿形を残していた。なにしろ厚さ2メートルの壁で作られたものだから、そう簡単に壊れるものではない。

これらを撤去しようと思うのならば、一つ一つ爆破していくぐらいしか手がない。そんなある日、海岸線に近いブドウ畑にあるブロックハウスを撤去しようと、この地に政府から役人が訪れた。

ブドウ畑に建設されたブロックハウスは、戦争の時に爆撃されたせいと6年間の歳月の間に半分くらいが土の中に埋もれてた。このままではどうしようもないから、まずこのブロックハウスのまわりの土をどけて、その上で爆破しようということになった。

そしてまわりの土を取り除いていると、突然ブロックハウスの壁の一部が崩れ落ちてしまった。つまり壁の一部に穴があいてしまったのだ。そしてそのあいた穴から、つんとするような匂いが立ちこめてきた。


何かが腐ったような匂いではなく、何か生き物特有の・・いかにも中に生物がいるかのような・・そんな匂いだった。
「まさか中に生き物がいるわけがない・・。ブロックハウスは6年間、完全に外の世界と遮断されていたのだ。仮に6年前に人間がここに閉じ込められていたとしても、もう生きているわけがない・・。」

そう思いながらも政府の役人は、あいた穴から中を覗き込んでみた。すると・・・中で何かうごめく者がいる。よく見ると、明らかに人間である。

「生きた人間がいるぞ!」役人は叫んだ。すぐに壊れた壁の部分をさらに拡大して、中の人間を救出すべく、役人と作業員がブロックハウスの中に入って行った。確かに生きた人間はこの中にいた。それも二人。だが、床にはミイラ化した4体の死体もそこにはあった。


だが、それぞれがもう、まともな人間ではなくなっていた。生きていたとはいえ、二人ともほとんど言葉も喋れず多少動き回るだけで、ほとんど人間らしさを失った状態になっていた。

しばらくするとそのうちの一人がかすかに正気を保っていたので、話を聞くことが出来た。事情を聴いてみると、その6人はブロックハウスを建設するために集められた土木作業員である。

彼らが作業をしていると突然戦闘が始まり、びっくりしてこの中に隠れたらしい。そしてこの中でしばらくじっとしていたら、辺りが静かになったので、闘いは終わったものだと思って外に出ようとした。ところが扉がビクともしない。

爆撃されたために周りの土がブロックハウスに覆いかぶさり、扉を外から塞いでしまったようなのだ。
6人がかりで大声で助けを求めるが、誰も気づいてはくれない。幸いにもここは倉庫だったらしく、小麦粉や缶詰、ロウソクやマッチ、そして米などが莫大な量、蓄えられていた。


彼らはロースクの火で小麦粉を焼いてパンのようなものを作り、それを主な食物としてずっとここで生活していたというのだ。上からわずかに光が差し込んでいたために失明は免れたものの、そのうちだんだんと皆、喋らなくなり、大脳の働きも衰え、動くこともほとんどなくなった。

そのうち1年2年と経つうちに、体力の弱った者から死んでいき、閉じ込められていた6年間に4人の人間が死んでいった。

助けだされた2人であったが、1人は完全に脳に変調をきたし、病院に運ばれて手当てを受けたが、回復することはなかった。
そしてかすかに正気を保っていた、もう1人も、それからほどなくして死亡してしまった。

厚さ2メートルの壁で完全に外の世界と遮断され、すぐ横を人が通りかかっても全く気づいてもらえなかったブロックハウス・・・。
脱出不可能な状態での6年間、彼らは何を思い、そして死んでいったのだろうか。



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